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旧プロトコルの同行者  作者: 八四一 十々
第1章 最初の人間
20/23

第20話 悪夢

ヒツヤは自室のベッドの上で横になりながら今日を振り返っていた。


そこへシエルがやってきた。スーツ姿でトレーニングをしていたようだ。


「あれ、シエル、トレーニングをしてたんじゃないの?」


ヒツヤは質問する。


「ちょっといいかな」


シエルはニヤッとした。気がつくとシエルはヒツヤの手を引っ張り、部屋から連れ出していた。


「どうしたの。私スーツきてないし一緒にトレーニングはできないよ」


するとシエルは無言のままエンテレキアを飛び出す。


「ちょっと、どこ行くの?」


ヒツヤは戸惑いながら尋ねるも、シエルは相変わらず何も答えない。

やがて2人は人気の少ない公園にやってきた。いくつかの街頭が公園を照らし、ところどころが明るい。

シエルは芝生の上でようやく止まった。


「シエル、どうしたの?なんだか怖いよ...」


ヒツヤは不安な表情を見せると、シエルはやっと口を開いた。


「ごめんね、いきなりここに連れてきて。ちょっとヒツヤに用があって...」


シエルはヒツヤの手を離さないまま不審な笑みを浮かべている。


「用って...?」


ヒツヤは少し後ずさりしながら用を尋ねる。


「人間だった頃……覚えてる?」


あまりにも不気味なトーンで喋り、ヒツヤを見つめている。

すると、突然シエルはミラージュブレイドをヒツヤに向かって振りかざしたのだ。


「……っ!」


気づいたヒツヤは咄嗟に両手を前に出す。その瞬間、


「カンッ!」


誰かがその場に乱入し、シエルの持っていたミラージュブレイドを跳ね飛ばした。

シエルは舌打ちし、ゆっくりと振り返る。


「鬱陶しい……本当に覚醒者というものは」


「お取り込み中だったかな?申し訳ないが、シエルとヒツヤは私たちのものだ」


そこにはスーツを着たリオが少し怒った表情をしていた。


「リオさん!」


ヒツヤは少し気が抜けた。


「操られてることは百も承知か。もう僕が誰だかわかるよね」


シエルは不気味な笑い方をする。


「カルネア...!」


ヒツヤは低い声でカルネアの名前を叫ぶ。

夜風が辺りの草木を揺らしている。


(この声が聞こえた者へ。今すぐ公園から離れよ。繰り返す。今すぐ公園から離れよ)


リオは周りに共鳴波を出した。

途端にサイレンが鳴り響く。


「あーあ。通報されちゃった。早く終わらせないとねー」


カルネアはリオに向かって勢いよく飛び出す。

空気が裂かれるような音がする。

リオは刃が当たる寸前で回避する。


(コイツ、速い...シエルの俊敏さを利用されている...行動は読めるが身体が追いつかない...)


カルネアは連続で攻撃を仕掛ける。リオは反撃出来ず、受けにまわることしかできない。


「大丈夫か、リオ、アーク、シエル!」


するとそこにアークが到着する。

ヒツヤの傍に着地すると、ヒツヤがアークに必死に訴える。


「アーク!シエルがカルネアに操られてる!」


「何だと、シエルが...どうして」


アークも戦いに参戦する。

カルネアは背後から迫っているアークに気づき、空中に身を躱して攻撃を回避する。


「君たちの事は昔からよく知っているよ。散々相手にしてきたからね。でもここまでは強くなかったな。短期間でこんなにも成長したね!凄いよ。だからここで一つ問おう。」


カルネアは微笑みながら話す。


「潔くヒツヤのコアメモリを渡せばこの子のコアメモリを大人しく返そう。でなければコアメモリを破壊する」


カルネアは勝ち誇ったような表情を顔に貼り付け、コアメモリを手で撫で回している。


「くそっ、これでは人質に攻撃されているようなものではないか」


リオは頭を回転させる。

すると、カルネアは不気味な笑顔を見せる。


「覚醒者は邪魔だな。次に動いたらコアメモリを壊す。それが嫌ならそこを動くな」


「リオさん!」


ヒツヤは焦ったように叫んだ。

その時には既にカルネアは飛び出していた。シエルのミラージュブレイドがリオのコアメモリに向かう。


「クソっ...どうすれば...」


リオは迷った。

その場で動けなくなってしまう。刃がリオに刺さるその時...


「……っ!」


切られたスーツの布が宙に浮く。

アークがリオを庇ったのだ。


「アーク、なんで...」


リオは恐る恐るアークの左腹を見た。

瞬間、言葉が出なくなってしまった。


「そん……な」


ヒツヤの目にその光景が焼き付いた。

体のそこから怒りが煮えくり返り、同時に胸の奥が苦しくなって声がでなくなる。


「はぁ...はぁ...」


自身の呼吸音が鮮明に聞こえる。そのままヒツヤの体は無意識に動き出し、武器もない、無防備の状態でカルネアへと突っ走る。


「やめろ、ヒツヤ。装備をしていないお前じゃどうにもならない。もういいんだ」


冷静に話すアーク。

ゆっくりと立ち上がるリオ。

その空間は絶望的だった。

カルネアは睨んでいるリオを見て挑発する。


「どうしたんだ?もしかして怒っているのか?面白い!誰を模倣したんだぁ?」


カルネアは両手を広げで夜空を見上げる。

月明かりが公園全体を照らしている。


「ヒツヤ、動くな。お前は狙われてる。こいつは私が何とかする。」


ヒツヤは高まった感情を抑えて立ち止まった。

リオは冷静に構えつつも、目からは涙が溢れていた。そんな姿を見てカルネアは話す。


「あー気持ち悪い。涙なんか出すなよ。反吐が出る」


リオはカルネアの話を遮るように飛び出し、カルネアに向かっていった。

その瞬間、カルネアの様子が一変する。


「どうしたの...やめてよ、リオ。そんな怖い顔しないでよ...」


シエルは泣きそうな顔でリオを見つめた。

リオは目を大きくし、その愛らしい顔を見つめた。

手を止める。

リオは悟った。こいつは人間では無いと。

すかさずカルネアはリオのコアメモリを貫通する。


「私は弱くなったな」


リオはゆっくりと後ずさりする。


「リオさん!」


ヒツヤは叫ぶ。


「いや、まだだ!」


リオは刺されながらもカルネアを取り押さえようとした。

アークも駆け寄り、コアメモリを奪おうと服に手を伸ばす。しかし、カルネアは二人をはらい除けてしまう。

アークにミラージュブレイドを振りかざす。


「ここまでか...」


次の瞬間、カルネアの斬撃はアークの首を跳ね飛ばした。

アークの首は高く飛び、地面に転がった。

切断面は焼けるようにオレンジ色になっていて、徐々に冷めるようにもとの色に戻っていく。

頭はヒツヤの足元へと転がっていき、彼女は思わず腰が抜けてしまった。

アークの表情は真顔だった。まるで魂がこもってないかのように。


「えっ……」


ヒツヤは絶句した。恐怖と憎悪が同時にヒツヤを襲っていたのだ。


「よし、片付いたな。さて、目的のものを回収するか」


カルネアがヒツヤのもとへ歩く。


「待てよ……」


リオが這いつくばりながらカルネアの足首を必死に掴む。


「なんでそこまでするの?もう君は助からないのに、なんで...」


カルネアは不思議そうな顔でリオを見下ろす。


「なんで、か。この気持ちがわからないなんて、お前はやっぱり人間じゃないな」


リオは下からカルネアを睨みつける。


「ふーん。そうか」


カルネアは低い声を出した。月明かりの陰でカルネアの表情がよく見えない。

その瞬間、リオの体をバラバラに切り刻まれた。


「もういいよ。一刻も早く消えてくれ」


スーツの刺繍の残骸が辺りに舞っている。

バラバラになったリオは微動だにしなかった。

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