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呪いを受けた精霊使い、魔法が効かない剛腕少女と旅をしたら世界がバグりはじめた 〜ゼリアス神話〜  作者: 遠崎カヲル
旅のはじまり

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語り終えた夜

「……そういうわけで、俺は有罪の判決を受けた。それは仕方の無い事だと思っている。禁術を使ったのは事実だしな」

 

 シュレムは草の上に寝転がったまま、空を見上げていた。

 

「幽閉が決まってたんだ。神殿の地下に、呪いで死ぬまで」

 

 シュレムは少し間を置いた。

 

「まあ、逃げ出したけどな」

 

 そう言って、力なく笑った。

 

「逃げ出せたのは、マジで幸運だったと思ってる。今でも」

 

 言い終えると、シュレムは遠くを見つめた。

 

「だが、ナタリアの事だけは納得がいってない。証拠は揃いすぎるくらい揃ってた。でも、どうしても納得できないんだ。だから、真実を探したいと思ってる」

 

 サリエナは膝を抱えたまま、シュレムの話を聞いていた。何も言わず、ただそこにいる。視線はどこか定まらず、それでも離れはしなかった。

 

 しばらく、言葉はなかった。虫の声だけがかすかに響き、風が草をやわらかく揺らしている。

 

「話して……少し、楽になった気がする」

 

 シュレムは独り言のように言った。胸の奥にあった重さが、わずかに軽くなっている。

 サリエナがこちらを向いた。

 

「……どう? ごはん、食べれそう?」

 

 シュレムは一瞬、きょとんとした。それから、小さく笑った。

 その言葉が、自分を気遣っているのだと、遅れて理解した。

 

「……ああ、食えそうだ」

 

 起き上がって、膝の土を払う。それから、空気を吸い込むようにして、大きく体を伸ばした。

 

「まずはこの呪いをなんとかしたい。あてにしてる場所があるんだ。癒しの街、ウィンベラルに着けば、手がかりくらいは掴めるかもしれない」

 

 サリエナは小さく頷いた。

 

 シュレムは少し間を置いてから、サリエナを見た。そして、胸に引っかかっていた疑問を口にした。

 

「……お前の、その力はなんだ? 火球を素手で払ったり、あの跳躍だったり。魔法か?」

 

 サリエナは少し考えるような顔をした。

 

「……べつに、普通」

 

「普通?」

 

「昔から、こう」

 

 説明になっていなかった。本当に、それ以上の言葉を持っていないようだ。シュレムは何か言いかけて、やめた。

 

「それより、おなかすいた」

 

 サリエナは、一言そうつぶやいた。

 

「……そうか」

 

 シュレムは立ち上がった。

 

「よし、町に着いたら俺がおごってやる」

 

「うん」

 

 サリエナはあっさり頷いて、先に歩き始めた。シュレムはその後ろ姿を見て、一度だけ小さく笑ってから、歩き出した。

 


 

 街に着いたのは、日が傾き始めた頃だった。

 空はゆっくりと色を変え、建物の影が長く伸びている。往来の人影も少しずつ増え、帰路につく者と、これから動き出す者の流れが混ざり合っていた。

 

 目的地の街まではまだ遠い。今夜はここで休み、明日からまた動くだけだ。昼間のことを思えば、屋根の下で眠れるというだけで、わずかに気が緩む。

 この街には追手の気配はなかった。カイルが直接やってきたということは、シュレムの元いた神殿では、あまり事を公にしたくないのかもしれない。

 

 街の神殿は通常通り機能していた。精霊の明かりがひとつ、またひとつと灯り始める。何もかも普通だった。シュレムには、そう見えた。

 

 二人は食堂に入って席を取った。木のテーブルには細かな傷が刻まれており、使い込まれているのが分かる。

 

「明日、また移動しよう。慎重に動く必要があるが」

 

 シュレムがそう言うと、サリエナは「わかった」と短く答え、すぐにメニューへと視線を落とした。

 

 注文が始まり、サリエナは黙々と食べ続けた。皿が増えていく。

 

「……追加でよろしいですか?」

 

「うん」

 

 さらに追加が来る。皿も増える。

 

「……こちらも、ですか?」

 

「うん」

 

 シュレムは横で見ながら、財布の中身を静かに数えていた。指先で硬貨の枚数を確かめるたびに、現実感が増していく。

 

「……いや、ほんとによく食うな」

 

「動いたから」

 

 サリエナは皿に視線を落としたまま、当然のように言った。店員が小声で「お連れ様、すごい食欲ですね……」と耳打ちする。シュレムは苦笑いで「ああ、まあ……そんな感じだ」と返しながら、もう一度財布を確認した。

 

 旅費の計算を、少し見直す必要があるかもしれない。


 

 

 同じ夜、街の神殿内部では、神官が二人、端末の前で顔を顰めていた。

 

「……おかしいな」

 

「どうした」

 

「ノードの同期が、わずかにズレている」

 

 そう言って一人の神官が首を傾けた。

 

「ノード管理用の魔石はどうだ?」

 

「いまの所問題ない」

 

「だったら誤差だろう。許容範囲内だ」

 

「……そうかもしれないが、最近、各地で同じ報告が上がっている」

 

「……気のせいだろ」

 

 沈黙が落ちた。奥に置かれた結晶が、かすかに揺らいだ。灯りがわずかに揺れ、壁に映る影が一瞬だけ形をかえた。

 

 二人とも、それには気づかなかった。



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※主人公のイメージ画像公開中です

https://kakuyomu.jp/users/dnzk0522/news/2912051598922880701

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