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【パパはみんなに悪口を言われている?】 side みんな パパと陛下…♡

 ***********[マコーレットとアロマ]



「アロマ、パパの就任演説って、そんなに悪かったの?」


「うううーん。悪かったというか、いつも通りというか?

 さすがに僕も、もう少し何とかとは、……。

 ちょっと思ったりしたかなぁ?」


「ふーん。

 アロが、そう言うんなら相当にひどかったのね?

 滅多にパパの事を言わないレヴィも言ってたもの。」


「兄さんなんて?」


「もう少し《偉ぶって》下さっても宜しかったのかもしれない。

 ですって。

 パパいったい、軍の就任の挨拶で‘何を’言ったの?」


「何をもなにも。たった3つ。」


「?なんて?」


 ***

「《総合統括司令》って舌を噛みそうに面倒臭いので呼ぶときは《司令》でいいです。嫌がらせかと思うよね。全く。」


「自分には、マケル前宰相のような“壮大な国作り”の構想も腕もありません。

 ただ皇帝陛下のご意志に従って、出来る事をやらせて貰おうと思っています。

 出来ない事は、出来ません。」


「出来る事の中に『能力を持つ人間が、正当に評価される』を助力できたら良いなあ……と思っています。」


「では、皆さん一緒に‘俸給分’は、頑張って働きましょう。」

 ***


「嘘、本当にそう言ったの?

 軍内部で、全員がモニターで見てるんでしょう?

 記録に残るんじゃないの?

 アロマ、話を作ってないの?」


「マコねえ、一言一句間違いないよ。

 僕、パパの言ったことはちゃんと記憶するように、

 頭の機能が出来ているから。」


冒頭(ぼっとう)の挨拶とか?こう、なんかビシッと格好よく言うもんじゃないの?

 もっと難しい言い回しで誤魔化すとか?

 ()めの言葉もあんまりじゃないの?」


「うーん。

 カルコス大将閣下の部隊もさぁ、

 《万歳》でもしてくれそうに構えていたんだけど。

 みんな、中途半端に上げた手を、下ろしたら良いのか上げたら良いのか。

 困っちゃってた。」


「………」

「………」


「しょうがないわね。パパだから。」

「うん、しょうがないよね。」





 ***************[パパの妹アンムートと“クリサーリダ王国”国王]



「遠慮せずとも良いのだぞ。アンムート。

 それは、私とてそなたが留守の間は、

 寂しくて心が千切れるようだ。」


「はい、陛下。ありがとうございます。」


「前王朝のように妃を後宮に閉じ込め、《実家への里帰り》も許さぬほど。

 私は、妃を縛る王ではない。


 そなたの夫として、妃を信じる事が出来ないような‘狭量(きょうりょう)’な男ではない。」


「ええ、陛下。

 ありがたく存じます。」


「弟達の妃以上に、そなたには恥ずかしくない実家への‘土産’も存分に用意しよう。」


「はい。でも……。」


「そなたが、故郷に帰り‘親御殿の墓参り’をと。

 その悲願を叶える為に、

 私が宮廷闘争を勝ち抜いたと申しても過言ではない。」


「ええ、陛下。

 私は、幸せ者にございます。」


「我らの子供たちを‘害する’者どもは、全て打ち払った。

 さあ、いざ!

 今であれば、そなたが憂いなく、祖国に出掛ける事もできようぞ。」


「くすん。」


「どうしたのだ?

 何か、私がそなたが気を損ねる事を申したのか?

 なぜ泣くのだ?」


「いいえ、陛下のせいではありませんの。」


「では、なぜ泣くのだ?

 そなたの兄上に書簡を送ったのであろう?」


「はい。送りましてございます。」


「聞くところ、

 昨今そなたの兄上は、かの帝国で皇帝陛下の重臣の最高指導者の地位を得たときく。

 そのたったひとりの妹のそなたが、あちらで無下に扱われるとも思われぬが。」


「ええ、陛下。」


「それとも、兄上は我が国に何か思われる事がおありなのだろうか?

 私は、そなたの笑う顔が見たいだけだ。

 何一つ、ふたごころなどは無いものを。

 私自ら、兄上に書簡をしたためてもかまわんが。」


「いいえ、陛下。

 そうではありませんの。」


「今は、兄上はご多忙でお返事を頂けないのであろうか?」


「陛下……。」


「どうしたのだ?申してみよ。

 そなたの申す事はなんであろうと私は、受け入れてみせるぞ。

 私の、愛しい‘小鳥’よ。」


「陛下…兄は陛下とは…とても違う‘男’でございますの。」


「はて?どのような?」


「兄の口癖は昔から二つでございますの。」


「口癖?」


「『面倒臭い』と『もったいない』

 こればかりを申しておりましたの。

 こたびの、私の書簡への兄の返信は。」


「ふむ。」



「『お前が来ると、面倒臭い。

 航行エネルギーがもったいない。』

 で、ございますの。

 ……………。

 くすん。くすん。

 あんまりでございましょう?」



「いやはや。なんともまた。

 帝国の頭脳と称されるそなたの兄上は。

 型破りな表現を好まれるお方であるのだな。」


「陛下、お言葉をお選び下さらなくとも、よろしゅうございます。

 兄は、‘阿呆’な‘とんちき野郎’でございますの。

 ………。

 うえーーーーん。」



「妃よ。アンムートよ。

 気を確かに。


 そなた随分と下世話な言葉も存じておったのだのう。

 それも、また可愛らしいが。」


「困ったのう。

 前宰相の娘ごの、

 兄上の連れ合い殿に私から頼んでみようぞ。」


「それにしても、そなたの兄上は、そなたの話とは違い。

 いささか冷淡な気もするな?

 これこれ、泣くでない。

 アンムート、美しい面差しが、台無しであろう。」




 ***************[パパの昔の所属傭兵部隊の元締めの“愚痴(ぐち)”]



 確かに、俺はあの小僧サリュー·ターランを(だま)した。

 形の上ではな!


 でもそのお陰であいつは、帝国であれだけ登りつめたわけだろうが。


 礼のひとつも言われたっていいんじゃないのか。


 奴が実質の“宰相職”に居る‘帝国’は、軍事国家。


 軍事国家といえば、うちの商売の“傭兵の派遣”のお得意様中のお得意様。


 数ある傭兵所の中から‘うちの傭兵所’を優先的に使ったって、

 バチは当たらないだろう。


 いったい、誰のお陰でそんなに‘お偉く’なったんだ?


 俺のお陰だろうよ。


 奴が、念願成就とばかりにうちの傭兵所と切れて、

 “大学の先生”になるところまでたどり着いたと。


 嬉しそうな顔を‘うっかり’覗かせていたところを、

 少し気の毒に思わないでもなかったが。


 どうしたって、その配役は間違った選択だったろうと、

 当時は疑う余地もなく思った。


 散々に焦土を走り抜けて、生き延びて来た‘才能’は、

 今さらそこから外れて堅気(かたぎ)のふりをしたって、

 染み付いた臭いが取れるはずはない。


 どうせ、同じようなキナ臭い商売に舞い戻るに決まっている。


 それならば、高い金と引き換えに腕を買ってくれるうちが花だろう。


 それがわかる大人になった時に、絶対に俺に感謝する日が来るはずだと。


 確信して、奴を()めて、帝国の宰相の交渉に乗ってやった。


 あの気の強い小僧が、悔し涙を(にじ)ませて俺を睨み上げた顔を忘れはしないが。


 あいつは‘感謝’をするどころか、

 うちの傭兵所を軍で使う便宜ひとつも図ろうともしない。


 未だに、‘大人’になりそこなって、俺に感謝もしていないっていうことか?

 なんとも、腹が立つ。


 ***


 帝国で手に入る‘新聞’発表を手に入れて驚いた。


 話を盛っているわけでもないだろうに。

 奴の、出自、ユニだかの大学でとっていた‘博士号’、えらいこっちゃなあ。


 俺は、‘戦上手’の戦災孤児を帝国に高く売ってやったつもりでいたんだが。


 何やら、色々訳ありの事情があったのか。


 そういえば、奴は変に‘品の良いような’ところがあった。


 大学で、あいつが遊んでいるとは思っちゃいなかったが、

 ここまでガッツリ詰めて取りに行ってるとは思わなかったぜ。


 あの‘博士号’で、本気に大学で‘先生’でもやっていくつもりだったのかよ。


 俺が、“最後の仕事”とあいつを(だま)くらかして、帝国に売った時は、

 (だま)された事を()ねているぐらいに思っていたんだが。


 俺はあいつに、本気で恨まれる事をしちまったって事か?


 内側に入れたやつにはどっか甘っちょろいあいつが、

 俺が仕切る傭兵所を、帝国から排除してきたってのがその証拠なのかもな。


 思えば、奴には借りもあった。


 俺がこの傭兵所の勢力争いで潰されそうになっていた時に、

 ほんの小僧だった奴の取り(まと)めのお陰で、

 傭兵所に巣くっていた‘阿呆’どもを追い出してやれた。


 それを忘れたつもりはない。

 むしろ、恩を返してやるぐらいのつもりだった。


 俺は、もしかしたら一斉一代の‘下手’を打ったんだろうか。

 もっと、上手いやり方と落とし所があったのか。


 恨まれたくはない相手に、恨まれ続けているのは、

 時々思い出しては酒が不味くはなっちまう。


 そういえば、奴を帝国に売った後で、

 はるばる奴を訪ねて来た“場違いな”女の子がいたな。


 大学の同級生だかの。


 後から、あの時の女の子が、

 中央で役人になって、女だてらに随分と活躍するようになっているらしい。


 奴は、あの娘と一緒になりたかったのか。


 俺は、自分の手の内で動かすには、

 大きすぎる駒を不相応に手をだしちまったのか。


 寝覚めの悪い事をしちまったもんだ。


 でも、この商売は文字どおり“命あっての物種”だろうが。


 奴もここまで生き延びて、昔の可愛い彼女も生きてご活躍。


 そこまで恨まれなくてもいいだろうに。


 しつこく恨まれてるのも、鬱陶しいぜ。




 ***************[メルキオーア皇帝陛下]


 私の忍耐力は、驚愕に値する。

 自ら認める。


 前愚帝の‘遺伝子’上の息子であり、

 初めから老人のような知性の欠片かけらも持たぬ女の腹から産まれた事に、

 歯噛みをしていた時さえ、

 冷徹な支配者として、表に感情を出す愚を犯さなかった。


 静かなふりを装い、時期を待ち、(こと)を運んだ。


 皇太后を名乗ったあの女に、‘煮え湯を飲まされた’のは、

 “あれ”とても同じこと。

 

 あれの母親、赤子の弟に手をかけたのは、

 あの女‘皇太后’の手の者であった。


 サリューは、当時は私の手勢との区別がついてはおらなかった。


 そのせいで、サリューを帝国の手の内から逃がす羽目になった事も腹立たしい。


 それまで、‘あれ’を時間をかけて私に馴染ませようと、真綿に包むように可愛がっておったものを。


 “元凶”は、あの女‘皇太后’であった。


 であるのに、“あれ”サリューは、あの女が野垂れ死にをせぬように、

 取り計らってやっていた。


 ‘あれ’は憎しみを持ち、その思いが止まぬはずの‘女’にさえ構ってやる。

 サリューの《人の良さ》が、苛立たしい。


 サリューの‘能力’に不足があるわけでは無い。

 それどころか、考え及ばぬほどに頭が切れる手腕を持つ。


 どこぞの“清教徒”でもあるまいに、

 ‘あれは’あっちにもこっちにも‘良い顔’をして気を散らす。


 やっと、私の(そば)に置くまで、30年以上かかった。

 私は、自分の《気の長さ》には、歴代皇帝の中で随一と確信を持つ。


 サリューは子供の時でさえ、黙って親に従う性質(たち)ではなかった。


 私が、‘あれ’を“気に入った”としても、

 無理やりに(そば)に置こうとすれば、

 縛った鎖ごと自分の手足でも食い千切りそうな事はわかっていた。


 サリューは、未だに権力に伴った‘誇り’を振り回す事をせぬ。


 しかし、それよりも自分自身の“自我の誇り”で命がけで意地をはる。

 かえって、厄介で扱いずらい。


 ‘あれ’の声が『皇帝陛下』と私を呼び、‘あれ’が目の前にある事が私を一番に喜ばせ満足をさせる。


 しかし、サリューが私の(かたわ)らにあるのは、

 私が《皇帝》として“この帝国を統べる”から従っておるのではないだろう。


 自我を折らぬサリューが、《皇帝の私》だからと(ひざ)を折ったのではなかろうに。


 この30年以上に渡る年月、‘あれは’一度としてその『想いを口にする』ことさえ無い。


 閨の‘睦事’でさえ、そういう可愛い真似はせぬ。


 黙って‘飼われる’はずのないサリューを、やっと名実共に私の(そば)に据える事が出来た。


 この時になっても、サリューはまだ、


『陛下、少しだけでも我慢をなさって下さい。』


 と、いい募る。


 今度は、マケルの作った帝国の‘跡取り人形’を構いだした。


 ここまで、忍耐力を試され続けた私に、どの口で申すのであるか。



 ******



「陛下、陛下のご健康とご満足を頂きますのに、

 《職分》を分ける事はお考えになりませんか?」


 それが、サリューが昨夜の私の腕の中で申す事。


 サリューの思惑(おもわく)は、分かっておる。


『自分は私の寝所から引き上げ、他の年のいかぬ者を(はべ)らせろ』


 と暗に含んでおるのだろう。


 それが、出来るのであれば、とっくにそのようにしていただろう。


 どこに、皇帝の腕の中で‘そのような不埒(ふらち)’な事を申す者がいるものか。


 お前は、私の《寵愛》を一身に受けている‘自覚’すら無いというのか。


 枕の上で申すのならば、少しは気の効いた別の(ささや)きを申したらどうだ。


 私に腹を立たせるお前の体に、それを叩きつけるのは仕方がない。


 お前が、翌朝に『仕事に差し障る』と、

 私を恨みがましそうに見上げていた。


 やっと、同じ寝所寝台で、いつもお前を構える。

 今さら、逃がそうとは思わん。


 お前以上に、私の方がよほど不思議である。


 お前が、年月が経とうと、‘色あせぬ’のが悪いのだ。


 幾度抱いたかも数えられぬ、お前の体は知り尽くしておる。


 決して、‘色気を振り撒く’性質(たち)ではないお前に、

 結局溺れて離す事が出来ない事は今さらであろう。


 声も、あまりあげずに(こら)えたお前の整った顔が愁いをおびて歪む様子。


 お前の弱いところをからかってやる時の、恥じらった様子。


 これだけの時が経とうと、お前は色あせる事がない。


 ここまで、私が飽きる事が出来なかったのだ。

 死ぬまで、お前を離すつもりはない。


 お前は、やっと私のものになったのであるから。


 私のお前に対する《執着》は常道を逸しているのであろう。

 分かってはおる。


 しかし、先代皇帝、先々代皇帝の狂い方よりは‘幾分’ましであろう。


 奴らと違い、私の《狂気》は簡単に解けるのものを。


『サリュー、お前が私と一緒に“狂気”の中に落ちれば良いだけ。』


 それをできぬのも、また“お前”であるから、

 仕方がないと忍耐をしてやっておる。

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