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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
14/40

第14話・HERO ④

「HERO」編、完結です。

(さて…、急がなくては…。)


部屋を出て、リーメイは少女を背中に乗せ走る。


「つっ!!」


突然、リーメイはその足を止めた。


行くときには通ってきた道が、 " 外の空気 " で充満していた。


「道を変えるよ。君の方がここの中慣れていると思うから、案内を手伝ってくれると嬉しい。」


「うん、わかった!」


リーメイは踵を返した。

少女の指示通りに廊下を走る。


「つぎ、ひだり!」


「了解!!」


数回折れ曲がった後、またもや目の前を白い靄がかかっていた。


「ここもハズレだ!他にまだ道はない?」


「あとこっちにいっぽんだけ!うらぐちがあるの!」


(そこが最後か…。頼む…。)


リーメイは希望をこめて、少女に指示された方へと走る。


「そこをまがれば、うらぐち!」


「わかった!」


リーメイは角を曲がった。


しかし、その目の前には先ほどと同じような白い靄がかかっていた。

" 外の空気 " は完全にこの施設内部の壁沿いに充満してしまったようである。


「なんで…?せっかくすぐそこがでくちなのに…。」


少女ががっくしとなって掴んでいた手を緩める。


「まだ諦めちゃダメだ!」


「でも…、もうこれいじょうは…。うぅっ…。」


再び泣き始める少女。



そんな少女をリーメイは一旦降ろし、少女の目の前に、酸素吸入器を差し出した。


「………え?」


無言でそれをリーメイはつけさせる。


そして、肩にまた少女をのせ、がっちりと少女の体を固定する。


少女が自分で酸素吸入器を外さないように。


そして、何か叫ぶ少女を尻目に、リーメイは呟く。


「ヒーロー。ヒーロー。皆を救う正義の味方。」


そして、白い靄の中に突っ込んでいった________




---------------------




「ようやくお前と酒を飲めたよ。まだお前は未成年だったからなあ。こうして酌み交わせて嬉しいよ。」


17階層南東、『墓地』。そこで男はとある墓に酒を手向けて語り続ける。


「…なあ、知ってるか、リーメイ。あの施設は上官の野郎が、『食糧庫』に働き手を斡旋して、旨味を得るクソみたいなところだったぞ。小さいこどものころから教育を続けて有能な働き手にしようとしてたんだ。あんなやつの尻拭いにお前は…。

でもお前はそんなこと思ってないか。あの子の命を助ける一心だったからな…。

なんてったって、お前はあの施設から脱出した後、意識を失う直前にいった言葉が、



『あの子…は…無事…ですか…?』



だもんな。




その時のお前の姿は…、








ヒーローだったぜ。」



そう言うと、ベルダンディは、一粒涙を零す。


墓のそばに置かれたヒーローフィギュアは、

何故だかいつもよりキラキラと輝いているようだった。





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