第12話・HERO ②
遅くなって申し訳有りません!!
無辜の民を暴力で支配。
質問に答えない者には拷問。
気に入らないから逮捕。
リーメイは、我慢がならなかった。
これは、『軍隊』本隊に合流した後、衛兵として派遣された32階層で、1ヶ月の間に『軍隊』が行ったことである。
リーメイは上官に抗議した。
「これが『軍隊』が本当にやらなくてはいけないものなんですか!?」
「まあまあ、落ち着きたまえ。我々はこのバベルの治安を守っている、人々にとっては砦のような存在なんだ。多少強権的にしないと、すぐにでもその秩序が乱れてしまう。
これは、必要悪なんだよ、リーメイ君。」
「…………。」
リーメイは反吐が出そうだった。
何が必要悪だ。
お前なんかが正義を語るな。
リーメイは、怒りを押し殺して上官室からでる。
「よー、リーメイ、また上官に抗議かい?」
出て少し歩くと、廊下の奥の方から、見知った声がリーメイに届いた。
彼の名前は、ベルダンディ。
リーメイより20も上の先輩で、リーメイのことをまるで弟のように可愛がってくれている、頼れる男だ。
「ベルダンディさん…僕はもう何が正義なのかわからなくなってきてしまいましたよ…。」
リーメイは、心の内を吐きだす。
ベルダンディは、数少ないリーメイの理解者でもあった。
「正義か…。確かに難しい問題だな。」
ベルダンディはそう考え込む。
「…俺が思うに、正義ってものは、必ず色眼鏡をかけて見るものだ。一方から見れば素晴らしいことのように見えるが、他方から見れば極悪非道の行いのようにも見える。
例えば、戦争で敵国で、獅子奮迅の活躍をして、戦争を終えて自国の被害を減らした英雄だとその国では賞賛されても、敵国では家族を殺した大罪人だろ?
それくらい正義と悪っつーのは表裏一体なんだよ。あの上官のやろうがやってることは俺も気にくわない。しかし、確かにこの階層の犯罪数も減っていることも事実だ。」
「そういうものなんですかね…。」
ベルダンディに話を聞いても、リーメイのモヤモヤは晴れなかった。ますます混沌に入った気配さえある。
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ベルダンディにお礼を言って別れたその日の夜、リーメイは1人『処理場』にいた。
かつて、あのフィギュアを見つけたところである。
薄暗闇の中、1人ベンチに座る。
リーメイは考える。
しかし、考えれば考えるほどに思考は泥沼へと向かっていく。
ふと、懐にあるフィギュアをリーメイはとりだす。
「ヒーロー、ヒーロー、皆を救う正義の味方。」
開いた口から漏れた言葉は、いつの日か、老人から聞いた言葉であった。これはリーメイの口癖になりつつある。
「ヒーロー、ヒーロー、皆を救う正義の味方。」
リーメイは呟き続ける。
「ヒーロー、ヒーロー、皆を救う正義の味方。」
ふと、リーメイは思った。
このヒーローも、今の自分のような葛藤を抱えていたのだろうかと。
もしかしたら、このヒーローも同じような葛藤をしていたのかもしれない。
でも、もしそうであったとしても、どうして皆を助け続けることができたのか。
この疑問の答えが、僕の葛藤の答えでもあるはずだ。
リーメイはひとつパンッと頬を、自らを鼓舞するように叩くと、白みはじめた階層照明の中、32階層へと戻っていった。
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