第17話・DREAMS COME TRUE? ②
バベル創始期。
それは、今以上に絶望と虚無感に包まれていた時代であった。
どうせ人類はこのまま滅びゆく運命。
ここまでして生きる意味がどこにある。
絶望がバベルというコップから溢れそうになったときに、その男は現れた。
名前をアパラスカ・ヨードルジャフという。
現在のバベル総階層管理者であるアルテン・ヨードルジャフの祖父にあたる人物である。
彼は、まず多少荒い手を使いながらも、強引にこのバベルを自らの統治下にした。
彼は戦争以前は、とある国でカリスマ政治家として名高かった男である。その手腕は本物だった。
彼はその後、現在まで続く、このバベルのシステムの基礎を築いた。
彼の業績として最も知られているのは、92階層を『管理室』にしたことだろう。
バベル全体の環境を集権的に管理したことは、現在も高く評価されている。
そんな、「バベルのアーサー」とも呼べるべき存在のアパラスカ・ヨードルジャフが亡くなった後、その後任に就任した孫のアルテン・ヨードルジャフ。当然、バベルの人々からの期待も高かった。
しかし、彼が就任したことで、再びコップに絶望が溜まっていくことになるのは、あまりにも皮肉なことだった。
徹底的な差別体制を敷いた。
祖父が、『警察』として組織した治安部隊を、『軍隊』に格上げし、その全権を握る。
歯向かう者は皆『軍隊』に捕らえられ、そして貧民層へと追放させられた。
公私をわきまえず、自分の欲望に忠実に行動した。『食糧庫』の分配比率をはたから見ても異常だと思える割合にした。
アパラスカ・ヨードルジャフが、「バベルのアーサー」とするならば、こちらのアルテン・ヨードルジャフは「バベルの董卓」っといったところだろうか。
古代中国で、横暴の限りを尽くした男。そんな董卓という男に並べられる存在。
そんな男が、今「会議の間」の椅子にどっしりと座った。
「それでは、「階層会議」を始めるとしよう。」
そう低く宣言したアルテン・ヨードルジャフの言葉に続いて、議長が議題を掲げる。
「まずは、階層管理者の皆さんから、ご要望をアルテン バベル総階層管理者へ、何か要望はありますか。」
低姿勢で謙虚な質問である。しかし、これはアルテンの毎回の策略であった。
一応でもいいから、話し合いをしたという実績が欲しいのだ。どこまでも姑息である。
各階層管理者がおし黙る。
どうせ言ったらアルテンからの反感を買うことは必至なのだ。誰だって、そんなことをしたくない。
「あの!」
と、末席から1人の手が上がった。
「ひとつ、よろしいでしょうか。」
挙げたのは、50階層管理者、女学生のベリーズであった。
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