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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
29/40

第29話・僕らは財宝探検隊 ④

いつもより長めです。


《20:10 カンタ・リーン組 二階客間》


「「ジョーがカラクリに引っかかって地下に落ちた!?」」


サヤカからの一報は、カンタ、リーンを驚かせるには充分であった。


「怪我はないようだし、探索できそうなところもあるから大丈夫らしいけど…。」


「……ジョーを信じてみましょう…。本当に困ったら、ジョー自身が何か送ってくると思いますし…。」


「それもそうだね。とにかく、僕らは僕らのことをしよう。」


2人は、また鎧の腕の掠れた文字と睨めっこを始めた。

この信頼関係も4人だからこそである。


「……うーん……。ここは『汝、望むならば』じゃないですかね…。」


「そのあとは多分『わが屋敷の……秘密を解け』って書いてあるんじゃないかなあ。」


「……てことは、まとめると『汝、望むならばわが屋敷の秘密を解け』って書いてあるってことですかね…。」


「『わが屋敷の秘密』ってなんだろう?」


2人は首をひねるばかりであった。


《20:12 サヤカ 一階応接室》


「何かしら、これ。」


二階の2人が鎧の腕に書かれた文字を読み取っていた頃、サヤカはひとり応接室を調べていた。

そこで見つけたのが、ソファの1番底の方に小さく開いていた穴である。

慎重にそこに指をサヤカがつっこむと、中から小さな青い石が出てきた。

真っ青で、不思議な輝きを持つ石である。


「何かに使えるかしら。」


サヤカは、その石を自らのカバンの中に放り込んだ。


《20:17 カンタ・リーン組 二階客用寝室》


「……うわぁ、これまた埃っぽい部屋ですね……。」


リーンがしかめ面をする。

一通り客間の探索を終えた2人は、次はその隣の客用寝室へと調査の手を伸ばしていた。


「……ちょっとつらいけど、やるしかないか。」


カンタもため息をつく。


2人は、口元を手で押さえながらまた調べ始めた。


《20:25 ジョー 地下 ???》


「ほえー。」


ジョーはひとり呆けた声をだす。

地下に落ちてきたあと、ジョーはひとり通路を進んでいくと、その突き当たりでこの部屋にぶつかった。

ジョーが呆けた声を出すのも当然である。

その部屋は、やたらハイテクそうな機械がたくさん置いてあり、主人を失って長く経った今も稼働していたのだ。


「……ん?あれは……。」


そう呟くと、ジョーはその部屋の奥に向かった。

そこには、厳重に閉じられた扉があった。

ジョーはドアノブを探すが、なぜかそのドアにはドアノブはなく、小さな窪みがあるだけであった。

押してもびくともしない。


やがてジョーはそのドアをあけることを諦め、きた道を戻り始めた。

なにぶん、頭を使うのが苦手なジョーである。

早くみんなと合流し、このことを伝える。

それが、今のジョーの目的であった。


「まだ落ちたところの反対方向にはいってないからね。」


そう独り言を言うと、ジョーは早歩きで来た道をずんずん戻った。


《20:31 サヤカ 一階ダイニング》


しばらくサヤカはダイニングを調べたが、ほとんど気になるようなものはなかった。

ただ、ひとつだけ気になったものをサヤカは手に取って見つめる。


「この人、どこかで見たことある気が……。」


サヤカの手には、この家の元主人とその家族らしき人々の写った写真があった。

その中の、元主人と思われる男性をサヤカには知ってる人のように思われて仕方なかった。


《20:40 カンタ・リーン組 二階書斎》


「結局あの部屋には何もなかったね…。」


「……これが"骨折り損のくたびれ儲け"ってやつですね……。」


2人は懸命に調べたが、結局客用寝室には特にめぼしいものはなかった。

ただただ疲労が増しただけである。


現在2人は書斎を調べていた。この部屋はあまり荒れていないらしく、埃も僅かしか積もっていなかった。それは2人にとってだいぶ救いだった。


「……これ気になりません……?」


そう言ってリーンが差し出したのは、一冊の日記であった。

どうやら、この屋敷の元主人が書いていたもののようである。

2人は、一心不乱にそれを読み始めた。


《20:49 ジョー 地下通路》


どれだけ歩いただろうか。

ジョーは、視界の先に薄ぼんやりとした光を捉えていた。

それに向かって走り出すジョー。

そして、彼はそこに到達した。


「ここは………??」


彼の周りには、草原が広がっていた。

ここにはジョーも見覚えがある。

バベルで人気の72階層のハイキングスポットだ。

しかし、そのメインスペースからは遠く外れている。

首をかしげながらも、ジョーはみんなの元に戻るため、屋敷の方へと向かっていった。


《21:00 玄関ロビー》


約束の時間。


そこには、ジョーを含む4人全員が集まっていた。

驚く3人に、ジョーは後で話すとなだめる。

ひとまず落ち着いた3人は、一人一人収穫を話し始めた。

報告会のスタートである。


「じゃあまず僕らから話すよ。」


そう言うと、カンタとリーンの2人は見つけたことを話し始めた。


「どうやらこの屋敷の元主人は、なんらかの方法で何かを隠したことに間違いはないね。僕らが見つけた鎧の腕に、こっそりと『汝、望むならばわが屋敷の秘密を解け。」って書いてあったしね。」


「……随分とお茶目な方だったのかもしれないですね……。あと私たちはその元主人の日記を見つけました……。その中を読む限り、この元主人は実は科学者だったみたいです……。」


「…科学者……!!そうか、そうか!思い出したわ!!」


突然叫ぶサヤカ。


「どうしたのサヤカ?」


「この屋敷のダイニングに、家族のような写真が飾られていたのよ。そこでみた元主人っぽい人に私は見覚えがあったの。その人を今思い出したわ。名前をロベール。バベル創世記の最高の科学者と噂されていた男よ。でも、大の人嫌いで、いくつか傑作を発表したら、すぐに雲隠れしてしまって……。」


「クモガクレ?まあとにかくおそらくこの屋敷はそのロベールっていう科学者の屋敷なんだろう。俺もそれらしき部屋を見つけたぜ。」


そこで一同は一斉にジョーの方を向く。

みんなが聞きたかったことを、カンタが代表して聞く。


「それで、ジョーは落ちたあとどうやってここまできたんだい?」


ジョーは、落ちてからの一部始終を話す。


「…その部屋が気になるわね。とにかく一度みんなでいってみましょうよ。そんなすごい科学者の研究室を見てみたいっていう気持ちもあるしね。」


話を聞くと、開口一番サヤカはそう言う。

それに、他の人も賛成する。


「そこに財宝もあるかもしれないよ!」


「……気になります……。」


「オッケー。じゃあいまからそこに案内するぜ。」


一同の意見が一致したのを見て、ジョーは案内を申し出る。

そして、4人はこの古びた屋敷から出ていった。
















4人が出ていった数分後。

二階客間に置いてあった鎧が動き始めたことなど、4人に知る由はなかった。




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