1話
魔法が当たり前のように広がる世界。
99%以上の人間は十種のうちの一つの力を授けられ生まれてくる。
多くの人間は与えられた力を使い生活し、時には自分のために時には他人のために。無い物を補いながら生活して行く。
だがしかし、ここに99%に属せず、生まれ持った希少な才能を持つ少年が一人。
「ねぇ!君ってオールラウンダーなの!?」
一人の少女が机に体を預けて寝ている少年に向かって起こすような声でそう言った。
少年はムクリと顔をあげキラキラと目を輝かせている少女を少し見たが気にせずそのまま立ち上がり教室を後にした。その歩く姿と表情は「うざい」その一文字を感じさせるばかりであった。
少年は教室を出た後廊下を歩いて階段を登り屋上へと来ていた。屋上は基本立ち入り禁止でさらに太陽も見えない曇り空。おまけに冬の寒さが少し残り肌寒いと来たら、こんなところに来る物好きは早々いない。
少年は屋上のど真ん中で仰向けに寝転がり腕を空に掲げて自分の手を見つめていた。
「あーまたか...。」
そうポツリと低い声をだしながら小さな声で言った。
それもそのはず、この体験をしたのは一回だけじゃないからだ。
獅子野 十也15歳。現在高校一年生。一週間ほど前に入学式を迎えこの高校に入学した。実家から離れているため一人暮らしを始めて二週間。と言っても実際は一人ではない。今は...
「あれ?十也?何やってんの?こんなところで。」
一匹のウサギが高校の屋上を通り過ぎる時に十也の存在に気づき足を止めた。
「おー。フーかぁー。まただよまた。まーた俺を『オールラウンダーなの!?』ってさぁー。
もうやんなっちゃうよねー』
少女が言ったところは少し馬鹿にした感じで再現し、基本的にはだるそうな感じでフーというウサギに向かって言った。
このウサギ体は淡いエメラルドグリーンのような色をしており屋上を通り過ぎようとした時には小さな竜巻のようなものに座るような形で移動していた。
簡単に言うと飛んでいたということだ。
「別に悪気はなかったんじゃないのー?まあ珍しいっちゃ珍しいもん。十也は気にしすぎだって。」
「でも毎日だよ?色んなクラスのやつがわざわざ休み時間に俺のところに来てキラキラさせた目で俺を見るんだよぉー?」
ウサギの言うことに対する返答もやはりめんどくさそうな雰囲気であった。
毎日毎日別の生徒が来ては寝ている十也を見るという行為は入学式から続いており、ただ見続ける者。見続けた末「あの〜?」と恐る恐る話しかける者。さっきの少女みたいに速攻で話しかけて来る者。大きく3パターンである。
「このまま帰ろうかな〜?」
十也は「あー。あー。あぁー。」とあからさまにめんどくさいアピールをしながら帰りたい気持ちを曝け出していた。それに対して
「いや、まだ1時間目終わったばかりでしょう。授業はちゃんと受けないと。」
しっかり者のウサギである。
そうこうしているうちに10分の休み時間はあっという間に終わり2時間目開始のチャイムが学校中に響き渡る。
「ほらチャイム鳴った。2時間目の授業は?」
「あー確か魔法学〜。」
「得意分野じゃないか。ほら早く行ってこーい!」
そう言ってウサギは十也を立たせて校舎に入るドアに誘導するように十也のケツをパンチしながら進んだ。
なぜ蹴りじゃないかって?フーというウサギは十也のケツにも届かないぐらい小さく先ほど屋上の上を通り過ぎるように足元には竜巻を作り浮いているからである。
十也は渋々自分の教室に戻りフーはまた来た方向とは逆に向かい飛んでいった。




