【僕のパパは皇帝陛下の愛人?】 side アロマ
僕は絶対、マコ姉のバカよりもパパに手間を掛けさせていないと思う。
学校だって近所の公立の小学生に入学して、毎日機嫌良く通ってたもん。
学校での、勉強時間は僕にとっては休み時間。
脳内は勝手に自分の自由時間でフル回転。
いつも、手元に端末広げられたらなあって思ってたけど。
人間関係はまあまあ良好。
僕の左手の事も、最初はびっくりされるけれど、慣れるとみんなに
「スゲー カッコいい」
言われてたよ。
すぐに個性の1つと思われたみたい。
他にも、足引きずってる子やら、目や耳に補助器具つけてる子もいたし、色素薄い子やら。
みんななんか、あったり、なかったりなかったりぐらいで。
僕が悪目立ちすることもなかった。
仲良くなった友達には、普段僕の家は父子家庭どころか、子どもと子ども2人だから[しし家庭]だって。
上手いこと言われて笑っちゃった。
みんなどこの家も、何かしらあるのが普通だから、他人の家の事をとやかく言わないのは暗黙のルール。
一見、欠けてるところがどこにもないような同級生が、すこぶる性格ひん曲がっていたりして。
外からってわからないよね、背負ってる‘闇’みたいのって。
そういう奴には、アンテナ立ててお近づきにならないようにするのも、みんなと一緒に身につけた感じ。
こういうの生きた学習っていうのかな?
「急ぐことはないけれど、学習面でアロにあったレベルのところに行くのもいんじゃないか?」
パパの薦めてくれた、帝国工科大学の大学院に週に何回か通わせてもらうように手続きをとってもらったんだけど。
そっちはなかなかの悪目立ちで、居心地の悪さと得られる知識を比較して、結局。
「パパごめんなさい。」
で、退学しちゃった。
もともと、ママが作っていた学習教材、マコ経由のママの遺産がスペシャルに凄い出来映えだったから。
それに沿って自習するのが、下手な大学なんか行くよりも無駄なく学習を積み重ねて行けていたし。
わかんないところがあった所は貯めておいて、パパが帰って来たら機関銃みたく質問してたんだけど。
パパが帰って来た時も、僕だけに時間を裂けないから、自然に仕事場に戻るパパにソフトを渡して質問内容を入れておくと?パパと僕の交換日記。
そしたらパパが、個人で高速の直結通信回路を僕とパパの間に作ってくれて。
あれってもんのすごい高いの知ってるから、小さな家一軒の値段どころではないんじゃないのかな?
少し青くなったけれど、パパの仕事の回路と絶対に離して別系列にしたかったんだって。
でも、普通佐官クラスになったら家庭と連絡とるのに通信回路使うのは認められている特権のはずなんだけど。
せっかくだからとフル回転で、パパにあれやこれや質問できて、急に目の前が全開になった。
パパが返信くれるのって、大概真夜中だから、少し心配になって聞いてみたんだ。
「パパ大丈夫?睡眠時間の負担になってるよね?ごめんなさい。」
そしたらパパが
「ちゃうちゃう!あれはパパの唯一の趣味。
娯楽のアロ通信。
けっこうパパ楽しみにしてるんだぜ。
最高の気分転換な。
パパは酒も飲まないし、本読むか、走るかとか、射撃訓練場に足運ぶくらいしか気晴らしなんかないじゃん。
射撃もう一生分打ったし飽きた。
面白くもない本めくってるより、お前のレポート添削の方がずーっと面白い。」
全部ほんとにしてはいないけれど、でもパパとの通信は今の僕の最高の宝物だから、有りがたく使わせてもらってます。
レポートだけでなく、時々学校の友達との事や、日頃のあれこれもちょこっと最後にいれておくと、けっこうパパが楽しそうに読んでくれているのも嬉しい。
この頃は、レポートにパパが手を入れてくれることよりも、自分で気がつけって事かな?
パパのくれる返信に関連図書やら、論文の一覧がけっこうな量記載されていて。
大体は、頑張れば手に入るものなので帝国図書館まで探しに行ったりあっちこっち探すのも楽しい。
原語で読めたらもっと最高、だから語学の勉強もって。
知りたい事が次々と神経シナプスが繋がるように広がって行くのが、ワクワクする。
びっくりしたのはパパに作ってもらった僕の使用金額無制限のカード。
渡してもらった時は、手が震えたよ。
「金で得られる知識ならいくらでも使いなよ。
書籍やら論文を手に入れるのは金がかかるだろう。
国内で手に入らないものについては、パパに一回言ってみな。
わりと持ってるか頭に入ってるから。
軍事関係はNGな。」
僕がパパからカードを渡してもらったのを、マコ姉が見つけてまたひと騒動で。
結局マコにもパパがカードを渡していたけれど、ムフフ 僕のカードとマコのカード色が違うんだもんね。
僕のは無制限。マコのは制限付き。
僕は呑気に喜んでたんだけど、マコが
「パパ、お金大丈夫?どこから出してるの?いくら将監の俸給でも、そんなにあるわけないよね?パパ、公金横領とかしてないよね。」
「ちょっと座りなマコ。アロも。
お前達はバカじゃないから、口は固いよな?」
これって、なんかヤバい話かな?ってちょっとドキドキ
横で執事のスールさんも笑いを噛み殺した顔して一緒に聞いていた。
スールさんにはじめて会った頃は、表情がなくて僕は感情が読めなかった。
でも、この頃はだいたいわかるようになったよ。
「パパさあ、こっちで働く前にもう一生分働いてんの。
後ろ暗い金なんて一切ないから青くならなくていいって。
ユニ(大学)通いながらも、隙間でバンバン、指名依頼で稼いでたし。
ユニはトップの成績押さえとけば、一切学費がかかんないから、在学中いくつ学位とろうが、ドクターとろうが入れ食い状態だし。」
「なあ、パパの一攫千金って、何だと思う?わかるか?」
「パパ、宇宙海賊でもやってた?」マコ
「情報操作とかハッキング? それとも株?」って僕
「残念不正解。特許!でーす。」
「パパが休みの度に、何だか危ない仕事に出掛けている様子に気がついた指導教授がいてさ。
勝手に戦争孤児の苦学生が金に困ってるって同情してくれたみたいで。」
「『危ないアルバイトをする時間があったら、特許でもとって金銭に煩わされずに勉強に励みなさい。
学生は学問することこそ本分と不心得たまえ。』って
その教授、あとから学部長なった人で、ずいぶん俺に目をかけてくれていたんだけど。
結局学問することが本分の道では、なくなってしまって申し訳なかった。」
「少し長い休みの度にオレが消炎臭い匂いさせて帰って来るから。
教授が思ってた、《危ない》は鉱山にレアメタルでも掘りに行ってると勘違いしていたみたいで、笑うのこらえるの必死よこっち。」
「まさか、いえいえ高額指名でトラブルシューターやってます。
実は特殊部隊上がりですって言えないから、必死の猫被りしてたわけ。」
パパの涙ぐまし努力ってそこだったんだ?微妙?
「結局、学内過去最高記録の数の特許とったから。
一生分の稼ぎってこれね。
ユニ(大学)の学費免除の学生は、寄付として恩返しを生きてる間し続けるのが、規則ではないけど慣例なんだよ。
成功したやつはそれなりに、そうでないやつはまたそれなりに。」
マコが、黙って聞いてればいいのにパパの話の腰を折る。マコのバカ!
「じゃ、結局ユニの方が後から大儲けね。
損して得取れ?ちょっと違うかな。
上手いシステムねえ。考えた人凄いね。」
「それが、そうでもないないんだよな。
統計とっても大体はとんとんだって。
トップランクの卒業生って、不思議と卒業後の10年死亡率が恐ろしく高いんだと。
なんだかなあ。
お前らの母親もそのトップ卒業生。
長生きする生き方ではなかっただろ。」
「だからさ、オレも在学中もらった恩返しに、特許の権利半分を大学に置いてきた。
先が一番わかんない商売だからさ。先払い?
全部キッパリ置いて来るつもりでいたんだけどさ。
回りの奴らにそれをされると、後の卒業生に負担な慣例になるって言われたからやめた。
お陰で、今でもアロマの本代やら、マコの服代位、痛くも痒くもないわけさ。」
「君たちのパパは、実は大泥棒でしたっことはないですから安心して下さい。
でもこれ外貨だてだから、一気に取り替えると人目に付くから。
お口チャックしとけよ。
目立っていいことないのわかってるだろ。」
パパの話が一段落したところで、僕が一番不思議だった事を聞いてみた。
「パパがたくさんの特許を、勉強や仕事の合間にとれたのってどうして?
それって技術的に行き詰まって技術にならなかった事をパパが新たに発明したってこと?天才過ぎない?」
「まさか!新しい技術発明なら、特許でなくて発明として論文発表だろう?
大学施設ってそのために存在するんだからもともと。
金儲けをする目的の空間だったら大学でなくて商館だろうよ。
銀河商館 ちょっとどっかにありそうだなあ?」
「?じゃどうして?」
「普通の学者とパパの徹底的な違いって何だと思う?」
「うんと違うのはわかるけど、上手く言えない。」
「実際にいろんなところに自分の足で行って、ここにこれさえあればって無念に思う人間を見る。
そういう人間が生きているところに行くのがトラブルシューターの仕事だから。
そこには、机上で学問しながら、たまにフィールドワークて名前の遠足に出かける学者には、考えもつかない事がたくさん転がっている。」
「1つ1つの足りてない必要なものは、発明がどうのってほどの技術が必要なくても出来る事ばっかりで。
例えるなら、まだ文明が後進の地域に井戸を掘ることが、こっちの力では簡単でもあっちには届いてないってことがあるだろう。
でも、後進の文化と折り合った道具が必要なのは、こっちの魔法の国ではわからない事って多いんだわ。
それが、パパの目に焼き付いて残っていたことが、申請した特許の数だけあったってことかなあ。」
「1つ間違えて、軍事運用ができるものは作らないように、極力注意を払ったから。
途中で自分でポシャらしたやつもけっこうな数あったなあ。
世界のバランスに手をつけるとか、何かめんどくさそうだったから。
その頃は、軍服忘れて生きる事しか考えてなかったから。」
もっともっとパパの話を聞いていたかったのに、またすぐパパは、呼ばれて仕事に出掛けてしまったけれど。
僕がカードを貰ったその日は、しばらくパパ分を補充できてほっこりしました。
やっぱりパパが大好きです。
お読みいただいてありがとうございます。
目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?
今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております