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【うちのパパは入院中】 side サリュー

 

 病院だよな?ここたぶん。

 頭がガンガンする。ダルい。

 どうなって、こうなった?


 そうだ!マケル宰相だ。

 あれを見たんだ。

 この帝国の空気の色が変わって見えそう。

 俺が思ってたのと、この帝国が根底から違うような?

 どうするよ? このまま人体実験でもされんのか。

 殺るんなら意識を残さないで、スッパリやってくんないかな?


 巻き込まれて欲しくない人間の顔を思い浮かべる。公私共々。

 気分は泣けそう。

 でも、体カラカラに乾いて涙も出ない。


 ドアが開いて、医者が何人かバタバタ入って来る。

 研究者かなぁ?

 あっちこっち触られているけれど、指一本も自分で動かせない。

 痛覚も麻痺してるのかな?

 目を開けてるの、しんどい。

 耳は聞こえてる。

 でも、言葉の意味が頭を素通りして残らない。


「ターラン司令、聞こえますか?聞こえたら返事をして下さい。」


 声なんて出るかよ。

 口を動かしたけれど、声なんて出ないけど。


 もう一度ブラックアウト。


 *************


 目を開けたら、男の看護師?上下に別れたセパレーツの白衣2人。


 スポンジで口を湿らせられたみたい。


 ベッドの上で死に水とられるなんて、

 そんな立派な恥ずかしい死に方したら、

 傭兵部隊の仲間に腹を抱えて笑われる。


 医者だか研究者だよな。こんなにワラワラたくさんって。


「声が出ますか?」


「わからない。」


 かすれて自分の声じゃないみたいだ。

 でも、言葉はでた。

 麻痺はしてないのか。


「ターラン司令、お名前と年齢、階級をおっしゃって下さい。」


 アホかよ、ターランって言ってるじゃん。

 何だか面白くない。


「サリュー·ターラン 18。」


「特殊工作傭兵部隊、認識No.41880618」


 わーい、慌ててる。

 だいぶサバをよんでやった。


 でも、本日終了。またブラックアウト。


 **************


 今日は視界がはっきりしているのかな?


 体中が、痛い。


 バタバタ白衣軍団、いったい何だよ。


「ここどこだよ?」


 声は出てるね。


「感じますか?」


 ボールペンみたいので、あっちこっち突っつきやがって変態研究かよ。

 人の話に答えろよ。


「ここどこだってば?あんた達は誰?」


「帝国空軍第3病院、特別貴賓病棟になります。

 ただいま、

 こちらの病棟の設備が最新機器を増設を致しておりましたので、

 閣下をお世話させていただく事になりました。」


 あれ、敬礼されちゃったよ。


「自分は医術大尉ヒルメン·シルトと申します。

 血液免疫学を専門としております。」


 ここって、普通の(まっと)うな病院な訳か? ホントかよ?


 あっちこっち体はガタが来ているから、

 叩けばホコリ出て、

 入院いつでもありだったろうけど。


 あの‘秘密のマケル人間製作工場’から、ここまで直行だった訳か?


 ***************



 ゆっくりなら話が出来るようになった翌日。

 ちゃんと名前も年も言えるよ。


 入り口から、マコ、アロ、スールさんが登場。

 ホントにここって病院なんだね。普通の軍病院。


 でも、マコさん、アロ君何でそんなおっかない顔してるのかな?

 ここに来るまでに、凄い敵でもやっつけて来たような顔をして。


 2人とも、俺を睨み付けて話かけもしない。

 アロ、何でそっぽ向いてパパを見ないわけ?

 マコは俺の横にあるデータ記録を手にとってみている。


 俺の寝てる横に、軍広報新聞を叩きつけるのはやめてくんないかな。

 パパは“病人”って事でここいるんでしょうが。


 はいはい、例の広報新聞ですね。

 あの時はよく見てはいなかったけど、下の方に写真も載っているんだ。


 これ、俺のID の写真だよね。指名手配みたいだ。

 マケル宰相閣下のお嬢様って初めて見た。

 この指名手配写真だとよくわからないけど。

 名前も初めて知りました。


 この先、どう落とし前をつけるんだろう。

 お前達さあ、今、‘まな板の上の鯉’のパパに、

 怒たってどうしようもないんだよ。


「パパにも何が何だかわかんないんだよ。

 でも、あんまり外でしゃべってこないでね。

 皇帝陛下の御意向に傷が付くことになるのは、パパは嫌だから。」


「何でどうしてこうなったか。

 元気になって分かったら、パパがちゃんと話をするからさ。

 俺、君たちに説明を省いたり、嘘を付いたことはなかったはずだから。

 その実績で、もう少し時間をくれないかな?」


 はあはあ、1年分喋った気分。

 血圧か脈拍が変動したのか、医者が飛び込んで来た。


 スールさんには、目でよろしくと言うのが精一杯。

 また、すーっとブラックアウト。



 *******************


 日にちの感覚が、

 全然分からなくなっているけど、

 何日たっているのかな?


 病室ベッドで少しずつ体起こして、

 スープみたいのを2口位飲めるようになった。


 何と!マケル宰相お嬢様が病室にやって来た。

 

 まだちょっと、色々無理。

 だから、もう少し時間下さい。

 

 俺は頭が、動いていないんだよ。


「お初にお目にかかります。ミラージェン·マケルと申します。

 対外向けには、

 ミラージェン·ターランと申し上げた方がよろしいですわね。」


「私、婚姻を結びますのは今回で4度目となります。

 万事心得ております。

 あなた様には、

 まずはお体をおいといあそばして療養にお勤めくださいませ。」


 4度目?お嬢様の後ろの睨んでるおばちゃん誰よ?

 妖怪砂かけババに似ていないか?


「では、本日はご挨拶まで。

 お疲れが残りませぬように。」


「ちょっと待って。

 自分は貴方の方から、

 この理不尽な婚姻を破棄していただきます事を、

 強く望んでおります。

 何卒良しなにお取り計らい下さい。」


 舌をかみそう。

 マケル家お嬢様、いきなりさっと手をあげる。

 何々、それって『打て!』とかやる時の?


 部屋の証明や電気の機具が、

 ヴゥーンって一回切れて付き直した。

 電圧仕様変えるときの切り替えの感じだよね。

 なぜ?


「頭のいい方とお聞きしておりましたのに、分かりませんか?」


 ああ、はいはいこの部屋には盗聴監視が付いていたのか。

 

 一回、切った訳だ。

 流石マケルお嬢。


「あなたの忠誠はどちらを向いておいでですか?」


 ???


「今もし帝国へ‘もともと外のお方’であった方が、

 退屈しのぎに兵を挙げられたらどうなります?

 勝ち戦となろうとも帝国の疲弊は、

 前皇帝との3日の内乱とは比較にもなりません事は必定。」


「それとも、あなたは‘外の方’へのご信頼が、

 陛下以上に勝っておいでですか?」


 ありゃそっちの。

 うーん、やるかもな!

 あの悪魔みたいなドゥーダンなら。

『 面白そうだから、暇潰しに戦争仕掛けてみた』くらい言いそう。

 分かるよ?分かるけど、それを俺に言う?


「かの方の御気性は、存じ上げております。

 ですが、

 自分のこの人生で、それに関わる役どころがあるとは思えません。

 その旨をご承知いただくことを重ねてお願いいたします。」


「随分と、軟弱でいらっしゃいますこと。

 ご心配をいただかなくとも、

 あなた様の『持ち主』が、どなたであるかは存じ上げております。

 私の事で余計なご苦労などお掛け致しません。

 あなたは暫くの間、

 黙って‘妖怪マケルの婿’の座に収まっていらしたらよろしゅうございます。」


 気迫に押されて、何にも言えない。

 すでに半分ブラックアウトしそう。


「また伺います。何か必要なものはございますか?」


「優しい上官をお願いいたします。」


 振り返って、口を片側上げた表情、

 マケル宰相とお嬢様、表情がそっくりじゃん!


 血縁上は宰相閣下の姪にあたるとお聞きしていたけれど、

 顔は全然似てないのに。


 その日も熱が出ました。うーん。



 *************


 次の日に、また別の医者がやって来た。

 

 前に来ていた軍医さんとは明らかに違って、

 キレッキレの空気纏った《出来る感じ》のお医者さん。


「司令閣下には、医学にも深い教養をお持ちと伺っております。」


 誰にさ?


「包み隠さず、

 今後の治療についてお話させていただこうと参りました。」


 あっそう。名前も言わない方向ね。怖 何をされる?


「今、俺って対外的にはどういう事になっているわけ?

 それであなたは、俺の状態をどう捉えているわけですか?」


「司令閣下の病状は、軍内部かなり司令のお近くにおいても

『長年の疲労の蓄積により、過労による極度の多機能不全』

 との公式発表がされております。」


「真実は、ご存知のように

 『胎児被爆による二次被爆。臓器機能、血液成分の変質』

 

 しかし、よくもまあ症状緩和のアンプルひとつでここまで持たせましたね?

 これでは、遠からず死ぬでしょうね。このままでは。」


 で?だから?何か辛辣だよなこの人。


「早急に化学物質治療に入る事をお勧めいたします。

 これは、上からのご命令ととらえていただいて構いません。」


「ちょっと待った! 

 この治療は本人の意志確認の上で行うと、

 医療法規に定められていますよね。」


「ええ、よくご存知で。

 普通の人では、

 なかなかキツさに耐えられる治療ではありませんのでね。

 

 でも、アンプルひとつで誤魔化していらしたあなたでしたら。

 特にご心配はありませんよ。」



「治療のきついきつくないの話をしてるんじゃないって。

 どういう状態で余命を生きるかを選ばせてくれって言ってる。

 仕事も出来ない状態で、ながらえている事は真っ平だってば。

 動けないのなら、もうここまでで十分だよ。

 選ぶのは俺でしょう?」


「違うと思いますよ。それを選ぶのはあなたではありません。」


 何言ってるこいつ?頭大丈夫かな?


 結局、話が空中分解。また夕方から熱が出たし。


 ***************


 翌日、午前中にスールさんを呼んであった。


 後からマコ、アロもばらばらでやって来た。


 スールさんには、遺言書の作成を至急に頼んでおきたかったし。


 俺の希望を伝えて、取り計らいをお願いした。

 スールさん、いてくれてホントーーにありがたかったです。


 アロマは、今年ユニの受験に挑戦してくるそう。

 生き急ぐ必要はないけれど、こちらの事情もあるから。


 外の身分を確保させておくのもこの子にとって、心強い見方になるはず。

 絶対はないけれど、アロマなら結果に期待が出来ると思う。


「パパぁ、パパの作った高速戦艦すごいね。

 ユニの近くまで20日だって。」


「えっと、お前、軍用に乗って行くつもり?

 確かに早いけど、それってどうよ?

 パパあんまり感心しないかも?誰に頼んだ?」


「クロおじさんが、

 対外留学受験の応援システムみたいのあるからって。

 法律解釈を拡大するのが可能かどうかって、

 あっちこっちに掛け合って下さったんだ。

 パパが寝てる間に。

 それでね、ちょっと強引なところもあるけれど。

 ずるではなくて、

 ちゃんと民間人の応援枠で戦艦に乗せて貰える事になったよ。

 帰りはせっかくだから、ゆっくりと乗り継いで帰って来るね。」


 クロさん、ありがとうございます。


「アロマ、護衛つけたらお前は嫌か?」


「パパ大丈夫だってば。

 高速戦艦で、ほとんど近くまで行っているし。

 その後はいくらも距離はないから。

 試験を受けられなくなったら大変だから、

 慎重に慎重を重ねて行くからね。

 ユニまでさえ心配で行けなかったら、

 入学がそもそも出来ないんじゃない。」


「それにしても、パパの設計の高速戦艦ってすごいね。

 これがなかった時代よりも、

 宇宙がずっと狭くなっていく感じだよね。」


「もっと早くする事が出来ないでもないけどさ。

 それだと、防備だけで攻撃がスカスカになるから。

 戦艦としては使えなくなるからさ。」


「他の艦との連絡艦としては有効だよね。

 パパ、最大でぶっちぎったら、

 20日がどこまで縮められると思う?」


「流石に3日は無理だろうけど。

 7日、無理して5日かなあ。」


「へえすごいね。パパいつか作ってよ。」


 いつかが来るとは思えない。


「パパ、お願いがあるんだ。」


「ん?」


「僕がユニから帰ってくるまで、

 絶対パパ居なくならないでね?」


「アロ、この世に絶対に死なない人間なんていないんだよ。

 死なないとそれは人間じゃないからさ。」



 夕方近くにマコがやって来た。


 アロと違ってマコと話をすると疲れる気しかしない。

 マコの話は2つ。

 マケル宰相のお嬢様に会って話をした。

 それと、彼氏を紹介させてくれって。やれやれ


「あの人、マケル宰相のミラージェンさん略してミラママね。

 私はありだと思った。」


 おい、いきなりどうしたって?


「ずっと前に助けてもらった時にも思ったんだけれど、

 あの人は私達の敵ではないと思う。」


 はいはい、マコを軍事司令官に据えたら、

 敵見方の判別が楽でいいけどね。アホか?


「それに、あの人、パパのストライクゾーンを行っていると思うし?」


「なんだそれ?」


「パパの元彼女って みんなスレンダー美人で頭のいい人。

 パパ、ボンキュッパのセクシータイプよりも頭がいい人が好きでしょう?」


「どっからそんな話になる?

 バカじゃないのか、ホントお前ってアホだよな。」


 やめてくれよ。

 この部屋たぶん、盗聴監視がついているから。


 昔の傭兵所の時の仲間で足洗ってる奴あたりが、

 マコに要らないこと喋をりやがったな?

 生きて会うことあったら、締めてやる!!


 ユニで教鞭をとって、発明教授くらいでやって行けるかな?

 なんてちょっと思ったりしていた。

 

 その算段がひっくり返って、こっちに来ることになった時。


 その時付き合ってた彼女(キーラではない絶対)が、

 俺を探して、傭兵所まで訪ねて来たって後から聞いた。

 びっくりした。

 学者の娘さんで、そんなおっかないところに来るような()ではなかったから。

 傭兵所で、大騒ぎになったことは想像できる。


 マコの今の彼氏、困った事に『紺』軍服着ている、

 帝国の准将だって。

 参った。20代でそれなら、優秀なんだろうけど。


 ちゃんと、一緒になりたいんだと。

 マコの頭は信用してないけれど、

 人を見る目は確かだろうと思うのは《親バカ》かも。

 でも、困った。

 妹アンムートの選んだ相手よりも安全パイではあるのだけれど。

 今は、困るな。


「あのさ、マコ

 どうしてもその男と一緒になりたいなら、パパ反対はしないよ。」


「だったら会ってくれる?」


「会うことは出来ない!

 一緒になるのは、パパが死ぬまで待っててくれるか?」


「何それ?私おばあちゃんになっちゃうじゃない?

 パパ、何で?訳がわかんない。

 帝国の敵国の人ではないんだよ。どうしてよ?」


 どうしてもだよ。そんなに長い間待たせないと思うからさ。


「パパと同じ色の軍服着ている上層部に、

 妻帯している者も、実子がいる者もいないの分かるか?」


「わかんない。ぷーー。怒」


「宰相閣下は妻帯していなくて、

 お嬢さんは亡くなったお兄さんの子供。


 ドゥーダン提督も綺麗な奥様とは入籍をしていない。


 パパだけ、大失敗をしたけれど。」


「皇帝陛下のお側近くで仕える者が、

 縁戚縁故でごちゃごちゃするのは、

 綺麗ではないからさ。


 お前のご意見を聞きたいわけではないから、黙って聞け。

 この帝国で生きているパパの娘としては、

 それってとてもパパは迷惑なんだよ。

 だから、パパの娘でいてくれるんだったら、

 パパが生きている間はやめといてくれって頼んでいる。」


「なんなら、会ったことないだろうけれど、

 パパの妹のアンおばちゃんみたいに、

 パパに後ろ足で砂かけて駆け落ちでもしてみるか?

 

 それでもいいけれど、相手の男が帝国軍人なら、

 本人も居心地悪い思いをして、

 あまり楽しい思いはしないんじゃないのか?

 

 パパが手を出すなんて、

 どっかの貴族のやるような事はしないけどさ。

 

 人には目も口もあるから。

 ニコニコ笑って暮らすには、

 なるべく余計な荷物は要らないんではないかな?」


 マコは納得をしない顔をして帰って行った。


 ハア、パパはやっぱり夜に熱出た。

目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?ドキドキ

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

(〃⌒ー⌒〃)ゞ

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