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人喰い天使と異世界征服計画  作者: 甘語ゆうび


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20/21

人類一度は憧れるもの

「えと、その、マトローナ・ペニート、と申します⋯⋯。えと、その、私なんかに、な、なんのご用事でしょうか⋯⋯」


 なんとか聞き取れる程の声量で、マトローナさんは自己紹介をしてくれる。


(声ちっせぇ⋯⋯)


「僕はレレルといいます。そして彼女は、僕のご主人様のバンバ・シャナ。シャナが名前ね」

「ど、どうも⋯⋯」


 マトローナさんの向かって、会釈程度の軽いお辞儀をする。


「マトローナさん、ちょっと調べて欲しいことがあるんですけど、いいですか?」

「えっ、いやぁ⋯⋯」


 マトローナさんは、助けを求めるようにリリさんの方を見たが、彼女はただ笑みを浮かべているだけだった。


「う、うぅ⋯⋯。わ、分かりました⋯⋯。それで、調べて欲しいものとはなんでしょうか」

「その前に一つだけ確認したいんだけど、お金って、必要?」

「い、いえいえそんな!お金を頂けるようなことはしていませんから。お金の心配なら、されなくても大丈夫ですよ」


 マトローナさんのその言葉に、私は安堵する。そして改めて思い知った。人間が外に出ると、金がたくさん飛んでいくということを。


「あ、話遮ってごめん。レレル、話していいよ」


「⋯⋯調べて欲しいことなんですけど、僕にかかっている魔力を調べて欲しいんです」

「魔力?⋯⋯あぁ、確かに、なんか癖のあるものがかかっていますね。けど、呪いの類ではなさそう。⋯⋯一回、抽出して機械に入れて調べてみてもいいですか?」

「え?ちゅ、抽出?魔力を?そんなこと出来るの?」

「僕は別に大丈夫だけど⋯⋯抽出って⋯⋯」


 私と同じ問いをレレルも口にした。素手で掴むことが出来るものとは到底思えないが、この世界ではそんなことが可能なのだろうか。


「まぁまぁ、見ててください。マトローナ・ペニートは、魔法だけは本当に凄いんですから」


 リリさんのその言葉を信じて、私はマトローナさんを見つめた。彼女は、何もない空間から長い杖を取り出し、それをレレルに向けた。


「⋯⋯《ロジック・リマーヴ》」


 マトローナさんがそう唱えた途端、彼女の杖の先から、大きな魔法陣が現れる。そして、レレルの身体からなにかが粒子となり、魔法陣に吸われていった。


「⋯⋯はい、終わりです。ご協力、ありがとうございました」

「あ、いえ。こちらが頼んでいることですから、マトローナさんはお気になさらず」

「そ、そうですか?それじゃ、私は、これを解析機にぶちこんできますので、しばしお待ちを⋯⋯」


 そう言って、マトローナさんは地下へと続く階段を降りて行った。


「すご⋯⋯。ねぇレレル!私もあれやりたい!杖出して、魔法陣展開して、ぶわー!ってやるやつ!私異世界人だから、特別補正とか乗っちゃたりとかするのかな~?ねぇ!マトローナさん戻ってきたらさ、そういうの調べられるか聞いてみようよ!」

「⋯⋯なんか、テンション高いね。シャナ」

「そりゃそうだよ!魔法なんて皆一回は憧れるじゃん!」

「別に⋯⋯」


 随分と冷えた態度に、私は少し悲しくなる。やはり、この世界の人にとって、魔法は存在して当たり前の世界なのだ。


「お待たせしました。解析機に入れてきたので、後は結果を待つだけです。大体三十分くらいかかりますけど、お二人はどうします?」


「マトローナさん!」


「うひゃあい!?」


 私が、マトローナさんの手を勢いよく掴むと、彼女は、返事なのかなんなのか、よく分からないような声を上げた。


「マトローナさん!私魔法使いたいです!どうやったら使えますか!?」

「え⋯⋯?ど、どういうことです?魔力検査は?」

「なんですか?それ」

「え!?え?えっと⋯⋯?」


 マトローナさんは、わけが分からないといった様子で、目をぐるぐるさせている。それを見かねたレレルが、溜息を一つ吐いて、話に入ってきた。


「⋯マトローナさん、この人は異世界から転生してきた異世界人なんです。だから、この世界についても、なにも知らないんですよ。色々バタバタしてて、魔法についてもまともに教えてなくて」

「そうだよ!そういうのって、普通第一に教えるべきじゃない?」

「いやだって、僕は魔法使えるから、別に問題ないだろうし、そう急がなくてもいいかなって」

「問題あるに決まってるでしょバカ!それでマトローナさん!魔力検査ってなんですか?」


 目を輝かせてそう聞けば、マトローナさんは少し困ったように目を泳がせて、口を開いた。


「え、えと、この世界では、産まれた時に全員がやるものなんです。これは、魔力の強さとかじゃなくて、属性を調べる為のものです」

「属性⋯⋯!」


「この世界で産まれる人は皆、なにかしらの属性を持って産まれてきます。それを調べるんです。ちなみに、種類は、炎、水、風、土、光、闇の六種類ありまして、基本的には、そのどれか一つになります。使う魔法も、その属性によって左右されるんです。ちなみに、魔法を覚えるには、属性に合った魔導書と、経験値が必要です。ですが、シャナさんは、属性を決めるところからですね。ちょっとお調べするので、髪の毛を一本頂いてもよろしいでしょうか」

「あ、はい。⋯⋯どうぞ」


 髪の毛を一本毟り取り、マトローナさんに渡す。彼女はそれを大事そうに近くの棚にあった試験管に入れ、また地下へと降りて行ってしまった。


「楽しみだなぁ⋯⋯。あ!産まれた人皆やるってことは、レレルもやったってこと?だとしたら、属性はなんなの?」


「⋯⋯光。だけど、よく使ってるのは、炎の方かな」

「炎?でも、属性は一つのはずじゃ⋯⋯」


「⋯⋯そうだね。一つだったよ」


(だった?)


 不思議な物言いに、私は首を傾げてしまう。レレルはそんな私を見ても、ただ笑って首を傾げるだけだった。


「まぁ、人にはそれぞれ事情があるってことで。機会があったらいつか話すよ。あんまりいい話じゃないけどさ」

「⋯⋯そう。そういうことなら、絶対いつか話してよ。約束ね」

「うん、約束。それを言うなら、シャナもいつか、前世のお話、聞かせてよ。約束したでしょ?」

「え?あー、うん。分かってる。約束ね」


そう言って、私は小指を差し出した。 それを見て、レレルは首を傾げたが、すぐに理解したのか、同じように小指を差し出してくる。そして、私は指を絡めた。


「はい、約束。破ったら針千本飲ますから」

「えぇ?なにその怖い脅し文句⋯⋯」

「前世でそういうのがあったの。だから、そうなりたくなかったら、私が生きているうちにちゃんと話してよね」

「⋯⋯もちろん」


「あの~、お二人共?私もいるんですけど~⋯⋯」


「うわぁ!?」


 リリさんにいきなり声を掛けられ、そんな大声を上げてしまう。


「ごめんなさい。話しかけようと思ったら、二人の世界になっちゃてたから、あんまり話しかけない方がいいのかなぁって」


「いや全然!全然話しかけてもらって大丈夫ですよ!そんな、二人の世界だなんてそんなの無いし。ね!レレル!!」

「えー?僕はシャナと二人きりで話したいからなぁ。他の奴らなんて別に⋯⋯」

「なんでアンタはそういうことを言うわけ~⋯⋯?」


 私がそう怒りに震えているのと同時に、階段の方から誰かが上がってくるかのような足音が聞こえてきた。


「シャナさーん。魔力検査終わりましたよ~」

「あ、マトローナさん!」


 私は、レレルから逃げるように、マトローナさんの方へと走っていく。


「ど、どうでしたか?」


「⋯⋯結果をお知らせする前に、一つ確認したいことがあります。⋯⋯シャナさんは、異世界から転生してきた。つまり、前の世界で死亡した、という認識でいいんですよね?」

「え?は、はい。そうですけど⋯⋯」


「⋯⋯瞳の罰印が付いた転生者、ですか」


「ま、マトローナさん?」


 不穏な空気を纏った彼女に、私は立ち竦んでしまう。一体、どんな結果が出たというのあだろうか。


「⋯⋯シャナさん。ここから先は、どうか慎重に言葉を選んでください。でないと、私は王宮に仕える六大魔導士として、貴女を処罰しないといけなくなる」


「え?しょ、処罰?」


「⋯⋯結論からお伝えしましょう。シャナさん。貴女の属性は、厄と出ました。遠い遠い神話の世界の──魔王と同じものです」

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