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【楽しい『紺』カフェテリアでドッキリかよ?何で新聞発表で自分の結婚知る?】 side サリュー

 最近週一くらいの頻度で、『紺』軍服のカフェテリアの休憩室や、

 尉·佐官以上の談話室、御食事所に出没しています。


 クロさんと、この頃お付き合い頂いているミルゼス少将と、御一緒する時。

 上級将監ルームで。


 クロさんとミルゼス少将とゆっくり出来る時は滅多にないけど、至福の時。


 命の洗濯、気分爽快。

 明日も頑張ろうってなるわけさ。


 もう、俺なんか疲れちゃって。

 開き直ってグレー軍服の監視に強気で対抗する事にした。


 子供を質に取られる心配が少なくなってきたせいか、

 人生の最悪って自分の命とられるだけっしょ。

 だったら、覚悟は30年選手のベテランだよ。


 今度ネチネチと言われたら


『どうぞ軍法会議にでもかけて下さいね。』


 という覚悟で、飯を食いに来ています。


 考えたらちょっと情けない。

 うちの幕僚も、時々誘って出没しています。

 なるべくこっちとケンカをしないような顔を選んでいる。


 この先は『紺』軍服の若手に、

 機会があるごとに色々と‘見せてやって’というのは大事だと思うんだよね。


 って俺、じいさんなったなあ。

 

 軍略、探索、交渉、道具の使い方。

 在職15年、道具もいっぱい作ったしね。


 知ってるのと知らないのとは、知らない麒麟や像を絵に書けないのと同じ。

 

 すぐに出来なくても、食べた事がある料理は、

 何時(いつ)かは自分で料理ができるようになる。

 

 食べた事がない何時かは、遠い発明になっちゃうから、

 とじいさんは思うわけ。


『紺』軍服のたまり場のカフェテリアの方に行くと、

 秘書官『グレーさん』の他に、影のように、うちの幕僚の下と関係ないグレー軍服が忍びみたいにやって来る。


 周りに申し訳ないけれど、もう俺「監視付きで、すいません。」と言ってギャグにまで昇華をしたいと奮闘中。


 特に、誰かに何かを質問されて、差し障りのないことを答えているだけで、

 途中に邪魔しにグレー軍服が入って来ることがあって。


 俺、そんなにバカだと思われてんのかよ。

 言っていいこと悪いことは分かっている。


 今度ネチネチとやられたら、決め台詞の3つ4つ言ってやると構えていたら

 気迫のオーラが出ていたのか、

 あんまり側に寄ってこなくなったから、少し楽。


 いろいろ考えてみて、俺が『紺』軍服に近づく事に警戒をされるのって、


 俺がまだ産まれる前の前皇帝からメルキオーア皇帝陛下への政権移行時の内乱

 《ドゥーダン提督》対《ほんの1部の前皇帝側についた『紺』正規軍》が争ったせいか?


 今現在の彼ら『紺』軍服側、帝国正規軍はあくまでも皇帝陛下の軍であり、

 この国に忠誠を誓っているわけでしょうに。


 忠誠心比べ争いなら、かえって『紺』軍服よりも俺の方が足りないんじゃないの。


 俺は、士官学校の卒業式みたいのをやってる訳じゃないから。

 陛下には忠誠誓ってるけど、帝国に忠誠を誓った事はないし。


 うわ、これ!親父が生きていたら、

 そこへなおれってバッサリ切られそう。


 陛下の軍は『紺』軍服の彼らであるし、

 彼らを鍛えることは陛下の力を増強する事にもなると思うんだよ俺は。


 一回誰かに聞いてみたい気もするけれど、誰に聞くってさ。


 俺は本当に、軍服着ていない時に、

 陛下の御前で仕事の話を口にしたことはないんだよ。


 剣豪軍服と還俗巫女の息子の潔癖症の尻尾がほんのすこーし。

 残りかすプライド。


 もちろん陛下の晩酌にお付き合いして、お側近くに控えている時でも。


 お酌はしないの俺。

 

 一回したら、お前はしなくていいって怒られた。

 

 手つきが危ないと思われたのかな。

 すいません、育ちが悪いもんで。


 グレー軍服を着ている陛下の戦力は、

 ドゥーダン提督の戦力が大部分な訳で。


 《火のないところに火をつける》つもりは毛頭ないけれど。

 もし今度またドゥーダン提督と『紺』軍服の正規軍が戦う羽目にでもなった時は、

 違う意味合いで戦う事にもならないこともないこともないような?むにゃむにゃ。


 はい、俺ドゥーダン提督が嫌いです。


 自分が産まれる前の、色んな事は知らない。


 ‘若造じいさん’ですから、滅多な事も言えないけれどさ。


 次代の皇太子が現れて、メルキオーア皇帝陛下と対立するって事が絶対にないこともないけれど。

 人間の歴史みれば。


 でも、今現在は次代の皇太子が表に現れていないしさ。


 皇太子がいないのかもしれないし、隠しているのかも知れないし。


 そんなの傭兵所からお買い上げの俺が、持ってるような情報ではないから。


 だったら尚更、

 今のうちに『紺』軍服側をメルキオーア皇帝以外に目を移さないよう強固にしていく方が正解に思えるんだけど。


 絶対って、ないからいつでも保険は掛けといた方がいいけどさ。


 何てね?御食事所ですから、そんな立派な話はしていないです。


 今日もクロさんのところの幕僚のお兄ちゃん達やら、

 その友達らしい兄ちゃん達やらとバカ話で気分転換。


 兄ちゃんの誰かが、俺のコレクションの博士号のうちで、

 どれが一番役に立ったかって、聞くからさ。

 ああ、こんな失礼な言い方で聞かれてないよ。笑


「一番役に立ったのは調理師免許かなぁ?」


「ふざけてないってホントにホント。

 もともと、科学系、(ばけ)学、数学、物理 何のドクターとってても、

 実践で仕事をするのにはあんまり関係ないわけよ。

 大学で教鞭をとろうと思ったら、箔が付くから有効だけどね。」


「ほら、例えばレーサーが

『俺、教習所で免許とる時満点でした。』

『無事故でプラチナ免許です。』

 言っても爆笑でしょうが。

 それよりは、どこのレースをとったとか、

 何秒ぶっちぎりの実績ありますとか、

 そっちの方がスポンサーに売り込みをするのには有効でしょう?

 要は、技術売って食っていく気ならそっちな。」


「俺、大学ユニに同級生の彼女が出来たときに、

 一緒に教鞭とっての人生も、有りかも。

 銃なんて見たこともありません!ってしらっと。

 ちょっと夢見た時に、

 ドクターコレクションをしちゃった恥ずかしい黒歴史?」


「調理師免許は、ホントに必要で慌ててとったんだ。

 情報を巷で拾う時に、酒飲むところが一番話が集まるから。

 表で給仕すると、顔覚えられたら目立つし。

 下手に絡まれると俺は瞬殺が出来ちゃうから、

 情報の収集終わっちゃうからさ。」


(俺、年が若いから‘売り’と間違えられると特に絡まれたんだ。)


「一番いいのは、厨房入れて貰う事なんだよね。

 厨房で毒なんて盛ってないよ。

 俺、アサシン系はやっていないから。

 それに、やっぱり料理ができると女の子に結構もてるからさ。

 とっても便利。調理師免許は。」


「あれれ、そこのじっとりこっちみてる君、潜入捜査向きでしょう?

 うちに来てみる?」


 うちの幕僚の狐君と、おんなじ色‘例の魂?笑’してるの、見ーつけた。


 グレー軍服さん、急に寄ってきて俺に耳打ち。

 なんだよ、やるのかよ?と思ったら

 この僕ちゃん、名門貴族の坊っちゃんか?

 珍しいねこんなところに。


「ごめんね。坊っちゃんにさせる仕事勧誘じゃなかったね。

 すいませんでした。忘れて下さい。」


「医学実習生やってるうちの娘が言うにはさあ、

 パパに習った物理数学は何の役にも立たなかったって。


 パパに習って一番役に立ったのは、魚料理の包丁さばきだけだってさ。

 うちの娘、魚下ろして刺身を作るの上手いのよ。

 メスで人間さばくのに丁度よかったみたい。」


 ちょっと話盛っちゃってバカ受けしたけれど、

 まさかそこに娘の彼氏が混じってて、

 後からマコに多額の名誉毀損の慰謝料を請求されるとは思いませんでした、ちっ。


「いい気なもんだな?」


 後ろから、お声がかかって、

 久しぶりの懐かしいそういうのに喜んじゃった。


 こっちの帝国に来たときは、

 息をしてるだけでこれを言われてきたもんな。


 顔をみたら、ホントに懐かしい(嘘だよ)サブル家の、

 親父の実家の腹違いの伯父。


 まだ生きてたのか?びっくり。


 今、あの家はどうなっているんだか。興味ないけど。


 何か言いたそうにしてたけれど、

 こっちが絶対無視のオーラを出していたら、スゴスゴ退散をしてくれた。

 やれやれよかった。


 同期会でもあったのかね? もうとっくに退官してる年だろうに。



 ***************


 クロさんのところの若手が、息を切らしてバタバタ。


 何かあったのかな?


 軍の新聞の広報握りしめてる。


「おめでとうございます。ターラン総括司令閣下!」


「?」


 何もおめでたい事は最近ないし。


 この軍の新聞って、公開して良い情報程度を記事にしたり、

 軍の上層関係者の冠婚葬祭とか。


 最近はそんなに戦死広報がないからさ、

 主に退役軍人のお偉いさんだった方々の訃報とか。


 後は、小さく欄外に結婚報告も載ったり。


 結婚が小さいのは、別れた時は載せないからかね。笑


 クローレス中将閣下とハイシアさんのご結婚も、

 前に大袈裟でなくて載っていたよ。


 なのに、何故に?


『サリュー·ターラン総括司令とソロ·マケル宰相閣下のご令嬢ミラージェン·マケル嬢、本日ご結婚』


 1面で、活字デカ!


 俺、流石にフリーズ。やられたのかこれ?


「おい?どうなってる?マケル宰相のお嬢様って?」


 クロさん、俺が聞きたいよ。


「会った事もないんだけど?そのお嬢様。」


 辺りがシーンとしちゃうほど、俺テンパってみえましたかね?


 カフェテリア中が変な空気に黙りこくって、俺の様子をみているよ。


 頭が、沸騰した。


 おかしいだろよ。


 俺、頑張って働いてきたよね。


 なのにまだこの帝国での人権もないんだ。


 牛、馬のブリーダーだってもう少し気を使うだろう。


 俺、その新聞引ったくって走り出すところを、

 ググーっと、ミルゼス少将に上着の裾を引っ張られた。


「とにかく、1度座ったらいい。」


 給仕に冷たい水を持って来るように頼んでくれて。


「まず、相手の話を聞くことだ。

 どんなに理不尽に見えるとも、

 存外思いもよらずに何かが隠れている事もあるものだ。

 抵抗に暴れるのは、それからでも遅くはない。」


 3分瞑想。


「悪いクロさん、ミルゼス少将、申し訳ありません。」


「おう!転ぶなよ!」


 無礼打ち上等だよ!と、御前に向かっている途中、

 スールさんに家でされた話を思い出していた。


 スールさんの昔仲間の、陛下のお側近くの『グレー』軍団が言うことには、

 俺がかわいく陛下に甘えて見せないのが全ての揉め事の原因なんだとさ。


『はああ?』何だそれ?


 俺は、陛下にとってのそっちの枠ではないでしょうよ?


 第一、そんな技、どっから捻り出すってよ?


 どっかの後宮を引っ掻き回して登り詰めたらしい、

 妹のアンムートにでもご教授願っておけば良かった?

 けれども妹とは絶縁してから20年。


 そんなもん知るかよ!


 お目通り頂いた陛下は、いつもの薄い笑いを浮かべるでもなく、

 苛立っていらっしゃる様子もなく、ただ無表情で


「マケル宰相と話せ。」


 とだけ一言。


 取り憑く島もなく、退席をなさった。


 拍子抜けして、少し息が整った。




 ****************




 マケル宰相閣下には、思いの外あっさりとお目にかかる事が出来た。


 何から抗議したものか。


 こっちの人生のカウントダウンを考えたら、余計な荷物は背負えない。


 場合に依っては手の内をさらしてしまおうか。


 自分には『駒として使う余剰価値、時間』は、無いのだと。


 どうせ、子供が小さい頃に、ダウンしてひっくり返った時に察しはつけられているかもしれない。


 この帝国でマケル宰相が知らない事などないのだろうから。


 それなら、マケル宰相のお嬢様がすぐに未亡人になられる事が、

 何かの使い勝手に有効だと言うことだろうか?


 だとしても、こっちは‘刺し違え’たところで、失うものはないわけだ。


 執務室でのマケル宰相は、約束事を遂行するように淡々と。


「婿殿に、見せたいものがある。

 ついて来るがいい。」


 何の冗談だよ?『婿殿?』気持ち悪。


 結構な時間をかけて連れられて行かれた先に、

 山々に囲まれた大規模な研究施設があった。


 ここどこだ? 


 ‘俺のおもちゃ’を使って、

 帝国に思い付く限りの防衛フィルターをかけた時に、

 主要の軍の施設は全て頭に入っている。


 こんなところ、知らないぞ。


 ここまでの道中、帝国外に出た様子もないし。


「ここは、マケル家で所有の場所だ。

 個人のものであり、帝国の所有権とは異なるものとしておる。」


「ちょっと待って下さい。

 こちらに自分が足を踏み入れる事で、

 望まない既成事実が出来ることは了承はできません。」


「何をそう怯えるやら?とって喰いはせぬ。」


 口もとを微かに歪めて、宰相が先に歩き出す。


 いつの間にか、

 ここまでついて来た護衛も小型ジェット機も居なくなっていた。


 ここから立ち去る手段も無いってことだよな。


 あれれ、外堀を埋められちゃったか?




 ****************




 これまで、相当エグいモノを人より多く見てきた自信はある。


 人間の法則で、権力と財力の極みを手に入れると大概人間は3種類の道を辿るようだ。


******


 まず最初に、持ちすぎた人生をもったいなくて死にたくなくなる。

 お決まりの不老不死の研究に手をつけ出す。

 すぐに人間が手をつけるラインを逸脱する。


***


 次は退屈過ぎて、娯楽が手詰まりになると、

生きた人間で遊びだす。

 金銭、誘拐で手に入る生き物などすぐに尽きる。

 だったら作ろうと、また領域を越える。


***


 鬱陶しいが、あまり実害がないのは宗教での精神の安定を求める事。

 これも案外エグい落とし穴がある。

 神に近づく為にと、また人間であるのを忘れて、

本人以外は狂人の研究にしか見えないものに神秘を重ねて崩壊の道をたどる。


 これらの末期症状には、必ず手のつけられないトラブルが発生して、

命知らずの‘トラブルシューター’にお呼びがかかるわけ。


 で、飽きるほどの、『子供には見せたくないもの』と遭遇してきた。


 だから、このマケル家研究施設を見たところで、

 叫び声をあげたり、顔色が変わるような‘たま’じゃないもんね。

 俺って。


 《マケル家の研究施設》って、人間製作工場って事か?


 ここにずらっと並んだ、人工子宮ポットで育成されている数々の生命体は、

 ちゃんと普通の人間で。


 育成ポットの羊水の中で幼い者はプカプカ浮いたり、

 少し大きくなると水中で縦に静かに眠っているように。


 余りに平然と並んだ様子に、明るい陳列ケースを目にするような、

 拍子抜けする程に無気味には思えない。


 どこかの変態が作った、羽があったり、尻尾があるようなそれじゃない。


 ほとんど、並んでいるのは年齢に違いがあるだけの普通の人間の男。


 容姿、体格に一体一体の個性がある。


 同じ単体を基調にした、同一形のクローンではなさそうだ。


 遺伝子操作で変化させた生き物ではなく、

 不妊の事情がある家族が、

 精子と卵子から赤ん坊を育てる人工子宮を成人体になるまで継続させて、

 ポットで養育しているような形だろうか?


 ただ、今の弱ってる俺の時に見えるはずの、‘魂’がない。


「秘書官が気に入らないのなら、いくらでもすげ替えるまでの事。」


 あれれ、今のマケル宰相に言われたのって、何の事だ?


 うちにダークグリーン『グレー』軍服着て、“秘書官”で来る人が頻繁に変わるのって?


 俺のせい?次々ここで作ってる人?ってこと?


 まさか、居なくなったグレーさん、処分とかされてないよね?


 それをやったら、俺いたたまれない。

 俺が虐めっ子かよ?


 俺がいじめられていたんじゃないのか?ネチネチグレーに?


 そこまではまだ、マケル宰相に可愛げないと思われてるだろうねくらい、

 場慣れ上等で足を踏ん張って立っていられた。


 さらに、奥で見せられたものには。


 ホントにびっくりすると人間って口が開くんだと、頭のどこかで感心していた。


 そこの人口子宮の成長カプセルポットに入ってプカプカ浮いているのは、『俺?』だったんだ。


 2体?


 年齢が、10歳くらいと5歳くらいだろうか?俺に似ている?

 いやいやこれ、俺?


「必要なのは臓器だけであるのでな。

 陛下は婿殿が亡きものとなる事を望まれぬ。

 被爆した臓器の代わりとするのには、まだ時間を要する。」


 俺の二次被爆の臓器移植用の、脳みそ抜いた俺?

 頼んでないって。

 生き地獄かよ。


 急激に吐き気が込み上げて来た。


 軍服のポケットにアンプルと注射器が入っているけど、

 ヤバイかな、これ、間に合わない。


 暗転して、意識が落ちる途中に思った。


 どこの安い映画だよ、びっくりして気を失うって。

目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?ドキドキ

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

(〃⌒ー⌒〃)ゞ

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