11 お昼休憩
1日に2連チャン投稿とか初めてな気がします……
続いて行われた1年生と2年生の二人三脚が終わると、いよいよお昼休憩に入った。
ぞろぞろと団体が移動していくなかで、コノハは少し道をそれてトイレへ向かった。
休憩に入ったせいもあってかトイレは物凄く混み合っている。待つのは苦手だがしょうがない。コノハはため息をついた。
こんなことになるのなら、もうちょっと早いうちに済ませておくんだった。
列はまだまだ長い。
生徒や教師だけでなく、父兄もまざっているのだから当然か。
コノハも一応母親を誘ってはみた。来るかどうかはわからない。とりあえず体育祭のお知らせが書かれた手紙を渡して、日時を教えただけだ。
いつもの母だったら「学校は勉強するための場所。運動会とか文化祭とか、くだらない」なんて一蹴してきたけれど、今回は何も言ってこなかった。
あの5月の日以来、少しは変わったのだろうか。
コノハも自分が変わっていることを実感する。前よりイライラしなくなったし、自分に余裕が持てるようになった。今度千ノ原と雨宮と一緒にショッピングへ行く予定だ。ちょっとそれが楽しみ。
トイレの列はなかなか進まない。
コノハはいよいよあきらめて道を引き返した。校舎へ向かうことにする。
もうすでにクラスメイトたちは教室に帰っているはずだ。
午後のプログラムは、まずお昼が終わったら応援合戦。コノハはそのあと借り物競争にでることになっている。
借り物競争は毎年お題が鬼畜すぎると話題で誰も参加したがらないのだが、別にコノハは気にしていない。「教頭先生のカツラ」を引き当てたときも、普通に回避した。
むしろ今年は何がでてくるのだろうか、と今からちょっとわくわくしている。
中庭を抜けた方が教室への近道になるため、そちらへ歩いていると「ねえ」と声が聞こえた。
思わず振り返る。
「あ……」
そこに立っていたのは着物の子どもだった。
海が運ばれた病院で会った、あの加藤雪にそっくりな。
とはいえ、子どもとは言ってもおそらくコノハとあまり歳も変わらないだろう。しかし少年なのか、少女なのか判断がつかない。だからどう形容すればいいのか、コノハにはわからなかった。
子どもは一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。その履き物は下駄だ。着物と相性はいいだろうが、この場所にはなんとも不釣り合いな。
「ちょっと、質問があるんだけどさ」
初めて話しかけられた。その話しかけ方はまるで、雪を思わせる。
「あたしも、あんたに聞きたいことがあったのよね」
思わずこちらからも話しかけていた。
「そう? でも私のほうが早かったから、私からでいいかしら」
女の子なのか。
まあ顔が中性的でも、着ている着物は派手だし女といわれたらうなずける。
雪を女の子にしたみたいな子だ。
「どうぞ」
「ありがとう」
子どもは笑う。まるで温かな日の光が差してしまえば、あっという間に解けてしまうような儚い笑い方だった。
子どもは問いかける。
「キミ、永井コノハさん?」
「っ、どうして」
どうして名前を知っているの?
思わず警戒してしまう。あたりまえだ。まだ出会ってこれで二度目。それなのに名前を知っているなんて。
あるいは、どこかで自分の名前を聞いたのだろうか。
この子は、いったい?
「何してるんだ!」
怒鳴り声がコノハの思考を中断させる。聞こえたのはすぐ近くだ。中庭と校舎を結ぶ通路からこちらに向かって、遠藤海が走ってきている。
彼女はすぐにコノハと子どものあいだに割って入った。まるで子どもからコノハを守るような動きに、コノハはあっけにとられる。
「キミがどうしてここにいる!」
どうやら子どものことを海は知っているらしい。どういう関係なのだろうか。
「別に、なんでもないわよ」
子どもはしらけた面をして、はぁとため息をついてみせた。
「少しは面白いことになるかなと思って、声をかけただけ」
「突然電話で呼び出してきて、何かと思えば!」
「あら? いつまでも電話にでてこない、そっちのせいでしょ? 勝手に人のせいにしないで」
「だったら」
子どもはパンパン、と両手をたたいた。
「この話はいずれまた。あーあ、面白いところだったのに」
気か削がれた、そう言いたげな顔をして子どもはコノハたちに背を向ける。
「じゃあまたね、永井さん」
「っ」
その名前の呼び方はまるで、加藤雪を思わせた。
立ち去る子どもに、コノハは警戒を強くせざるを得なかった。




