第1章 あこがれのお姉さん
ふとしたきっかけですれ違った3学年の先輩。
あたし、結希は、いわゆるトランス女子。ここL女子高校は、あたしのようなトランス女子でも、等しく、女子として扱ってくれる貴重な学校。
自分の身体が、ママやお姉ちゃんみたいに成長しないのを恨めしく思っていた。必死で、女子っぽくなろうと努めた。洋服の着こなしや、髪型など、お姉ちゃんも親切に教えてくれた。ホルモン治療をすれば身体がもっと女子っぽくなるという話も聞いた。でもそれに手を出したら身体がぼろぼろになるとも聞いた。迷っているうちに、自分の身体に、「雄っぽさ」が隠せなくなっているのが、本当に恨めしい。
その3年生の先輩。あたしがこんな女性に成長したいっていう、お手本のような、可愛くてきれいな人だった。一度すれ違っただけで忘れられない。なんていう名前だろう。
1週間後、たまたま学校の玄関で、あこがれのお姉さんとぶつかってしまった。お姉さんの持っていた水筒、蓋の締め方が甘かったようで、あたしのスカートにお茶がかかってしまった。でもぶつかっていったのはあたしの方だったよね....。
「ごめんなさい、うっかり歩いてました。あたしが悪かったんです。気にしないで下さい」
「ううん、さすがにこんなにスカートを汚しちゃったんだもの。あたしの部屋に来ない?アイロンして乾かしてあげるわ」
申し訳なさそうな顔をしたけど、内心はちょっと嬉しかった。あのあこがれのお姉さんと、一緒の時間を過ごせるなんて。
この学校は全寮制で、みな個室を持っている。学年が違うと棟も違うので、行き来することも少ない。
お姉さんは、あたしよりちょっと小柄だけど、二つ上の3年生。お姉さんの部屋で、スカートを脱いだ。
さすがに下着姿になるので、きちんと説明した。
「あの、下着姿になるんですけど。あたしトランス女子なんです。....ごめんなさい」
先輩、ちょっとびっくり顔だった。
「そうなの、びっくりしちゃった。でも、なぜ謝るの?学校の方針はわかっているし、あたしも気にしないわよ。ゆっくりして待ってて!」
先輩は共用の洗面所で軽く洗濯してきたみたい。その間、一人で先輩の部屋で待っていた。きれいでかわいらしいお部屋。あたしも、こんなきれいなお部屋をめざしたいな。
先輩も部屋に戻ってきた。アイロンをかけてくれながら、少し雑談をした。
あこがれの先輩と、二人だけの時間を過ごせた。すごく幸せだった。
名前は由美さん。またどこかで会えたらいいな。




