【パパは予選を勝ち抜いている?】 side あっちこっち パパと陛下…♡
**************[ファザコン認定のアロマ君]
「本当ですか?カルコス大将閣下!
やったー!!!嬉しいですぅ。」
「僕、帝国に戻って来ていて本当に良かった!
カルコス大将閣下の従卒にしていただいて最高でした!」
「そんなにか?」
脳筋部隊に配置された時は、パパは何を考えているんだろう?
と、思ったんだけれど。
他の部隊よりも、ここの部隊は特に“剣術大会”なんて、大好物だもんね。
予選の、32人から4人に絞るまではトーナメント方式。
配信もされないから、
どっからパパの試合映像を手に入れようかと、考えていたんだ。
カルコス大将閣下が、予選会からご覧になるので、
従卒の僕もお供をさせて頂ける事になった。
パパの大嫌いな‘子供のお茶汲み仕事’の従卒やってて良かった。
僕、今帝国に居たことに、‘神様’感謝致します。
おっと、‘神様’もパパが大嫌いなやつだったな。
カルコス大将の幕僚のお兄ちゃん達からも‘冷やかし’の声がかかった。
「良かったなあアロマ。
君のファザコンぶりは、この部隊で知らない者がいないもんなあ。」
「良かったなあ。
ターラン司令がすっかりお元気になられたって事にも安心するだろう?」
「アロマ君、そんなに、目に涙を溜めてピョンピョンするほど嬉しいのか?」
「はい。実は僕、パ(ヤバい)父が‘剣’を振るうところを見たことがないんです。
家では、父は戦闘の匂いを纏わせないように、努力をしていたようです。」
「ほお、何でだ?」
カルコス大将がお尋ねになった。
どこまで話をするのがいいところだろう?
「姉が、母の事故死を目撃した後に、
父と僕のところにやってきたので。
帝国に来た初めの頃は、父が殺気立っていたり、
軍服に硝煙反応が残っていると。
姉は過剰に反応する事がありましたので。」
「アロマの姉上というと、ビステル中将の伴侶となっている方だろう。」
「カルコス大将閣下が、知っていらっしゃるなんて。
うちの姉、何か失礼なことをやらかしましたか?」
「ビステル中将の細君は、ものすごい美人であると評判だからな?
才色兼備の誉れが高いだろう。」
僕は姉が2人いたのかな?別の姉の話だろうか?
「閣下、それはきっと人違いではないかと存じます。
うちの姉は、悪いところだけ父に似たとは、評判ですけれど。」
「わははは。
アロマにはもう一人の幕僚のように、
ここで働いて貰っているからな。
俸給もろくに出ておらんのに。
タダ働きでこき使っていて申し訳ない。
たまには、こういう息抜きも良いだろう。」
カルコス大将閣下と幕僚の会議に、
お茶を運びながら聞かれた事を答えているうちに、
僕は4人目の幕僚みたいな扱いになっている。
生意気にならないようにと、目立たないよう、
小さくなって居ようと気をつけていたのに。
この部隊の人達は、
きっぱりと線引きをした後には、皆ぐちゃぐちゃと言わない。
‘役に立つ人間か’、それ以外かハッキリしている。
僕の、今まで学んできた事が有用であるとわかると、
誰も僕の足を引っ張らない。
時には僕と幕僚のお兄さん達と意見がぶつかって、
よその部隊でなら『従卒の分際で!』と、
言われるはずなのに。
『アロマだからな。しょうがない。』と、
みんな矛を収めてくれている。
とても仕事がやり易くて、ありがたいです。
嬉しいなあ。嬉しいな。
パパが剣を振るうのが見られるなんて、楽しみ過ぎるよ。
*************[レヴィオン·ビステル中将‘目線’]
「アロマぁ、‘パパ’言うのも駄目だけど、‘クロおじさん’も駄目だぞぉ。」
予選会場に到着すると、アロマがカルコス大将閣下のお供で先に来ていた。
見えない尻尾をブンブン振り回して、
えらく楽しみのようだな。
まあ、俺も今日の試合を見たいあまりに、
相当仕事を詰めて予定を開けて来たからな。
今日の主役?の‘ターラン統括司令’に、
積まれてしまった仕事の数々を必死で片付けて来たわけなんだが。
後から、やってきたクローレス上級大将に、
アロマが声をかけた途端に衆目を集めてしまった。
『クロおじさん。ここ空いてますよ!』
笑。しょうがないな、アロマは。
いつものアロマは、ひと当たりが柔らかくても、
実は隙がなく計算をしつくしているように頭が切れる。
こんなに、子供っぽいアロマは珍しいなあ。
「にぃ、違った!ビステル中将閣下、楽しみですぅ。
僕、昨日はよく眠れなかったです。」
「ぷぷ。俺はいいよアロマ。兄さんでも。笑」
******
32人の出場者は皆、いやいや1人を除いた31人は始まる前から気合いの入れ方が尋常ではない。
興奮と緊張感の熱気が、試合会場を包んでいる。
素振りをしたり、柔軟をしたり走ってみたりと、
落ち着きなく動いている者が多い。
そのなかで、俺の義父《サリュー·ターラン司令》だけは、簡易椅子に座って足を組んで。
腕を組んで瞑想?しているのか?
いや、あれはガムを噛んでるのか?
プーッと膨らましてって、駄目じゃないのか?
舐めすぎ?
それとも、変形の威嚇の一種なのか?
クローレス上級大将が仰った。
「な、あいつはああだよ。
何時だって。」
「昔からって事ですか?閣下。」
「いやいや、だいぶおとなしくなっているところだぜ。
あれでも。
アロマくらいの年の頃は、もっとひどかった。
帝国の正規軍の奴らなんぞには、
はなっからバカーにしきった顔をして舐め切っていたからな。
うっかり、あいつに切れちまった奴が手なんか出してみろ。」
「どうなるんですか?」
「“瞬殺”だな。
問題になるから、本当に殺りゃしなかったがよ。」
「クロおじ、うっぷ間違えた。
クローレス上級大将は、パ…父と一緒にお仕事をなさったんですか?」
「なんだ、アロ。パパから聞いていないのか。
だからこんな腐れ縁になっちまったんだろうよ。」
「そうなんですか。
僕は、おじさ、クローレス上級大将の牧場での何かの繋がりかと思っていました。」
「アロ、舌を噛むから、いつも通りで今日はいいぞ。
昔は、あんなもんじゃねえぞ。
奴の仲間をからかった俺の部下達を、
‘めっためたに’しやがったくせして。
その後には、今のあれどころではない、
ふて腐れた顔をしていたわけよ。
そのお前さんのパパに、
俺は、ペコペコ機嫌をとって働いて頂いたんだぜ。苦労したぞ。」
「いつ頃の事ですか?上級大将閣下。」
俺が訊いてみると。
「俺が、少佐になって直ぐの頃。
今のレヴィ君よりも、もっと年いっていない時だなあ。」
横で、カルコス大将も興味深げに頷いていらっしゃる。
「アロマ、レヴィ君。
よーく‘目’を見開いて見ていろよ。
決着が付くのはきっと《一瞬》だからな。」
「一瞬ですか?」
「これって、予選の間はトーナメントだろう?
たまたま、あいつと当たった奴は、気の毒だったよなあ。」
「ほー。」
カルコス大将閣下も、驚いた顔で。
「おお。
でも、予選は模擬刀剣だろう?
それは、良かったな。
あいつ、心配してたからよ。」
「ターラン司令がご心配を?」
俺も、ターラン司令が入院なさってから、
まだ半年ぐらいしか経っていないことを思って、
少し心配をしていたから。
「おお、
『この頃はやってないから、
《寸止め》が出来なかったらどうしよう。
怪我はあんまりさせたくないし。』
って、言ってたな。」
「はあ?そっちですか。」
「おお、決勝は模倣刀剣でなくて、本物を使うんだろ?
なかなか、エグい話だな。
あいつには、それまで‘カン’を取り戻して貰わんと。
物騒なものを見せられても後味が悪いからなあ。」
クローレス上級大将の話は、友人の誇張だろうと思っていたんだが。
とんでもなかった。
本当だった。
本当に一瞬で、勝負がついていった。
32人が4人に絞られる迄に、
ターラン司令が戦われたのは、3回。
司令が模擬刀を握っていられた時間って、
3回全てを合わせて10分にも足りないぐらいで、
勝負は呆気なくついていった。
他の試合は、ひと試合30分以上もかかって決着がつかないものまであった。
司令の対戦相手は、長剣、長刀、斧のようなものやら色々な流派がとりまざって。
どの相手の前でもターラン司令は
『力を抜いて』模擬刀はだらりと下げて持っていらっしゃる。
でも、背筋はピンとして、立ち姿は美しい。
体じゅうに、緊張ひとつしていない。
奇声を上げて襲って来る相手をスッとかわして、一瞬で喉元に剣を寸止めするか、
相手の得物を跳ね上げるか。
司令の方からは仕掛けない。
見たこともない、面白い剣法だな。
余りに呆気なくて、うっかりすると瞬きをしている間に勝負を見逃してしまいそうだった。
ターラン司令を含めて、勝ち残った他の3人も‘実力者’ではあるのだろうが。
司令と当たらなかった“運の良さ”が幸いだったのではないだろうか。
知らない者が、この場面だけを見たら、
まるで撮影用の特撮場面を見させられているようだった。
横のアロマは、途中で口を開くのをやめたようだ。
鳥肌をたてて、本当に震えながらじっと見つめていた。
「パパって、本当に綺麗だ。」
カルコス大将閣下が、同調するように。
「あんなに美しく無駄のない体の動きは見たこともない。
確かに、人間技にはみえないキレイな剣だな。
見事としか言葉が見つからんな。」
俺の義父、マコーレットの父上は、
確かに‘人間離れ’した人だと、改めて感嘆をして息をつめた。
アロマほどではなくても、気がついたら自分の手も震えながら試合を拝見していた。
************[ガレット准将‘目線’]
すげー。
面白そうな匂いがするので、この《剣術大会》とかを覗きに来ていた。
それにしても、うちの司令は態度が悪りいなあ。
お行儀が悪い事で定評のある俺でさえ、
見ていてハラハラするような、‘お行儀の悪さ’だぜ。
この人ホントに。
ああぁ、今‘あくび’までしただろう。
次に控えている向こう側の対戦相手が、煽られて真っ赤になっているぞ。
********
この人が、実は腕っぷしが強いのは知ってはいた。
俺が軍席を剥奪されて、
腐って場末の酒場で飲み潰れていた時にふらっとやって来た。
まだ、この人が20代後半の頃だった。
見た目が若いし、綺麗な顔をしているので直ぐに絡まれ出した。
そいつらを、‘蚊’でも払うように、大きな動作もしないで、
相手をコロコロ転がしていた。
『気の毒だったな。あんたを使うだけの頭がない奴らに使われて。』
この人が言った拍子に、
後ろから殴りかかって来た相手が、
また吹っ飛んで転がって『ヒーヒー』言っていた。
今の、何だ?
手も足も一瞬しか動かしていなかっただろうが。
酒で、目がおかしくなっているのかと思った。
どっかのインチキ臭い“超能力”で、手を使わずに物を動かす奴の本物かと思ったが。
よくみると、木刀のような棒切れを一本持って振り回していた。
********
何だよ。この試合は。
あっという間かよ。
つまんねえ。
‘やらせ’でも、‘仕込み’でもないんだろう。
あれだけ周りは熱くなってんだから。
あの人は、待っている間の態度が、
どうしょうもなく悪いくせに、
模造剣握って、一瞬で勝負をつける瞬間が、
ぞくぞくするほど…こう、何て言うんだか。
どっかで見た事がある“神さん”への、『奉納の舞』を、
瞬間に見せられているみたいだな。
しかし、この人の側にいるとホント、面白いものが見られて退屈しねえ。
退屈している暇がない程、こき使われるけどよ。
それと引き換えにしても、充分以上に面白いもんが見られる。
まるで、この人自身が‘麻薬’だな。
俺が、あの酒場で捕まっちまってから、
この人生が結構‘愉快’なもんに思えて来た。
この人は強いかと思うと、危なっかしいし。
悪魔寄りなんだか天使寄りなんだか。
振れ幅が広くって、未だにさっぱりわかんねえ。
でも、この人と仕事をしていると、
偽善のような‘お綺麗’ではなく、
本質的に汚い事はしない人なんだよな。
甘いっちゃ、甘いんだろうけども。
自分の手はきっちり、泥にも血にも汚すのに。
なんていうんだか、この人自身は‘汚れない’つうのか。
俺も、よくわかんねえが。
とにかく、場末の安い酒よりも、
この人に酔わされる方がよっぽど効いちまってるって事は分かる。
この大会の本選は、模造剣を使わんで真剣でやるんだろ?
怖えなあ。
でも、こういうの最高に“怖いものみたさ!”ってやつだろうな。
************[メルキオーア皇帝陛下‘目線’]
鈍い!
‘これ’は、本当に鈍い!
マケル宰相が、高齢ゆえにそろそろ潮時。
私の代を最後まで支える事が不可能であるのは、初めから分かっていた。
今、私の隣に転がっている“鈍いこれ”に、マケル宰相の次を勤めさせたい。
その為に、‘これの’顔を広げ、少しばかりの‘カリスマ性’を誇示させておきたい。
余興でも催してと、‘道化者’のふりまでしてやるつもりでおるのに、この私が。
私がただ、お前が剣を振り回す様を所望したとでも思うのか?
お前の、剣を持つ姿を目にする事は、悪くはない。
だが、お前は私の真意に気付いてさえもいない。
‘馬鹿’ではないのだが。呆れる程に鈍い。
与えた仕事は、必ず求めた以上の成果を差し出して来る。
それなのに、なぜここまで、私の機微に疎いのか。
今更、お前を逃すつもりなどない。
だが、お前は意地を張り出すと、《自分の命を質にとるように》意地を張る。
本当に手がかかる。
「前髪が顔にかかって、これでは相手を見にくくはないのか?」
「陛下。かえってこちらの目線が相手に顕になりませんので、これはこれで便利な事があるのです。」
「ほお。だが、こちらは少し切ってはどうだ?
顔がよく見えぬ。」
「はあ、陛下?
どうして顔がよく見える必要があるのでしょう?」
「本選は、帝国軍の中で配信がなされるであろうが。
少しは、小綺麗に見せてやると良い。」
顔にかかるサリューの髪をつかんで持ち上げる。
あらわになった耳を、舌先でもて遊んでやる。
「う。配信?なぜ?」
押し殺した声をサリューがあげる。
これの体の反応を誘う場所は、知り尽くしている。
少しずつ、熱を持たせた体を抱きしめ、貪る。
サリューが、ものを言いたげに私を見上げる。
おずおずと申して来る。
「陛下、今日の相手は…余りにも……手応えが…なく。
あれは、どなたかの…んん、仕込みであるのでしょうか?」
「ふん、私は知らぬな。
腕の立つものには、当たらなかったのか?」
「誰もが、剣を殺める道具には、しては…いな…直ぐに……分かりま…した。」
「ほお。」
「この先の相手は分かりま…せ…んが。
今、……どき。剣よりも……。」
では、勝者の剣は、間違いはなくこれに渡す用の物を打たせておけばよかろう。
臣下臣民の前で、‘これに’先に渡した短剣と揃いの長剣を下賜してやろう。
「陛下、これでお怒りを収めて……頂けますか?」
なんだ!似合いもせぬ上目遣いで。
本当に鈍くて馬鹿だ。
お前を他の女に盗られた怒りは、生涯忘れる事など無いわ。
ただ、こうして忘れている様にしておるのに。
この鈍い馬鹿は、自分自身が他人に対して嫉妬心が薄い。
であるから、私とても同じだと思っているのか。
「何の事であったかな?」
「ところで、サリュー。
お前の若い頃の面差しのある、
お前と違って面白味のある‘息子’は元気か?」
ふん、青くなりおって。
馬鹿か、お前は。
私に煮えくりかえる思いをさせた、女の息子など。
あの当時は八つ裂きにしてやりたいと思っておった。
お前が、ピーピー騒ぐのが分かっておるから、
お前の‘犬猫’の類いと同じようなものとして。
無理矢理に落としどころをつけてやっているものを。
誰が、好きこのんで‘手など’つけるか。
まだ、それにさえ気がつかぬか。
どこまでも鈍い。
私とて、お前に意趣返しのひとつもしてやりたい。
腹立たしい故、今夜はもう少し泣かせてやろうか、
私の体の下で。




