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8.ベルローズもハッピーエンドになるべきじゃないかな




あの後、ヴィセンド殿下やナーサリーは、知らせを聞いて王都から駆け付けた国王軍によって捕らえられ、連行されていった。


私たちも、事情を聞かれるため、もう一度王都へと戻ることになってしまった。




一連の騒動の後──




「この度は愚息が申し訳なかった……」




国王陛下自ら謝罪の言葉をいただいてしまった。


国王が頭を下げるだなんて……と畏れ多いと恐縮していると、



「お義兄様、私の愛息子と、愛娘に、とんでもないことをしてくれましたわね。辺境を敵に回す覚悟は出来ていて?」



辺境からすっ飛んできてくれたお義母様が絶対零度の怒りオーラで、腹違いの兄である国王陛下を睨みつけていた。



「アルネル、お主の勝気な性格は変わっていないようだな。まったく……。ザグリオン辺境伯軍と内戦をする気などない。愚息は其方のいいように始末してくれてかまわない。その他、どのような要求も受けよう」


「あんなボンクラの首一つでは収まらないわ。まあ、生き地獄は覚悟してもらわないとね。ロザリナちゃんを苦しめた、異母妹やその家族も、それなりの刑を受けてもらうわよ」


「ああ、好きにしてくれて構わない」


「ザグリオン辺境伯家を敵に回した恐ろしさ、骨の髄まで味あわせてあげるわ……──」



お義母様の後ろにブリザードが吹雪いている気がするのは気のせいかしら!?


ガイザード様も私も、これはもうお義母様に任せるのが一番だと、口は挟まずにその場を後にした。



ヴィセンド殿下は、王籍を剥奪された。男しか居ない孤島の監獄に送られ、其処で生涯罪を償わされることになった。監獄では兵役も課せられ、恐らく死ぬよりも辛い日々を死ぬまで送るのだろうと、お義母様はとってもいい笑顔で語っていた。


ハッシュベルト侯爵家は、父と義母、ナーサリーの貴族籍を剥奪し、当主の座はお義母様が厳選した有能な遠縁の者が継ぐこととなった。父と義母、ナーサリーは財産を没収され、平民として、困窮街へ追い出された。贅沢な暮らしになれていた彼らは、きっと苦渋の日々を送るだろうと、お義母様はニッコリと微笑んだ。


ナーサリーは、


『私は『ヒロイン』よっ!!!前世の記憶もあるんだからっ!!!物語の主役は、私の筈なんだからぁぁぁ!!!』



と訳の分からないことを叫んでいたと報告を受けた。150年前に流行っていた物語を、ナーサリーも崇拝でもしていたのだろうか。


ベルローズといい、ナーサリーといい、物語の設定にどっぷり嵌っており、とんでもない影響力を発揮する物語だ。だからこそ、語られるのを禁じられたりでもしたのだろうか。


今は語られていない物語が少し気になるけれども、危ない物には手を出さずにいようと思う。



その他にも多額の慰謝料を貰い受け、やっとお義母様の怒りは収まったみたいだ。絶対にお義母様を怒らせるのはやめておこう。そう心に誓った。



「……ロザリナは、これで良かったのか……?」



ガイザード様が気遣わし気に聞いてくれる。元婚約者だったヴィセンド殿下は投獄され、元家族は平民に堕とされた。(私はハッシュベルト侯爵を継いだ遠縁の親類の養子となったので、もう彼らとの縁は切れたのだ)


色々と、嫌な目には遭ったけれども、ナーサリーや父、義母との縁が切れたことで、私はすべての柵から解き放たれた気がした。



辛い記憶は、ガイザード様やポメちゃん、それに新しい義両親のお義父様やお義母様が温かな家族の思い出と変えてくれている。



「ロザリナ・ハッシュベルトとしての人生は終わりました。これからは、ロザリナ・ザグリオンとして生きていくので……大丈夫です。私は今、とっても幸せなので!!」



「……そうか。なら、良かった」




目を細め、優しく微笑むガイザード様に、本当に幸せだと胸が温かくなる。


彼と出会えて……本当に良かった──。




『嘘ですわ、嫌ですわ、認めませんわぁぁぁぁぁ!!!』



頭の上で騒いでいる守護霊様に呆れつつ。



「そうだ、ガイザード様!あのお願いですがっ」


「ああ。伯父上に許可を貰った。今から行こうか」



ガイザード様の腕に手を絡ませ、目的地へと向かった。其処は──。




『ま、待って、まって頂戴、行きませんわよ、わたくしはっ!!!』


「ベルローズもハッピーエンドになるべきじゃないかなって、そう思うの。だから、黙って付いて来てね!!ポメちゃん、よろしくっ!!!」



逃げようとするベルローズをポメちゃんに捕獲してもらい、王家の霊廟が並んだ墓地へと足を踏み入れた。


王宮の守護霊たちに聞いたのだ。


あの『レオンハルト・マークガスト』の居場所を──。




『ベルローズっ!!やっと私の元へ帰ってきてくれたんだね。待ちわびたよ。『悪役令嬢』を見届けられたら、再び私のものになってくれるのだろう?』




豪華な霊廟の前には、肖像画で見た通りの、整った容姿に反して、強者のオーラを纏った、伝説の国王、レオンハルトがおり、満面の笑みでベルローズを歓迎していた。



『きゃーーーっ!!!レオンっ、違うんですわ、これはーーっ!!!わたくし、まだ、まだ納得してませんのよーーっ!!!』



『可愛い私の薔薇姫。朽ち果てない永遠の時を共に過ごそう。さあ、存分に愛し、可愛がってあげよう!!』



『ロザリナっ!!!貴女、やりましたわねっ……ちょっと、待って、いやぁぁぁぁっ!!!!』



レオンハルトに抱きしめられ、顔を真っ赤にしているベルローズを見て、私は今までベルローズに受けた鬱憤を見事に晴らして大満足だ。




「ロザリナ……?どうしたんだ?」


「いいえっ!!みんな、幸せになれて良かったなって!!」




レオンハルトにお姫様抱っこで連れていかれたベルローズの声が遠くなり、私の背後は空っぽになった。少し寂しいけれども、私はもう『悪役令嬢』にも『破滅』にも怯えることはないのだ。



愛おしい旦那様と、可愛らしい守護霊のポメちゃんと一緒に、末永く幸せに暮らす予定なのだから──。






まさか、その数日後に、



『貴女の守護霊、継続しますわっ!!!レオンと一緒にねっ!!!逃がしませんわよ……レオンに私を売ったこの恨み……絶対に……晴らしてやりますわ……』



『可愛いベルローズの願いだ。我が薔薇姫と共に、君を護ろう。……面白そうだしね!』



最強の守護霊を手にする未来を私は知らずにいたのだった──。









第四章END




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