12 チュッペの町
僕はこの家にはシャワーがあるということで、数年ぶりにいわゆる朝シャンをかましてリビングでくつろいでいると、大きなポロを両手に抱えてやってきた。
こういう意味のないことをしているときの彼女は相当ご機嫌である。
抱えているポロ越しにぴょこッと頭が見える。ポロで前が見えないのかよたよたしながら歩くと、ポロを突然床におく。
ほら、ポロびっくりしちゃってんじゃん。
「今日は町でお買い物をするわよ!!」
そう胸を張って宣言し始めた。
朝ご飯を作っているミラとガローはそれをニコニコしながら見ていた。
町は本当に刺激的だった。
大通りにはたくさんの人が行きかい、威勢のいい客呼びの声がいたるところで響き渡る。
待ちゆく人たちは相変わらず僕たちをじろじろ見てくるが、ガローが僕らを守るように前を歩いてくれた。
まず初めにいった店は服屋のようだった。ガローは店員に何か言うと店員はいくつかの商品を見せた。彼は頷くと、金を払いこちらに来た。どうやら僕らの服を買ってくれたみたいだ。
するとニナが店内のかごの中のから何か取り出してきた。緑のリボンである。
「ガロー、お願い!」とおねだりするとガローは「仕方ないのぅ」と言ってそれも買っていた。
ガローさんや、そうやって甘やかしすぎた結果がこのじゃじゃ馬なのではないでしょうか。ニナはさっそく真っ白の髪に瞳の色の同じ翡翠色のようなリボンをつけてルンルンである。
ガローは店を出るとしばし悩んだ顔をして、その後、意を決するかのように、次は防具と武器を買いに行くかのう、と言った。
防具と武器はどうやらひとまとめに武器屋が売っているようで、店内はギラギラしたものがたくさんあった。
ガローは僕とニナに商品を触らないようにと言いつけると、奥の店主と話を始めた。ニナは何にも触るなと言われているため、つまらなそうに店内の窓から外を見ていた。僕も何を見ているのかとみてみると大道芸人らしき人が手から火や水を出している。
おそらくあれは魔法ではないか。
ガロー以外にもあの普通のおっちゃんっぽい人が魔法を出している。
つまりこの世界だと、魔法は割とポピュラーなのではないか。
僕は新たな発見をして心が躍った。
「いいなぁ」
ニナが呟く。
以前、魔法に興味なさげにしていたのは、強がりだったのかもしれない。そりゃ、普通あんなことできるならやってみたいよな。
僕は昨日の会話をふと思い出す。
ガローがいなくなってしまう、ということでショックを受けて気が回らなかったが、ミラは確か、あの子たちに魔法を教えていない、みたいなことをガローに言っていた。ということは、僕たちにもできるのではないか。
しかし、ガローも彼の考えできっと僕たちのためにそう言っているのかもしれない。きっと何か彼なりの理由があるのだろう。実は隠れてちょっと練習していたこともあったが、手のひらになんとなくうおーと力を込めても魔法は出ないので最近はあきらめていた。
そういえばニナも前に同じようなことを言っていたっけ。
そんなことを考えつつ、二人で大道芸をみていた。
「私が大道芸をやるなら、もっとうまくできるのに!右手で火を出して、左手で水を出して、観客をワッと言わせるわ」
と彼女が宣ったので何を言っているのだろうと大道芸人をよく見ると
確かに彼は右手からしか魔法を出していない。
両手から出した方が面白いのに、とも思うが、もしかしたら制御が難しかったりするのだろうか。ガローは見た感じ左右の手から魔法を出しているから、利き手みたいな感じで出しにくいみたいなことがあるのかもしれない。
「もし、私が魔法を使えたらガローがもっと楽になるかもしれないのになぁ」
ニナは大道芸人をじっと見つめて、そう小さく呟いた。
相変わらず右手から氷と火を交互に出す大道芸人を見ていると、ガローが、皮の防具や、木の剣など小さめの道具を持って店奥からかえってきた。
そして、それぞれ一つずつ僕らに渡す。
「ニナとジークの装備じゃ。帰ってから詳しく話すからいったん帰るかのう」
そう言ってポロと共に店を出ていく。僕もニナもまさか自分たちのものだとは思わず、驚きを隠せなかった。先に行ってしまったガローたちに小走りでついていく。
横のニナをみると、ちょっとニマニマしていた。




