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悪役令嬢は既婚者です!? その3

本日3回目の投稿です

「クーレイア! 今をもって君との婚姻を……は、白紙、に、戻……っ……戻、す……っ!!」


 ……ああ、ついに終わった。

 ヒースと王太子殿下を含む卒業生の為の卒業パーティーで、最後の断罪イベントが起こった。

 ……ヒースは、余程今の台詞を口にしたくなかったんだろう。

 初めて口調が乱れ、目は悔し涙で潤んでいる。

 ……大丈夫、ヒース。

 きっとこれで、終わりだから。


「……承知致しました。それに関しては受け入れましょう。……けれど、私はその方に非道な振る舞いなど何一つしてはおりません。せいぜい、常識に基づいた問いかけをしたくらいですわ。その事だけは、はっきりと申し上げておきます。……では、ごきげんよう」


 私は大丈夫だと伝わるよう、ヒースに柔らかく微笑んでそう口にすると、くるりと踵を返し会場の出口へと向かう。

 事情を何も知らない周囲からすれば、私の表情と口にした台詞にちぐはぐさを感じ、違和感を覚えるだろう。

 でも、それでいい。

 明日になればきっと全てが元通りになって、詳しい事はわからないまでも何かしらの事情があったのだと納得するだろうから。

 今はヒースを少しでも安心させる事が何より重要だ。

 会場から廊下へと一歩出て、どうしても気になってちらりとヒースを振り返る。

 すると、ヒースとヒロインが抱き締め合っているのが見えた。

 ……ああ、振り返るんじゃなかったな。

 即座にそう後悔して視線を逸らし、家へ帰ろうと再び足を踏み出す。

 ……ああ、でも、帰るのは、メイローン家でいいのだろうか?

 本心ではないとはいえ、ヒースには婚姻を白紙に戻すと言われたわけだし……今日の所は、ショーヤーン家に帰るべきだろうか?

 でも、自由になったヒースが帰った時に私が家にいなければ、ヒースは傷つき悲しむかもしれないし…………う~ん、これは、事前にどうするか決めておくべきだったかもしれない。


「クー……ッ……クーーー!!!」

「え?」


 そんな事を考えながら歩いていると、ふいに私を呼ぶ声がして、次の瞬間、背後から強く抱き締められた。

 驚いて見上げれば、そこには泣き笑いを浮かべたヒースの姿があって。


「クーが会場から消えた後、急に身体が動くようになったんだ……! すぐにあの女を突き飛ばして大嫌いだって言ってやった! あの女は殿下に命じられた近衛騎士に連れて行かれたよ!! 男爵の悪事と共に裁かれる!! だからもう大丈夫だ!! クー、愛してる!! 俺はクーだけを愛してる!! さっきの言葉は撤回する、俺と一緒に家に帰ろう!!」

「ヒース……」


 ……えっと、えっと?

 何だろう、ヒロインはきっと悪くないとか、男爵の悪事ってどういう事とか、言わなければならない事も聞きたい事も今の台詞の中にあるのに、どうしてか考えが纏まらない。

 まだ日は高いのに、ヒースの腕の中にいる、その事実が堪らなく嬉しい。

 ……ああ、いいや、ヒロインの件は後回しで。

 今はただ素直にこの喜びに浸っていたい。


「良かった……ヒース。……私も、貴方を、貴方だけを愛してる……!!」

おしまい

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