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第73話「穴から出た熊」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。

 世界最長の川、ナイル。

 そのナイル川には、幾つかの中洲が点在しており、雅たちが一時避難したエジプト考古学博物館の西側にも、川を挟んで5平方キロメートルほどの大きさのゲズィーラ島という名の中洲が在った。


 雅が此処を選んだのには、理由わけが在る。

 考古学博物館を背にすれば敵の攻撃は前方のみとなり、ナイル川の方へ盾を構えれば、遠方から狙撃がされ難いと判断したからだ。

 また、ゲズィーラ島には高い建物が在るものの、そこから隠れて狙撃しようとしても、川沿いに在る背の高いホテルが邪魔をして狙えない。

 さらに島の南部は、大学の敷地になっていて、校舎の他にもサッカー場やテニス場など、多種のスポーツ競技場が多く、博物館西側の直線上に、隠れて狙撃できる高い建物といえば、カイロタワーのみだった。

 しかし、平均15mほどのGTMが、物音一つ立てずに、狙える場所まで近づくことは不可能で、不用意に近づいて来たGTMは、ことごとく、飛鳥に墜とされていった。


 狙われ難いと判断したそんな場所で、雅は作戦を練り直す。


「この戦場で、レベルアップは期待できそうにないわね」


 そう雅がこぼし、紗奈もそれに同調する。


「そうね、10分間、生き残ることを考えた方が良さそうね」


「こ、これから、どうするんですか?」


 美羽の不安そうな言葉に、雅はリーダーらしく、新しい作戦を告げる。


「できるだけ、固まって行動しましょう。私が先行するから、みんなは着いて来て。ポジション的には、後衛を紗奈、左翼は南城さん、右翼は安西さんでお願いね」


「アタシは?」


「飛鳥は、アタシたちの周りで自由にやりなさい。ただし、500m以上離れないように」


「らじゃ!」


「それじゃ、行くわよ! もし、墜とされたとしても、再ログインはしないように!」



 そんな雅たちがログインしたカイロで、サバイバルゲームに参加しているチームは3つ在った。

 それぞれ、20名ずつの計60名が、殲滅戦を行っている。

 このサバイバルゲームの参加資格は、100万ENを支払える者で、参加者全員の同意が得られれば、チームの人数を合わせなくてもいい。

 勝敗の決め方は、終了後の生存人数になることから、少数が不利であるものの、チームの人数が少ないほど、優勝の際に得られる賞金は多くなる。

 例えば、Aチームの参加者が10人、Bチームが20人、Cチームが30人で、優勝がAチームだった場合、BとCの合計金額5000万ENを10人で分けることになるのだ。

 賞金は少なくなるものの、やはり多勢の方が圧倒的に有利で、プレイ時間中ずっと逃げ廻る事もOKとされていた。

 しかし、定められたエリア外へ逃げることは禁止されており、生き残った者は移動経路をのちに検証され、エリア外への逃亡が確認されると、その者は失格となる。

 それは、例え最後の一人であったとしても、プレイ時間内にエリア外へ出れば失格となり、その場合、次の生き残り、もしくは、その前に撃墜された者のチームが優勝となってしまう。

 開始から終了まで、どのチームが何人残っているか判らないスリルを味わいながら戦い、プレイ時間終了の20分後に、優勝チームが発表される。

 それはまるで、宝クジの当選番号を待つような気分だった。


「10分経過。現在、我々Aチームの生き残りは……12名です」


 このサバイバルゲームをシナンたちがやり始めた頃は、固定チーム同士での対戦だった。

 当初は、チームケルベロスやサラマンダーズなど、各自でチーム名を付けていたのだが、所属しているプロの数であったり、時差による不参加など、色々な事情が重なって、チーム毎で参加者を募ること自体に無理が出るようになった。

 そんな問題が続いた結果、現在では集まった者たちだけでチーム編成をするようになり、今ではチーム名を付けることを止め、チーム名はアルファベットで呼ぶようになっていた。


「回線が切断されたことから、先遣隊アタッカー狙撃隊スナイパーが全滅しています」


 リアルを楽しむ為に、撃墜された者からの連絡を受け付けないようにしていた。


先遣隊アタッカー狙撃隊スナイパーが!?」


 先遣隊とは、敵チームの拠点を探したり、誘い出しをしたり、罠を仕掛けたりなど、攻撃の起点をになっている。

 狙撃隊とは、先遣隊から一定の距離を開けて移動し、先遣隊によってあぶり出された敵を撃墜する役割だった。


「はい。撃墜される直前のオペレーターからの連絡によると、全員カイロで、赤い機体に墜とされたそうです」


 先遣隊と狙撃隊が全滅したことに、シナンは驚きを隠せなかった。

 この二つの班は、参加者の中でも比較的ランクの高い者たちで、構成されていたからである。

 そもそも、100万ENをポンと支払えるプロは少なく、誘っても300位以下が参加する事はなかったのだ。


「運が悪いとは、思えんな。BとCに、赤い機体乗りは居たか?」


「Bチームに1機、Cに2機ですね」


 ほとんどが、いつものメンバーだった。

 ランク上位者だが、8機を10分以内となると……、

 そこまでのプレイヤーなら、チーム分けの際に、気づいてた筈だ。

 キング(32位以内)かクイーン(64位以内)が、此処へ来たのか?


「カイロに、何が居るんだ……已むを得ん、アナグマを崩すか……」


 シナンが得意としていた戦法アナグマとは、将棋からヒントを得た陣形で、先遣隊アタッカー狙撃隊スナイパーが拠点まで誘い込み、エリア外となる地中海を背にして、防御隊ディフェンダーのGTRで前方のガードを固め、その隙間から狙撃するというものだった。


 アレクサンドリアに居たシナンたちは、デザートロード(75号線)を南下して、カイロへと向かう。

 シェイクザイードシティに差し掛かった所で、シナンはその先で暴れる赤いGTX1000を目撃する。


「あれは……シリアルキラーか! 不味い! 全員、ゆっくり後退し、アレクサンドリアに戻るぞ!」


 対戦してみたい気持ちはあるが、今はサバイバルゲーム中。

 あと14分、凌ぐことの方が優先だ!



「75号線に、12機のGTM集団を発見! そこから、北へ50kmの地点です。GTX650が居ることから、シナンのAチームだと思われます」


「珍しいな、穴から熊が出てきたか。オペレーター、コチラの数は?」


「先遣隊と合わせて、17です」


「よし、出るぞ! 先遣隊は、そこで待機!」


 アルファイユームの北西に在る湖、ファイユームオアシスに潜んでいたラムジ率いるBチームは、デザートロードに向かう。


「Aチーム、ゆっくりと後退して行きます!」


「なに!? 気づかれたか! 一気に詰め寄るぞ!」


 シナン、穴には帰さん!


読んでくれて、ありがとう。

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