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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
17/40

第17話・DREAMS COME TRUE? ②

バベル創始期。

それは、今以上に絶望と虚無感に包まれていた時代であった。


どうせ人類はこのまま滅びゆく運命。


ここまでして生きる意味がどこにある。


絶望がバベルというコップから溢れそうになったときに、その男は現れた。

名前をアパラスカ・ヨードルジャフという。

現在のバベル総階層管理者(マスター)であるアルテン・ヨードルジャフの祖父にあたる人物である。

彼は、まず多少荒い手を使いながらも、強引にこのバベルを自らの統治下にした。

彼は戦争以前は、とある国でカリスマ政治家として名高かった男である。その手腕は本物だった。

彼はその後、現在まで続く、このバベルのシステムの基礎を築いた。

彼の業績として最も知られているのは、92階層を『管理室』にしたことだろう。

バベル全体の環境を集権的に管理したことは、現在も高く評価されている。


そんな、「バベルのアーサー」とも呼べるべき存在のアパラスカ・ヨードルジャフが亡くなった後、その後任に就任した孫のアルテン・ヨードルジャフ。当然、バベルの人々からの期待も高かった。


しかし、彼が就任したことで、再びコップに絶望が溜まっていくことになるのは、あまりにも皮肉なことだった。


徹底的な差別体制を敷いた。


祖父が、『警察』として組織した治安部隊を、『軍隊』に格上げし、その全権を握る。

歯向かう者は皆『軍隊』に捕らえられ、そして貧民層へと追放させられた。


公私をわきまえず、自分の欲望に忠実に行動した。『食糧庫』の分配比率をはたから見ても異常だと思える割合にした。


アパラスカ・ヨードルジャフが、「バベルのアーサー」とするならば、こちらのアルテン・ヨードルジャフは「バベルの董卓」っといったところだろうか。

古代中国で、横暴の限りを尽くした男。そんな董卓という男に並べられる存在。


そんな男が、今「会議の間」の椅子にどっしりと座った。


「それでは、「階層会議」を始めるとしよう。」


そう低く宣言したアルテン・ヨードルジャフの言葉に続いて、議長が議題を掲げる。


「まずは、階層管理者の皆さんから、ご要望をアルテン バベル総階層管理者(マスター)へ、何か要望はありますか。」


低姿勢で謙虚な質問である。しかし、これはアルテンの毎回の策略であった。

一応でもいいから、話し合いをしたという実績が欲しいのだ。どこまでも姑息である。

各階層管理者がおし黙る。

どうせ言ったらアルテンからの反感を買うことは必至なのだ。誰だって、そんなことをしたくない。




「あの!」


と、末席から1人の手が上がった。


「ひとつ、よろしいでしょうか。」



挙げたのは、50階層管理者、女学生のベリーズであった。














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