第十六話「どっちもどっち」
「昨日は、大変だった……なんか、もう帰りたい」
望海が住んでいるマンションまでおぶって行き、到着までよかったがそこからどうしようと迷っていたら、丁度そこに望海の母親が帰って来たのだ。最初は、蒼のこと誘拐者と騒がれたが事情を話したら分かってくれたようで、その場で望海を引き渡した。
「大事にならなくてよかった。誘拐者とかマジで勘弁」
バスから降りて学校を目指す。校門が見えてくる。どうやら今日は、綾音がいないらしい。少しホッとした。グラウンドを見ると女子サッカー部員が朝練を終えた様子だ。道具を片付けする者、話をしている者、部室から出てくる者。
「あ、相川さんだ」
制服に着替え終えて仲間とこちらに向かって来る。蒼は、望海に気付かれないようにその場を早足で去った。
「さてと。今日は、屋上かな」
昼休みの時間。今日は、一度も綾音と遭遇していない。彼女にもいろいろあるんだろうと思いながら、購買でパンとコーヒー牛乳を購入した後、階段を上って屋上のドアを開いた。
「あ、あれ。なんで?」
蒼の視界に飛び込んできたのは、屋上の柵に一人で寄り掛かっている望海だった。サッカーしてるのに筋肉質ではなく、スラッとした体にさらさらしてそうな髪。細い足で白のニーソ。
「おぉ!本当に来たよ!私の感さえてるな~」
「どうしてここに?」
「入山君にお礼したかったから」
「なんの?」
「なんの!?昨日の帰りだよ!入山君は、見た目に反して意地悪な人なの?まぁ、とりあえずこっちに来て一緒に食べよう」
望海の隣に移動する。
「昨日は、迷惑かけちゃってごめんね」
「別に迷惑だなんて」
「そ、その。私が雷苦手なこと誰にも言わないでね」
「うん」
「ありがとう」
「相川さんが雷に怖がってる姿が可愛かったのは、僕だけの秘密にしておく」
「あぁ~!ヒドイ!そ、それに可愛かっただなんて嘘」
蒼の肩に連続パンチを繰り出すが、全然力が入ってなく痛くない。
「お母さんから聞いたよ。私をおぶってマンションまで来たんでしょ?」
「誘拐者と言われたよ」
笑って言う。
「そのことは、本当にごめんなさい!不快に思ったでしょ」
「しょうがないよ。知らない男に娘がそんな状態にされてたら」
「うぅ」
「それにお礼を言うのは、僕も同じ。家まで傘に入れてもらったんだから。お相子だよ」
「入山君って優しいのね」
「普通だよ」
屋上で蒼と望海が話をしているまさにその時、屋上のドアの裏側に。
「……相川さん?」
綾音だった。




