第十四話「相合傘」
彼女は、相川望海。同じ学年なら知らない人はいないほど、男女からの人気がとても高い。また、部活では女子サッカー部に所属しており、一年の夏からレギュラーになるほどの実力を持っている。外見が可愛いためイケメン以外の男子は、声をかける勇気がないらしい。そんな、学年一番人気の彼女が何故ここに。
「私のこと知ってるの?」
「そ、そりゃ、知ってるよ」
「私は、君のこと知らないんだけど。名前は?」
知らない。当然だ。一度も話したことがないのだから。
「三組の入山蒼だけど」
「同じ学年?」
縦に頷く。
「じゃあ、よろしく。入山君って呼べばいいかな?」
手を差し出し握手を求めてきた。
「す、好きなように呼んで。相川さんでいいかな?」
「下の名前でもいいよ?フフッ」
恐る恐る手を掴むと驚いた。彼女の手は、とても小さくなにより冷たかった。
「ここで降りるってことは、家この辺なの?」
「ほら、あそこのマンション」
指をさす先にあるのは、20階建てのマンション。この辺りで一番目立つマンションだ。
「へ~。あそこに住んでるんだ」
「入山君は?」
「ここから少し歩いたところにある一軒家だよ」
「一軒家なんだ。いいな~。私も住んでみたいんだよね」
「結婚したら住めるんじゃない?」
「じゃ、入山君お願いしようかな?」
ドクンっと心臓が大きく脈をうった。言葉を失う。蒼の反応に面白がるように笑う。
「ハハハッ。ごめんごめん。冗談だよ。入山君は、冗談が効かないのね。さぁ!ずっとここにいても寒いだけだから早く行こう」
傘を広げて蒼が入るスペースを作ってくれる。蒼は、決心して相合傘の申し出を受けた。
歩いてるときに蒼は、思った。今の状況周りに男子がいなくてよかったと心から思っていた。しばらく歩いていると、蒼の右肩が濡れはじめた。そのことに気が付いたらしく傘を蒼の方に少し傾ける。そして、それに蒼が気が付き平気とばかりに、手が触れないように傘の傾きを戻す。
「戻さなくていいよ。こっちは、大丈夫だから」
「いやいや、こっちだって」
「濡れちゃうよ?」
「いいって傾けて相川さんが濡れたら駄目だろ?」
「……入山君って優しいのね」
「普通だよ」
「……」
しばらくして蒼の家に到着した。
「家までありがとう」
「ううん。たいしたことしてないよ。それにここから私のマンション近いし」
「そうだね」
別れようとした時だった。突然、辺りが真っ白になりとてつもない大きな音が鳴り響いた。どうやら近くに雷が落ちたようだ。そして、蒼は、抱き着かれていた。




