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閑話 【陛下にお土産】 パパと陛下…♡

 

「悪くはないな。」


 成り行きで、買ってしまったワイナリーのワインを陛下にお持ちしてみた。


 普段陛下が召し上がる逸品には足元にも及ばないのだろうけれど。


 ご機嫌良く召し上がっていただけたようでホッとしている。


 たった、3日程の日程でも違う空気を吸ってスッキリした。

 普段、軍の中で吸っている空気と違って清浄な美味しい空気で。


「サリュー、お前に初めて‘酒の味’を教えてやったのは私であろう?

 昔の話に、忘れていたか?」


 陛下が思わせ振りに舌先で、ご自分の唇を舐められる。

 陛下、比喩が下品ですよ。おやめ下さい。


「よーーく覚えております。」


 陛下のからかいに、顔が赤くなりそうだよ。いい年して、俺。


 *****************


「14か。まだ。仕方がないか?」


「??」


「子供過ぎるな。もう少し待ってやろう。」


 何をだろう。


「あの……」


「ふん?」


「子供に、お酒を飲ませるのですか?」


「このよう方法で飲ませるのは、帝国の法では禁じられてはおらぬが。

 お前は知らなかったか?」


 嘘だよ。そんな法律は聞いたことがない。

《帝国若年口移し飲酒法?》ないない!


 *******


 皇帝陛下の島に伴われると、数日はそこに滞在される事が多かった。


 まだ、俺が士官学校の幼年下部の生徒の頃で。


 週末や、長い休みの前に、生徒が自宅に戻る為に散り散りに校門を出ていく時に迎えの『灰色』の軍服の人間に伴なわれて。


 無理に逃げ出す理由もなかったので。


 慣れてくると、色々な所に連れて行って貰うのも面白かったし。


 もともと、親父が帰って来る家に帰りたくはなかったし。


 連れて行って貰った先には、(すで)に陛下がお越しになっていたり、後からいらしたり。


 どこも、帝国の地図に載っている‘あそこ’だろうと、思いあたる場所ではなくて。

 世間から隔絶されたような、自然の中で。

 それでいて、どの場所も怖いくらいに美しくて。


 自分の産まれ育った所と、同じ次元の世界ではなくて、異空間にうっかり紛れ混んだような錯覚を起こしそうな。


 別にジャングルと言う訳ではないので、人が住んでいても不思議がないのに誰もいない。


 森の中の大きなコテージだったり、湖のそばのしょうしゃな建物だったり。


 ちっとも不思議な景色ではないのに、不思議に思えるのは、滞在中誰も人が居ない事だけで。


 自然の物音と、陛下と自分の声と息使いしか音がなくて。


 皇帝陛下と自分と、時々影のように現れて消える世話役の『灰色』のお仕着せの人間。

 何人いるのかもわからなかった。


 時間まで止まっているような世界で。


 2回に1回は、最初に連れていかれた島に(いざな)われた。


 ほとんど、陛下は俺もそこに存在して居ないかの様に振る舞われているのに、時々急に思いついたように、俺をかまった。


 陛下が召し上がっていらっしゃった、たぶん上等なお酒なんだろう?

 俺には味などわからなかったけれど。

 そのお酒を口うつしで、俺に飲ませてからかわれた。


 今でも、酒に弱いのに、子供の俺には、刺激が強すぎて。

 すぐに、訳がわからなくなってしまって、寝てしまうばかりだった。


 はじめは、寝起きに、服を身に付けていないのが不思議だった。


『お酒を飲まされて、暑くて脱いだのかな?』


 いいえ、違います、脱がせた大人がいた訳で。笑


 陛下に、悪い事ばっかり教えていただいた訳ではなかった。


 猟銃の使い方を教えていただいて、鳥や獣を撃ちに行ったり。

 乗馬を教えていただいたのも陛下だった。

 弓を教えていただいた時は、体の密着から『あれれ?』ということも、あったりしたけれど。


 陛下には、後から自分の身を守る助けになる手段も随分教えていただいた。

 忘れていた訳では無かったのに、思い出した事も無かったなぁ。



 結局、陛下は、‘最後まで’はなさらなかった。


 最も、本当にギリギリ‘最後まで’ではなかっただけではあったような?


 ワインを3口で、俺が気を失わない程度に丁度良く?仕上がるのがわかってからは、‘最後まで’ではないけれど、なだけ?


 それでも、陛下は子供の俺を、気遣って下さったのかな?


 うーん?


 **************


「サリュー、物思いにふけるとは、何か思い出して懐かしくでもなったか?」


 ええーと、陛下。

 急にお近くに引っ張られてびっくりしました。


 陛下、俺は昔よりずっと成長しておりますから、陛下のお膝の上には乗れませんし。


 いやいや、長椅子に座られていた陛下に向かいあわせで、抱き抱えられる大きさだったのは、26年前ですから。


 陛下、潰しちゃいます、今は。

 やめましょうよ。


 はいはい、確かに俺が陛下がお掛けになっている足の間に体を寄せて、膝をつけばいいわけですか?

 間違っても、こんなことするために、ワインをお持ちしたのではないですからね。


 昔陛下のお口からいただいた時のワインよりも、これの方がさっぱり系ですね。


 この、ミラ様ワインって。





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