第五十三話雨天決行
村雨にそう頼んだ柘植は周りから冷たい視線で見られていた。
「お前…ふざけてんのか?」
柘植の髪を掴んだのは幹部の一人、飯田亮だ
「ぐっ…どうしても!ダメですか…」
酒をワンショット飲み終わってから村雨が接近する。
「で?お前は能面一家に入るのか?」
柘植はもっと深く頭を下げる。
「下っ端でもいいんです!ただ」
村雨に頭を下げ続ける柘植の顔面をニット帽を被った男が蹴る
「邪魔だぁ」
能面一家の幹部、岩瀬かずやだ
「岩瀬、飯田、やりすぎだ寺田…寝てるな」
大量の指輪と黒いマスクを着けた男が二人を制止する、そして遂に村雨が決断を下す。
「決戦は明日だ…あと俺らは光源クルーと既に組んでいる、お前は光源クルーに行けばいいだろ?」
「上に行きたいんだ!上に行ければ俺は何でも!」
柘植の腹部を村雨が蹴る、村雨のキックは固い靴のつま先を立てて蹴るそれが簡単に体に突き刺さる
「敬語、お前一年だろ?」
膝を着いた所を村雨に見下さられる、だが何度も柘植を立ち上がる。
「俺はもう光源クルーには席がない、だから…」
その言葉を遮るようにドアを大きな音で開ける。
「ん?お前は…」
そこにいたのは榊原だ、それが目に付いた柘植は榊原の胸ぐらを掴む
「てめぇ!!」
その拳を受け止め、柘植の顔面を殴る。立て続けに攻撃された柘植はそのまま倒れてしまった。
「お前ボロボロじゃん」
村雨は柘植を椅子にしニヤニヤと笑う
「あれ?藤森は来てないのか?」
「ああ、アイツはちょっと食いたいものがあるって、それで何で柘植がいるんだ?」
「しらねぇーよでもなんか復帰したいって」
柘植は立ち上がり村雨を突き飛ばす。
「頼む!俺を次の抗争に参加させてくれ!」
寺田が柘植の後ろを掴む
「村雨さん吹き飛ばすとかいい度胸だな!」
一触即発の状況を制止したのは紀村だった。
「まあ待て、じゃあこいつと戦って勝ったらとかどうだ?」
紀村は黒マスクを指さす
「え?俺?」
重い腰を上げ柘植の方に向かう
「どうする?別にいいけど」
「あなたは?」
柘植はその男に面識がなかったものの、取り敢えずで戦うことになった。
「こっちから行かせてもらう!」
柘植は耐久力やスピードはそこそこだが、パワーは見張るものがある。黒マスクは少し吹き飛ばされるもののバックステップを取るだけですぐにキックを返す。
「くッ!」
黒マスクの足を狙うが今度は顎に攻撃がクリーンヒットする。
(なんだこいつ!!)
一度体制が崩れた柘植の腹部に猛スピードでキックとパンチを繰り返す。
(攻撃もスピードも藤森や榊原にはかなわないが圧倒的に俺より強い!)
紀村は黒マスクのことを全く知らなかった、適当に推薦した後に榊原に聞く
「なあアイツ誰だ?幹部?」
榊原は呆れながら返答する。
「知らないのか?あいつは夏目良能面一家の幹部どころかNo.2だぞ」
「おっと…それじゃあアイツにはまずかったか」
榊原は紀村に不信感を抱きながら睨みつける。
「お前もしかして…柘植を入れようとしてたのか?」
紀村は榊原に目をそらしながら高角を上げる。
「さぁ?でも戦力が一人でも増えたらそれでいいかなって。」
能面一家という組織は幹部も協力、それぞれが固有の戦闘スタイルを有している。
寺田は溜めてからの突き、岩瀬は圧倒的な握力、飯田はレスリング
「終わらせようぜ!」
「何だと…」
柘植の胸ぐらを掴んだ夏目は体を大きくそらし前に倒す。
バキッやガキッのような音がした後柘植の額から血が垂れる
「あ…がはッ……」
そしてそのまま柘植は倒れる。夏目の特性はその石頭による頭突きだ。
「村雨、手加減した方がよかったか?」
村雨は酒を飲み干す
「あ~そうだな、明日だしな決戦」
光源クルーと合流した能面一家はそのまま柘植を放置し、バーを去っていった。
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そして当日になった、誰もいないだろうということで中野駅の階段の上で集まることになった。
渋谷デベロッパーズとウルフガングの面々に混ざり蛇山は進む、ふと後ろを向くとそこには鳴神がいた。
「お前も参加するのか」
「ああ、最後まで付き合うつもりだ…」
喧嘩に乗り気な鳴神とは違い、蛇山には別でやりたいこと、やらなければならないことがある。
「鳴神は、バンドどうする?」
「え?ああ俺は…」
少しだけ質問しようと思ったところに能面一家と光源クルーが向こう側から来たせいで、話がさえぎられる。
「藤森!?」
「あいつら…」
光源クルーが来るということは蛇山たちは知らない。
「何か合図いるか?」
村雨が先頭に出る。ポツポツと雨が降る中今回は天道が先頭に出る。
「いいや…もう初めだ」
「そうか…」
村雨は後ろに背負っていたバットを構える。
「行くぞー!六本木!」
それに負けじと藤森も叫ぶ
「立川ー!声上げろー!」
そして天道とともに佐鹿も前に出る
「俺にも言わせてくれ」
「ああ」
二人は思い切り叫ぶ
「「進めー!!!!!」」
二つの軍勢が走り出すと同時、雨が強く振り始めた。




