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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
11/40

第11話・HERO ①

新編開始です!


古ぼけた、汚れだらけのひとつのフィギュア。


鮮やかな赤い色のコスチュームで全身を包んでいる。


必殺技を出している姿であろうか。


その人形は、少年の憧れであった________




---------------------ー




「新人!腰の高さがまだ甘いぞ!そんなんでバベルの治安を守れるとおもっとるのか!」


80階層の端にある、『軍隊』修練場に、教官の怒声が響く。


パク・リーメイは歯を必死に食いしばって、自らの腕にかかる自重を耐える。

その重さに耐えながら、リーメイは、『軍隊』を志した理由を思い出していた。




全ての始まりは、小さい頃『処理場』で偶然見つけた古いフィギュア。

なぜかよくわからないが、古ぼけているのに、そのフィギュアが放つ圧倒的オーラが気になってしまったリーメイはそれを持ち帰り、このフィギュアは何なのかと、街の物知りの老人に聞いてみることにした。

老人は、


「それは、戦争前にあったニホンという国で見られた、ヒーローのフィギュアじゃ。」


と答えた。


ヒーローとは何かとリーメイが続けて問うと、その老人は僅かに考えた後、ニヤリと笑ってこう答えた。


「皆を救う、正義の味方じゃよ。」


悪戯っぽくそう言う老人であったが、リーメイの心は強く動かされていた。


ヒーロー。ヒーロー。皆を救う正義の味方。


リーメイは心の中で何度も呟く。


ヒーロー。ヒーロー。皆を救う正義の味方。


なんてかっこいい。

リーメイはそう思ってしまった。いや、思わざるを得なかった運命だったのかもしれない。

以来、リーメイの夢はヒーローになることでいつも同じだった。


皆を救うためには力をつけないと。

皆を救うためには心を鍛えないと。


リーメイは、1人鍛錬に励んだ。

階層階段を登り降りして足腰を強くした。

『食糧庫』で手伝いを申し入れ、重い麻袋を誰よりも運んだ。

階層を一周するランニングもした。

なにそれが鍛えるのにいいと聞くやいなやその日のうちにはそれを試した。


全てはヒーローになるために。


15歳になると、彼は『軍隊』に入りたいと願うようになった。

『軍隊』がバベルの人々を守っていると聞いたからだ。

訓練は厳しいと聞かされていたが、リーメイは迷う事なく入隊届を90階層にまでだしにいった。

古ぼけたフィギュアを脇に隠しながら。


そして、本望どおりに入隊が認められた後、まず始めに待っていたのは新人訓練であった。

その訓練に参加すると、やはりそれはかなりの厳しさだった。

自己流でやっていた鍛錬とは比べ物にならない。しかし、リーメイは必死に食らいついた。

泣き言を言いたくても我慢をした。


苦しい時は、あの言葉を呟いて。


ヒーロー。ヒーロー。皆を救う正義の味方。


リーメイの心技体は、訓練をすることで飛躍的に向上した。


そんな訓練を続けてきて、来週で1ヶ月。

ようやく、正式に『軍隊』本隊へ合流することができる日となった。

リーメイは湧き上がる喜びの熱で、心の高ぶりを抑えることはできなかった。


やっと目標に辿り着ける。

やっと正義の味方になれる。


リーメイは、そう思っていた。
















待っていたのは、絶望だった。





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