表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/91

【パパは予選を勝ち抜いている?】 side あっちこっち パパと陛下…♡

 **************[ファザコン認定のアロマ君]



「本当ですか?カルコス大将閣下!

 やったー!!!嬉しいですぅ。」


「僕、帝国に戻って来ていて本当に良かった!

 カルコス大将閣下の従卒にしていただいて最高でした!」


「そんなにか?」


 脳筋部隊に配置された時は、パパは何を考えているんだろう?

 と、思ったんだけれど。


 他の部隊よりも、ここの部隊は特に“剣術大会”なんて、大好物だもんね。


 予選の、32人から4人に絞るまではトーナメント方式。


 配信もされないから、

 どっからパパの試合映像を手に入れようかと、考えていたんだ。


 カルコス大将閣下が、予選会からご覧になるので、

 従卒の僕もお供をさせて頂ける事になった。



 パパの大嫌いな‘子供のお茶汲み仕事’の従卒やってて良かった。


 僕、今帝国に居たことに、‘神様’感謝致します。


 おっと、‘神様’もパパが大嫌いなやつだったな。


 カルコス大将の幕僚のお兄ちゃん達からも‘冷やかし’の声がかかった。


「良かったなあアロマ。

 君のファザコンぶりは、この部隊で知らない者がいないもんなあ。」


「良かったなあ。

 ターラン司令がすっかりお元気になられたって事にも安心するだろう?」


「アロマ君、そんなに、目に涙を溜めてピョンピョンするほど嬉しいのか?」


「はい。実は僕、パ(ヤバい)父が‘剣’を振るうところを見たことがないんです。

 家では、父は戦闘の匂いを(まと)わせないように、努力をしていたようです。」


「ほお、何でだ?」


 カルコス大将がお尋ねになった。

 どこまで話をするのがいいところだろう?


「姉が、母の事故死を目撃した後に、

 父と僕のところにやってきたので。

 帝国に来た初めの頃は、父が殺気立っていたり、

 軍服に硝煙反応が残っていると。

 姉は過剰に反応する事がありましたので。」


「アロマの姉上というと、ビステル中将の伴侶となっている方だろう。」


「カルコス大将閣下が、知っていらっしゃるなんて。

 うちの姉、何か失礼なことをやらかしましたか?」


「ビステル中将の細君は、ものすごい美人であると評判だからな?

 才色兼備の誉れが高いだろう。」


 僕は姉が2人いたのかな?別の姉の話だろうか?


「閣下、それはきっと人違いではないかと存じます。

 うちの姉は、悪いところだけ父に似たとは、評判ですけれど。」


「わははは。


 アロマにはもう一人の幕僚のように、

 ここで働いて貰っているからな。

 俸給もろくに出ておらんのに。

 タダ働きでこき使っていて申し訳ない。

 たまには、こういう息抜きも良いだろう。」


 カルコス大将閣下と幕僚の会議に、

 お茶を運びながら聞かれた事を答えているうちに、

 僕は4人目の幕僚みたいな扱いになっている。


 生意気にならないようにと、目立たないよう、

 小さくなって居ようと気をつけていたのに。


 この部隊の人達は、

 きっぱりと線引きをした後には、皆ぐちゃぐちゃと言わない。


 ‘役に立つ人間か’、それ以外かハッキリしている。


 僕の、今まで学んできた事が有用であるとわかると、

 誰も僕の足を引っ張らない。


 時には僕と幕僚のお兄さん達と意見がぶつかって、

 よその部隊でなら『従卒の分際で!』と、

 言われるはずなのに。


『アロマだからな。しょうがない。』と、

 みんな(ほこ)を収めてくれている。


 とても仕事がやり易くて、ありがたいです。


 嬉しいなあ。嬉しいな。

 パパが剣を振るうのが見られるなんて、楽しみ過ぎるよ。





 *************[レヴィオン·ビステル中将‘目線’]



「アロマぁ、‘パパ’言うのも駄目だけど、‘クロおじさん’も駄目だぞぉ。」


 予選会場に到着すると、アロマがカルコス大将閣下のお供で先に来ていた。


 見えない尻尾をブンブン振り回して、

 えらく楽しみのようだな。


 まあ、俺も今日の試合を見たいあまりに、

 相当仕事を詰めて予定を開けて来たからな。


 今日の主役?の‘ターラン統括司令’に、

 積まれてしまった仕事の数々を必死で片付けて来たわけなんだが。


 後から、やってきたクローレス上級大将に、

 アロマが声をかけた途端に衆目を集めてしまった。


『クロおじさん。ここ空いてますよ!』


 笑。しょうがないな、アロマは。


 いつものアロマは、ひと当たりが柔らかくても、

 実は隙がなく計算をしつくしているように頭が切れる。


 こんなに、子供っぽいアロマは珍しいなあ。


「にぃ、違った!ビステル中将閣下、楽しみですぅ。

 僕、昨日はよく眠れなかったです。」


「ぷぷ。俺はいいよアロマ。兄さんでも。笑」




 ******




 32人の出場者は皆、いやいや1人を除いた31人は始まる前から気合いの入れ方が尋常ではない。


 興奮と緊張感の熱気が、試合会場を包んでいる。


 素振りをしたり、柔軟をしたり走ってみたりと、

 落ち着きなく動いている者が多い。


 そのなかで、俺の義父《サリュー·ターラン司令》だけは、簡易椅子に座って足を組んで。


 腕を組んで瞑想?しているのか?


 いや、あれはガムを噛んでるのか?

 プーッと膨らましてって、駄目じゃないのか?


 ()めすぎ?

 それとも、変形の威嚇(いかく)の一種なのか?


 クローレス上級大将が仰った。


「な、あいつはああだよ。

 何時(いつ)だって。」


「昔からって事ですか?閣下。」


「いやいや、だいぶおとなしくなっているところだぜ。

 あれでも。

 アロマくらいの年の頃は、もっとひどかった。


 帝国の正規軍の奴らなんぞには、

 はなっからバカーにしきった顔をして舐め切っていたからな。

 うっかり、あいつに切れちまった奴が手なんか出してみろ。」


「どうなるんですか?」


「“瞬殺”だな。

 問題になるから、本当に()りゃしなかったがよ。」


「クロおじ、うっぷ間違えた。

 クローレス上級大将は、パ…父と一緒にお仕事をなさったんですか?」


「なんだ、アロ。パパから聞いていないのか。

 だからこんな腐れ縁になっちまったんだろうよ。」


「そうなんですか。

 僕は、おじさ、クローレス上級大将の牧場での何かの繋がりかと思っていました。」



「アロ、舌を噛むから、いつも通りで今日はいいぞ。

 

 昔は、あんなもんじゃねえぞ。


 奴の仲間をからかった俺の部下達を、

 ‘めっためたに’しやがったくせして。

 その後には、今のあれどころではない、

 ふて腐れた顔をしていたわけよ。


 そのお前さんのパパに、

 俺は、ペコペコ機嫌をとって働いて頂いたんだぜ。苦労したぞ。」


「いつ頃の事ですか?上級大将閣下。」


 俺が訊いてみると。


「俺が、少佐になって直ぐの頃。

 今のレヴィ君よりも、もっと年いっていない時だなあ。」


 横で、カルコス大将も興味深げに(うなず)いていらっしゃる。


「アロマ、レヴィ君。

 よーく‘目’を見開いて見ていろよ。

 決着が付くのはきっと《一瞬》だからな。」


「一瞬ですか?」


「これって、予選の間はトーナメントだろう?

 たまたま、あいつと当たった奴は、気の毒だったよなあ。」


「ほー。」


 カルコス大将閣下も、驚いた顔で。


「おお。

 でも、予選は模擬刀剣だろう?

 それは、良かったな。

 あいつ、心配してたからよ。」


「ターラン司令がご心配を?」


 俺も、ターラン司令が入院なさってから、

 まだ半年ぐらいしか経っていないことを思って、

 少し心配をしていたから。


「おお、

『この頃はやってないから、

 《寸止め》が出来なかったらどうしよう。

 怪我はあんまりさせたくないし。』


 って、言ってたな。」


「はあ?そっちですか。」


「おお、決勝は模倣刀剣でなくて、本物を使うんだろ?

 なかなか、エグい話だな。


 あいつには、それまで‘カン’を取り戻して貰わんと。

 物騒なものを見せられても後味が悪いからなあ。」


 クローレス上級大将の話は、友人の誇張だろうと思っていたんだが。


 とんでもなかった。


 本当だった。


 本当に一瞬で、勝負がついていった。


 32人が4人に絞られる迄に、

 ターラン司令が戦われたのは、3回。


 司令が模擬刀を握っていられた時間って、

 3回全てを合わせて10分にも足りないぐらいで、

 勝負は呆気なくついていった。


 他の試合は、ひと試合30分以上もかかって決着がつかないものまであった。


 司令の対戦相手は、長剣、長刀、斧のようなものやら色々な流派がとりまざって。


 どの相手の前でもターラン司令は


『力を抜いて』模擬刀はだらりと下げて持っていらっしゃる。


 でも、背筋はピンとして、立ち姿は美しい。

 体じゅうに、緊張ひとつしていない。


 奇声を上げて襲って来る相手をスッとかわして、一瞬で喉元に剣を寸止めするか、

 相手の得物(えもの)を跳ね上げるか。


 司令の方からは仕掛けない。


 見たこともない、面白い剣法だな。


 余りに呆気なくて、うっかりすると(まばた)きをしている間に勝負を見逃してしまいそうだった。


 ターラン司令を含めて、勝ち残った他の3人も‘実力者’ではあるのだろうが。

 司令と当たらなかった“運の良さ”が幸いだったのではないだろうか。


 知らない者が、この場面だけを見たら、

 まるで撮影用の特撮場面を見させられているようだった。


 横のアロマは、途中で口を開くのをやめたようだ。


 鳥肌をたてて、本当に震えながらじっと見つめていた。


「パパって、本当に綺麗だ。」


 カルコス大将閣下が、同調するように。


「あんなに美しく無駄のない体の動きは見たこともない。

 確かに、人間技にはみえないキレイな剣だな。

 見事としか言葉が見つからんな。」


 俺の義父、マコーレットの父上は、


 確かに‘人間離れ’した人だと、改めて感嘆をして息をつめた。


 アロマほどではなくても、気がついたら自分の手も震えながら試合を拝見していた。




 ************[ガレット准将‘目線’]


 すげー。


 面白そうな匂いがするので、この《剣術大会》とかを覗きに来ていた。


 それにしても、うちの司令は態度が悪りいなあ。


 お行儀が悪い事で定評のある俺でさえ、

 見ていてハラハラするような、‘お行儀の悪さ’だぜ。


 この人ホントに。

 ああぁ、今‘あくび’までしただろう。


 次に控えている向こう側の対戦相手が、(あお)られて真っ赤になっているぞ。


 ********


 この人が、実は腕っぷしが強いのは知ってはいた。


 俺が軍席を剥奪されて、

 腐って場末の酒場で飲み潰れていた時にふらっとやって来た。


 まだ、この人が20代後半の頃だった。


 見た目が若いし、綺麗な顔をしているので()ぐに絡まれ出した。


 そいつらを、‘蚊’でも払うように、大きな動作もしないで、

 相手をコロコロ転がしていた。


『気の毒だったな。あんたを使うだけの頭がない奴らに使われて。』


 この人が言った拍子に、

 後ろから殴りかかって来た相手が、

 また吹っ飛んで転がって『ヒーヒー』言っていた。


 今の、何だ?


 手も足も一瞬しか動かしていなかっただろうが。


 酒で、目がおかしくなっているのかと思った。


 どっかのインチキ臭い“超能力”で、手を使わずに物を動かす奴の本物かと思ったが。


 よくみると、木刀のような棒切れを一本持って振り回していた。



 ********



 何だよ。この試合は。


 あっという間かよ。


 つまんねえ。


 ‘やらせ’でも、‘仕込み’でもないんだろう。

 あれだけ周りは熱くなってんだから。


 あの人は、待っている間の態度が、

 どうしょうもなく悪いくせに、


 模造剣握って、一瞬で勝負をつける瞬間が、

 ぞくぞくするほど…こう、何て言うんだか。


 どっかで見た事がある“神さん”への、『奉納の舞』を、

 瞬間に見せられているみたいだな。


 しかし、この人の(そば)にいるとホント、面白いものが見られて退屈しねえ。


 退屈している暇がない程、こき使われるけどよ。


 それと引き換えにしても、充分以上に面白いもんが見られる。


 まるで、この人自身が‘麻薬’だな。


 俺が、あの酒場で捕まっちまってから、

 この人生が結構‘愉快’なもんに思えて来た。


 この人は強いかと思うと、危なっかしいし。


 悪魔寄りなんだか天使寄りなんだか。

 振れ幅が広くって、(いま)だにさっぱりわかんねえ。


 でも、この人と仕事をしていると、

 偽善のような‘お綺麗’ではなく、

 本質的に(きたな)い事はしない人なんだよな。


 甘いっちゃ、甘いんだろうけども。


 自分の手はきっちり、泥にも血にも汚すのに。


 なんていうんだか、この人自身は‘汚れない’つうのか。

 俺も、よくわかんねえが。


 とにかく、場末の安い酒よりも、

 この人に酔わされる方がよっぽど効いちまってるって事は分かる。



 この大会の本選は、模造剣を使わんで真剣でやるんだろ?


 怖えなあ。


 でも、こういうの最高に“怖いものみたさ!”ってやつだろうな。





 ************[メルキオーア皇帝陛下‘目線’]



 鈍い!

 ‘これ’は、本当に鈍い!


 マケル宰相が、高齢ゆえにそろそろ潮時。


 私の代を最後まで支える事が不可能であるのは、初めから分かっていた。


 今、私の隣に転がっている“鈍いこれ”に、マケル宰相の次を勤めさせたい。


 その為に、‘これの’顔を広げ、少しばかりの‘カリスマ性’を誇示させておきたい。


 余興でも催してと、‘道化者’のふりまでしてやるつもりでおるのに、この私が。


 私がただ、お前が剣を振り回す様を所望したとでも思うのか?


 お前の、剣を持つ姿を目にする事は、悪くはない。


 だが、お前は私の真意に気付いてさえもいない。


 ‘馬鹿’ではないのだが。呆れる程に鈍い。

 与えた仕事は、必ず求めた以上の成果を差し出して来る。


 それなのに、なぜここまで、私の機微に疎いのか。


 今更、お前を逃すつもりなどない。


 だが、お前は意地を張り出すと、《自分の命を質にとるように》意地を張る。

 本当に手がかかる。


「前髪が顔にかかって、これでは相手を見にくくはないのか?」


「陛下。かえってこちらの目線が相手に(あらわ)になりませんので、これはこれで便利な事があるのです。」


「ほお。だが、こちらは少し切ってはどうだ?

 顔がよく見えぬ。」


「はあ、陛下?

 どうして顔がよく見える必要があるのでしょう?」


「本選は、帝国軍の中で配信がなされるであろうが。

 少しは、小綺麗に見せてやると良い。」


 顔にかかるサリューの髪をつかんで持ち上げる。

 あらわになった耳を、舌先でもて遊んでやる。


「う。配信?なぜ?」


 押し殺した声をサリューがあげる。


 これの体の反応を誘う場所は、知り尽くしている。


 少しずつ、熱を持たせた体を抱きしめ、(むさぼ)る。


 サリューが、ものを言いたげに私を見上げる。

 おずおずと申して来る。


「陛下、今日の相手は…余りにも……手応えが…なく。

 あれは、どなたかの…んん、仕込みであるのでしょうか?」


「ふん、私は知らぬな。

 腕の立つものには、当たらなかったのか?」


「誰もが、剣を殺める道具には、しては…いな…()ぐに……分かりま…した。」


「ほお。」


「この先の相手は分かりま…せ…んが。

 今、……どき。剣よりも……。」


 では、勝者の剣は、間違いはなくこれに渡す用の物を打たせておけばよかろう。


 臣下臣民の前で、‘これに’先に渡した短剣と揃いの長剣を下賜してやろう。


「陛下、これでお怒りを収めて……頂けますか?」


 なんだ!似合いもせぬ上目遣いで。

 本当に鈍くて馬鹿だ。


 お前を他の女に盗られた怒りは、生涯忘れる事など無いわ。

 ただ、こうして忘れている様にしておるのに。


 この鈍い馬鹿は、自分自身が他人に対して嫉妬心が薄い。

 であるから、私とても同じだと思っているのか。


「何の事であったかな?」


「ところで、サリュー。

 お前の若い頃の面差しのある、

 お前と違って面白味のある‘息子’は元気か?」


 ふん、青くなりおって。


 馬鹿か、お前は。


 私に煮えくりかえる思いをさせた、女の息子など。

 あの当時は八つ裂きにしてやりたいと思っておった。


 お前が、ピーピー騒ぐのが分かっておるから、

 お前の‘犬猫’の類いと同じようなものとして。


 無理矢理に落としどころをつけてやっているものを。


 誰が、好きこのんで‘手など’つけるか。

 まだ、それにさえ気がつかぬか。


 どこまでも鈍い。


 私とて、お前に意趣返しのひとつもしてやりたい。


 腹立たしい故、今夜はもう少し泣かせてやろうか、

 私の体の下で。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ