第18話・DREAMS COME TRUE? ③
「なんだね?」
途端、アルテン・ヨードルジャフの声が不機嫌なものへと変わった。
以前もこの流れから、とある若い富裕層の階層管理者代理としてやってきた女にうまいことしてやられて、一度だした法を撤回させられたのだ。
周囲が一斉にベリーズの方を向く。
その視線は、半分は哀願の色、もう半分は侮蔑の色を帯びていた。
哀願の方は、
頼むからあの野郎を不機嫌にしないでくれ。
という思いが込められ、
侮蔑の方は、
こんな子供になにができる。
という思いが込められていた。
そんな思いをしってか知らずか、いやおそらく知らないだろうが、物怖じした態度を見せずに、ベリーズは堂々と話し始めた。
「一つ、私の階層である50階層『学校』において、頼みたいことがあります。」
そして、凜とした表情で周りを見回す。その表情は、侮蔑の方の視線を逸らさせるには、充分なものだった。
「よかろう。言ってみろ。」
バベル総階層管理者はそう尊大な態度で返す。
内心は、聞くだけ聞いて、すぐに拒否する気でいっぱいである。受けた屈辱の苦い味でも噛み締めているのだろうか。
ベリーズは充分にタメを作ってから、一際大きい声で切り出した。
「貧民層のこどもたちにも、『学校』に通わせることを許可して下さい。」
「なんでそんなことをしなければならないのかね?」
アルテン・ヨードルジャフはそうせせら笑う。
元々拒否する気でいたが、これでもはや可能性は0に等しいものとなった。
ただでさえ彼は貧しい者が大嫌いである。それは、以前撤回に追い込まれた【身分差分別法】から見ても明らかであった。
ベリーズは、毅然として言う。
「いま、このバベルには夢が見えない。ただでさえこんな状況なのに、こどもまで夢を持つことができないなんて、あんまりじゃないですか。」
ベリーズは続ける。
「『学校』にいけば、やりたいことは必ず見つかる。そして、夢を見つけることができる。貧しいから。裕福だから。夢を持つのにそんなの関係なんてないと思います!」
そう。これが、ベリーズが『学校』の皆に支持された彼女の願いだ。
絶望でいっぱいのコップの中にだって、ひとしずくくらい希望があったっていいじゃないか。
それは、『学校』にいる皆の総意とも言える。
それだけ、こどもたちは希望に飢えていた。
周りのあまりの希望の少なさに飢えていた。
差別なんてくだらない。
夢を持つこどもは、身分関係なく自分たちの仲間。
そんな思いをぶつけるかのように、ベリーズは、思いの丈を吐きだした。
アルテン・ヨードルジャフはいらついたような顔をして、後ろに控えるものになにごとかを言った。
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「…いま、なんて言った?」
アスカがそう聞き返す。
「ベリーズが『軍隊』に拘束されたらしい。なんでも、バベル総階層管理者に不敬なことをしたと、『軍隊』の奴は言っていた…。くっそ、あのベリーズがそんな軽薄なことするわけ無い!」
そうアスカに伝えに来た男子は言う。
今は、この話題で『学校』はどうやら持ちきりらしい。
行動力があることで評判のアスカも、流石に『軍隊』と直接矛を交えることはできなかった。
逆らえば、助け出すこともできずに自分も拘束されてしまうからだ。何よりも、バベル唯一の教育機関である『学校』を、潰させたくはなかった。そんなこと、ベリーズも望んでいないはずである。
「無事でいてよ…。ベリーズ…。」
今の彼女にできることは、ベリーズの無事を信じひたすら祈りを捧げることしかなかった。
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ひどい頭痛がする。
あれ、私なんでこんなところにいるんだ?
たしか「階層会議」に参加してたはずなんだけど…。
………いや、思い出して来た。バベル総階層管理者に不敬だとかいうせいで「階層会議」中に無理やり『軍隊』に連れ出されたんだ。
……私の提案はどうなったの!?こんなところにいてられない!戻らなきゃ!!
そうして改めて周りを見たベリーズは、今の自分のいるところを知る。1階層、『処理場』。
バベルの「不要なもの」がすべて集まるところである。
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