【この前‘婿’になって、今度は‘舅’ですか?】 side サリュー
マコが彼氏を連れてきた。
うっそ?この感じの男とは思わなかった。
マコならもっと野性味のある奴を連れて来ると思ったよ。
これって、王子様系?髪は金髪の王子様っていうより少し暗いかなぁ。
軍人だから鍛えてはあるけれど?
いやいや、うちの娘ってただの面食いですか?
ちょっとガッカリっすよ。
話をすると、えらく人間としてバランスのいい男だった。
俺はまだ絶好調ではないから、‘色’は見える。
うん、さわやかの晴天の色、全う。
文句つけるところもないけれどさ、なんかかえって不自然じゃないか?
とにかく、何だかムカつく。
「お顔を、緩めてはいかがですの?
まるで、どちらかの宰相のようですわよ。」
今日はなんと!ミラ様もいらしている。
初っぱなからパンチが効いているね。
集団面接をされているみたいで、ちょっとビステル准将が気の毒ではあるけれど。
「お初にお目にかかります。ターラン総括司令閣下。
並びにマケル宰相ご令嬢ミラージェン嬢。
自分はレヴィオン·ビステルと申します。
帝国より准将の位を頂戴して、日々の研鑽に励んでおります。」
しばし沈黙。
ミラ様と顔を見合わせた途端に、2人で爆笑。
「君軍服で来たんだ?
俺はそこにいるマコーレットの父親をやらせて貰っています。
笑ぷぷぷぷ」
ミラ様に目を向けると
「私は、戸籍上マコーレットの父親の連れ合い。
マコの女友達のようなものとお心得下さい。」
ミラ様は笑い涙拭きながら話してるよ。
「ひどい!パパ。
何が可笑しいのよ?
レヴィが緊張して来てくれているのに。
ひとつも笑われるような事はしていないじゃない。」
レヴィ君ですか?なるほど。
「だって、設定が色々と可笑しくってさぁ。」
「すいません、スールさん、お茶をお願いします。
ビステルさん、とりあえずどうぞ座ってよ。
仕事先から直接に来てくれたんだ?
疲れてるいのに大変だったね。」
お茶をメイドさんと運んでくれたスールさんに声をかける。
「スールさんもここに居てよ。」
レヴィ君ですか?の方に向けて
「こちらは、オーラン·スールさん。
元は俺の若い頃の上官だった方で。
今はこの家のスペシャルサポーター、最高の応援団長。
俺よりもずっと長い時間をマコに関わって面倒を見てくれた人だから。」
「司令、私はあくまでも使用人の立場でございます。
こちらにご臨席させていただきますのは、
いかがなものかと存じますが。」
「これでいつもの‘家庭内幕僚会議’のメンバーが揃ってちょうどいいんじゃない。」
さて、マコ彼氏君。
「あのさ、俺はマコの人をみる目は自分よりも信じてんだよ。
親バカが全開で恥ずかしいけれど。
だから君がさ、八百屋さんでも魚屋さんでも、
場合によってはマコが養いたいって連れて来た無職君でも、
一緒になりたいって本気で言っているなら全然オッケーなんだよ。
ただし、娘にはずっとやめてくれって言って来たことがあんだよ。
人の旦那に手は出すな!と
軍服を着てるいる男はやめてくれって。」
「その若さで、君の階級って、とっても優秀なんでしょう?
その君に、娘と一緒になりたいなら、
軍服を脱いでくれる?って言ったら意地悪じいさんじゃん?俺」
「ひどい、何それパパ!」
「マコちゃん、お黙りなさい。
お父様のお話に口を挟まずお聞きなさい。」
ありがと。ミラ様、ナイスフォローです。
「どっかのマフィアの親分ではないからさ、
脅し文句で言ってるんじゃないけど。
俺、目茶苦茶敵多がいよ?
帝国一番の嫌われ者の娘と一緒にいて、
君に何にも良いことはないんじゃないか。
せっかくの順調なキャリアが勿体ないってば。
この後仕事で会っても知らんぷりでこっちも忘れてるから、
思い直すなら今だって。」
「司令、色々違っておりましてよ?」
「どこらへんが?」
「まずは、帝国1の嫌われ者の娘はこの私でございましょう?
マコは1番ではありませんことよ。」
あれ、そこですか?
出ましたマケル宰相と同じ右唇が上がる笑い方。
ちょっと怖いですよ。ミラ様。
「そうよパパ。」
黙ってなさいって言われたばっかりでしょうマコ。
言ってよ言ってやってよ。ミラ様マコに!
ん? マコにミラ様、今アイコンタクト合わせたでしょう?
何それ?
「パパ、八百屋さんだっ‘たら’、軍服じゃなけ‘れば’って
おかしいでしょう?
パパは昔、
『傭兵所では‘たら’‘れば’言ってるような、うざいやつは埋められる』って言っていたよね?』
レヴィは、私に会う前から軍服を着ていたんだもん、
しょうがないじゃないよ?」
「マコ、パパは『埋められる!』なんか言ってないですから。
『ハブられる!』って言っただけですけど。」
「レヴィ、パパってそんなに嫌われているの?」
「とんでもないことです。自分の知る限り この帝国の軍に携わる者でターラン司令閣下の実績を知る全ての者が、
尊敬と羨望の念を持っております。
将監に限らず、下士官まで司令閣下のお人柄と実績を敬愛してやみません。」
「うわー、勘弁して。そういうのはいいから。」
「昔話をするのは、年寄りの常と思っておりましたわ。
もうろくでもなさいましたか?
いったいいつのお話ですか?
あなたが、こちらの帝国にいらっしゃった頃の事など。
まだ産まれてもいないものは存じませんでしょう。」
「へえ?准将って今いくつだよ?」
「マコーレット嬢の8才年上になります。今年29歳になります。」
「ほら、産まれてなくないじゃん。計算が合わないし。」
「司令閣下、口を挟ませていただいてよろしいでしょうか?」
わーいスールさん、加勢してくれるの。ありがとう。
「ターラン司令閣下は少し思い違いをしていらっしゃるように存じますが。」
あれー?俺の味方ではないんですか?スールさん?
「外の傭兵部隊から帝国軍に入られて、
才能を妬まれご苦労なさった事はお察しいたします。
ですが、私が以前在籍しておりました所では、
閣下に敵意を向ける者はおりませんでした。
閣下に敵意を向けるとしましたら、
極一部の違う色を入れて身につけていた者共だけと拝察いたしておりました。」
知ってる。赤い差し色の軍服の部下達ね。ドゥーダン部隊。
うわー、ミラ様、スールさんとも、
今、目配せをしたよね?したよ。
何々、マコってばミラ様、スールさんを抱き込んで、
連合軍を作ってあったわけ?
「それで?陛下は何か仰せでいらっしゃいますの?」
「いや、お前の娘の事など興味はないってさ。」
「まあまあ、それはなにより。
興味など持たれた娘が、国のお役に立ちます‘名誉’ほど、
手に余る事もございませんでしょう。」
「それでは、これでマコちゃんの縁組みに不足はございませんですわね?」
「ちょっとちょっと待って。
レヴィ君さあ、君の親御さんにはマコの事は話してあるの?
そちらこそ、ご異存があっても不思議がないんだけれどさ。
自慢の息子さんなんでしょうが?」
「両親には、生涯を共にしたい女性に出会えたこと。
お相手が、自分の足で立つ力のある尊敬できる女性であると伝えております。
両親は共に自分の意志で生きて来た人間であります。
1人息子ではありますが、
『自分の道を見つけて生きよ!』と、
送り出してもらって今日の自分があります。
晴れて、両親にマコさんを引き合わせて、紹介をすることができましたら、
どれほど喜びますか想像もつきません。」
これ以上余計なこと言うことはないか。
嫌われじいさんは、そろそろ引っ込めるか?
「分かった。じゃ、まあ、上手いことやってみてよ。」
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後日、日程を擦り合わせて、
ビステル家の御両親と家で顔会わせをして、
その後にマコとビステル准将の婚約を公にする事になりそう。
また、びっくり広報新聞に載るのかな?
ビステル家の御両親にわざわざ足を運んでいただくのは、
申し訳ない。
こっちから出向く余裕は今ないしなぁ。
仔細はスールさんにお願いしておいたら、
間違いがなくって心強い。
マコ、スールさんから、
この家の中にミラ様の部屋を作っておくべきではないかと提案される。
いくら、政略結婚でも、それなりの整え方がないと、
外に対して政略にも何にもなりゃしないって。
それも、特に異論がないので。
ご本人にも相談してよろしいように取り計らって下さいと、
スールさんにお願いした。
《ミラ様ルーム作り》にやけにマコが張り切っていたようだけれど、
大丈夫だろうか?暴走が心配だよ。
家にいるうちにまた髪を切っておこうかと、
マコが前に連れてきてくれた美容師さんの店に行ってみようかと尋ねたら。
スールさんにとんでもない!とダメ出しをされた。
鏡やら刃物があるところに、
しかも遺伝子解析に使える髪の毛を残して来たらダメなんだってさ。
お店で戦闘になっても、最近は俺、だいぶ体幹が戻って来たから、
負ける気はしないけれど。
お店を巻き込んだりしたら、
大迷惑をかけちゃうからしょうがないか。
いちいち、美容師さんを煩わせて呼び出すのも落ち着かない。
いっそ伸ばしっぱなしで結んじゃおうか?
だらしないって各方面に叱られそうだ。
でも、髪を切ってくれたお姉さん風のお兄さんは、
マコの友人だけあって、気持ちのいい空気を纏っていてとても楽。
切って貰った後は、各方面(ぷぷ笑)に評判が良いしね。
マコが、またブーブー言って。
せっかくレヴィ君が、面接対応に備えて緊張してきたのに、
パパは何にもそういうの聞きもしないってブーブーブー。
「どういうのを聞いたら良かったんだよ?」
「それは、うちの娘のどこが好きになったんですか?とか
一生大事にするつもりか?とかさ?」
吹き出した。うちの娘ってわりと頭にお花が咲いているタイプだったんだ?
馬鹿は知っていたけれど。
人を嫌いになるのも、好きになるのも理由なんてあるかよ?
と、俺は思うけど。
言ったらまた馬鹿マコがぎゃーぎゃーと言うからそれは言わないけれど。
好きになるのが、善人だから好きだの、
悪人だから嫌いとかは理由になんないだろうよ。
どんな悪人にだって心を引かれる事もあれば、
どんな善人に好意を向けられたって、
好きではないものには答えられないし。
それに、一生大事に?馬鹿だわ。
物やら金よりも‘人の気持ち’なんか、
一番保険のかけようがないだろうが。
マコさん、お前達だって、今日がずっと続く保証なんてないんだよ。
それに、‘絶対’だの‘一生’だのって、重いい言葉で相手を縛ったら、
首がしまるのがいいところ。
相手の気持ちをはかるより、
自分の思いに嘘をつかないようにするのが精一杯って、俺は思うよ。
娘に聞かせる話でもないけどさ。




