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人生、だいたい想定外。~創作・育児・日常エッセイ集~

映画の感動を「ありっがとうごっざいましたぁぁぁ!!」劇場のお兄さんに全部持ってかれた話

作者: 白鐘
掲載日:2026/07/02


三歳の娘が、ある日こう言った。


「アンパンマンの映画見たい!」


ほう。

上映時間は約一時間。三歳の映画デビューにはちょうどいい長さだろう。

よし、では映画館デビューと洒落込みますか。


映画館へ到着。


チケットを買おうとして、いきなり時代の流れを感じた。

えっ、店員さんに注文しないの?

フードはタッチパネル?

十年前には無かったぞ、こんなシステム。


「映画にはポップコーンだよね」


「ポテトがいいー!」


はいはい、ポテトね、了解。


「ガチャガチャするー!」


……何故アンパンマンではなく、スーパーボールなのだ。


「キラキラきれい!」


はいはい、了解。


上映中の暇つぶしもこれで万全である。

そして、いよいよシアターへ。

ポスターを見る限り、今回の主役はレッサーパンダの少年らしい。


まあ、娘が泣かなければそれでいい。

そう思っていた。


上映開始。


ばいきんまんが取り出したのは、赤ちゃんスプレー。


そのスプレーを浴びたレッサーパンダのおじいちゃんは、みるみる少年の姿へと若返っていく。


……待て。

これはもしや。



ショタジジイでは無いのか!!??



私の目が、カッと見開かれた。


そして蘇る記憶。

十数年前。ショタジジイというジャンルに、どっぷり浸かっていた、あの頃の私。


……帰ってきた。

封印したはずの何かが、帰ってきた。

そこから先は、もう主人公しか見えなかった。


パンタン!

良いぞ、パンタン!

可愛いぞ、パンタン!

頑張れ、パンタン!

少年の姿でジジイ口調とか反則だろう!


過去回想のシーン。

感動のシーン。

ここは物語の山場である。


なのに。


娘「ママー!」


周りのちびっ子達「アンパンマンー!」


ざわざわ。

ガヤガヤ。


静かにするんだ!!

娘よ!

全国のちびっ子達よ!

今はパンタンの見せ場なんだ!!


私は今、アンパンマンではなく、ショタジジイを応援しているんだから!!





上映後。


ああ……。

久しぶりに良いものを観た……。


ありがとう、アンパンマン。

ありがとう、制作陣の皆様。

そして、この企画に誰一人「待て」と言わなかった全ての関係者の皆様。


……分かっています。あなた達の中に、同志が居ることを。


「おもしろかったー!」


どうやら娘も大満足だったようだ。

よかった。

この感動を胸に、お家へ帰ろう。


そういえば、フードの回収場所は入口の外だったな。

回収口へ向かう。


「はい!こちらです!」


スタッフのお兄さんが笑顔で受け取る。


そして次の瞬間。


「ありっがとうごっざいましたぁぁぁぁぁぁぁ!!」


劇場中に響き渡る、裏声の超全力ボイス。


……。


うん。

お兄さんや。

君は、どうしてそんなに元気なんだい?


さっきまでパンタンに心を持っていかれていた私の感動は、その一声で見事に吹き飛んだ。


最後に一番印象へ残ったのは、アンパンマンでもパンタンでもない。


劇場スタッフのお兄さんだった。



……感動の余韻よ、カムバック。



( ゜д゜)ハッ!


ショタジジイが主人公の創作を書こう!


そうしよう!


いえーい!

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― 新着の感想 ―
三歳の娘との初めての映画館という微笑ましい一日が、母親の封印していた「ショタジジイ」好きの再燃によって思わぬ方向へ走り出すのが楽しかったです。子どもたちがアンパンマンを応援する中、ひとりパンタンへ熱い…
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