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第45話 ファナ、魔族を隷属させる




「エリク!」

「おう!」


 筋力強化の魔術を使って、エリクの身体能力を倍増させる。

 ついでに重力補助も。

 人間では考えられない跳躍力を見せるエリクが、ヴァラーに向かって一直線に剣戟けんげきを放つ。


「人間にしてはなかなかやるな! だがこちらが一人に対して二人でかかってくるのは卑怯だとは思わないのか!?」

「いいのよ! ()()は私の【剣】なんだから!」


 屁理屈だとでもなんとでも言うがいい。

 エリクは、剣術が苦手な私のもうひとつの腕のようなものだ。

 それにさっきから言ってるけど、魔王の人形だって二人で倒したんだから!

 ここは二人でワンセットだと捉えてもらいたい!

 あと仮にも王子を()()って呼ぶのも今は流して!


岩壁ストーンウォール!』


 尖塔の外壁に螺旋階段を巡らせるように、岩壁を連立させる。

 エリクの足場を作るためだ。


 ついでに、自分の足元にも『岩壁ストーンウォール』で岩壁を作って、足場を底上げする。

 浮遊魔術を使う選択肢もあるのだが、あんまり速度がでないから攻撃された時に不利なのよね。


爆裂ボム!!』


 パチン! と指を鳴らし、ヴァラーの目眩しのために例の爆裂魔術を至近距離で炸裂させる。


 ――が。


 どぉぉおおおおおん……!!


 ……あり!?

 なんかやっぱり、前よりも格段に威力が上がってる!?


 尖塔の一部が崩れて地面に向かって落ちていく。

 その下には――、避難が間に合っていない民衆の姿。

 ちらりと、見知った人物(コーネリアス)の顔もそこに見えた気がした。


「やばっ……!」


 慌てて尖塔の下に防御結界を展開する。

 ぎゅっと片手を握りしめて防御結界を圧縮させると、圧迫された瓦礫が砂のように崩れてはらはらと地面に舞い落ちていった。


「……は。魔術の扱いはなかなかに心得ているようだな」

「お褒めに預かりどーもね!」


 言いながら、続けざまに『火焔フレイム』と『雷霆一閃(サンダーボルト)』を放つ。


 予想はしていたけれど、エリクの相手をいなしながらのヴァラーに軽々と相殺された。


 ――基は闇を照らす者 または悪しきを浄化せし者


 無詠唱での攻撃とエリクの防御結界を同時展開させながら、詠唱を始める。


 ――すべての罪深きをき 罪無きを

 ――有と無の海にする時 我、汝の名を呼ばん


 あれ、やっぱり、前より魔力の練りも違う……?

 身の内に膨れ上がる魔力量に違和感を感じながらも、標的を見定めながら詠唱を続ける。


 ――よりて満ち 我がほむらとなり こたえて放て――


紅蓮の業火(メギド・フレイム)!!』


 ずがぁぁぁぁぁぁあああああん!!


 以前よりも速度を増した紅蓮の業火(メギド・フレイム)が、狙いを違わずヴァラーに炸裂した。


 ……やった!?


 もくもくと上がる砂煙の中、ヴァラーの姿を探して目を凝らす――が。


「く……、人間ごときが……」


 右肩から腕を失いながらも、未だ立ちはだかるヴァラーに息を呑む。


「許さん……! まずはこいつを仕留めてから、お前も必ず仕留める……!」


 怒りと共に放出される魔術で、尖塔がまるでみじん切りにされるように寸断だれて()()()()


 そうして、足場を失ったエリクの剣をヴァラーが弾き飛ばすと、ヴァラーがエリクの首に向かって手を伸ばす。


 ――まずい!


 でも!


 今がチャンス!!


 小指にはめた魔道具に触れて、無詠唱で転移魔術を発動させる。

 転移先は――、()()()()()()()()()()()()()()()()だ。


 空中でキャッチして、自由落下に任せてヴァレーめがけて振り下ろす。

 その間、呪文詠唱も忘れない。


「ぐっ……!?」


 ヴァレーの背後から、ヴァレーの核がある左胸を突き刺し、キィ・スペルを唱えようとした瞬間――。


『ファラ』


 背中から私に覆いかぶさるように、耳元で名前を呼んできた者がいた。


「ジ、エンド……」


 突然現れた魔王の人形が、耳元でこそりと私に囁く。


 ――隷属れいぞくせよ


 耳元で囁かれた言葉が。

 今ここで使われるべき呪文ものだと即座に理解し、そのまま復唱する。


 ――汝、我が僕となりて、新たなる道を歩み、見いだせ


 私の呪文に、びくりと体を大きく振るわせたヴァレーが、動きをなくした。


 ――我は汝を導き、光を差し締めさん。隷属せよ――


鎮魂の歌(レクイエム)


 キィ・スペルと共に、あたり一面がまばゆく輝き出す。

 同時に、力を無くしてぐらりとかしいだヴァレーが、落下しようとするのが視界に映った。


 ……やばい!

 このままじゃ、エリクともども四人全員落下する!


岩壁ストーンウォール!』


 咄嗟に、近くの建物から自分達のところまで、落下し始めたわたしたちを受け止めるように岩壁を生み出した。


 いや……、わたし、咄嗟の判断英断すぎるでしょ……!


 ごんぶとにそびえ立たせた岩壁の上に落ちたことで、たいした落下距離にもならず、怪我ひとつなく終わらせられたことにほっと安堵する。


 ほっとしたところで、はっと背後を振り返る。


 ――ジエンド。


 魔王か、もしくは魔王の人形か。

 どちらかはわからないが、少なくとも確実に私の窮地を助けに現れた。


 一体どういうことなのか問いただそうと思って慌てて振り返ったが、その時にはすでにジエンドの姿はどこにも見えなかった。


「……ファナ」


 肩越しに、エリクが声をかけてくる。


 岩壁の下は、夕暮れで藍色と橙が混ざり始めていた。

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