第69話「初陣」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018年9月1日 13時半 修正。
「3階より上は、一般人は入れないようになってるから、まずは受付へ」
マリアに導かれ、3階に在るという受付へ向かうと、そこに待っていたのは、美しい受付嬢ではなく、屈強な5名の男たちだった。
受付まで来るなり、マリアは真ん中に座る黒人男性に声を掛ける。
「ケイン、5人の可愛いお客様を連れて来たから、許可をお願いね」
「了解」と言って、微笑み親指を立てるケイン。
「ここでも、日本語!」と驚いた紬に、マリアは優しい口調で答える。
「インベイドの……隣のゴーゴルでもそうなんだけど、公用語は日本語にしてるの。だからといって、母国語を禁止するようなことはしてないけどね」
「どうして、日本語を選択してるんですか? 英語、もしくは、中国語の方がビジネスチャンスがあるって聞きますけど」
「サナ、それはもう時代遅れと言っても良いわ。今の時代、自動翻訳機が在るから、敢えて公用語を設定する必要は無いの。でもね、ウチも隣もそうなんだけど、社員がグローバルだから、雇ってない人種は無いと言っても過言じゃないのね。そんな中で、多数の英語を選ぶより、平仮名、片仮名、漢字、ローマ字、時には、英語やドイツ語なんかを上手く取り入れ来た日本語は、自由度が高い言語と言えるわ。だから、それぞれの母国語を大切にしながら、共通で日本語を使っているってことなの」
「なるほど、勉強になりました」と、紬は敬礼する。
それを微笑みながら「そろそろ、受付をしてもよろしいかな?」と、ケインが告げる。
「あ、ごめんなさい、ケイン。よろしくね」
「それでは改めて、いらっしゃいませ。みんなさんのスマートフォンは、ゴーゴル社製ですか?」
「はい」
「それなら楽だ。では、この機械にスマートフォンを翳すだけでOKです。絶対にスマートフォンを無くさないでくださいね。そうでないと、受付証明の無い人間は、各階に居るガードマンに、不審者として、すぐに取り押さえられますからね」
声を張って笑うケインに手を振って、受付を済ませた部員たちは、その奥にあった自動ドアを抜け、更に奥に進んでエレベーターに乗り込んだ。
「まずは、現行機が置いてある4階に行きます」
エレベーターのドアが開くと、そこに現れた光景に、桃李成蹊女学院ゲーム部員たちは圧倒される。
そこには、まるでデータセンターのサーバのように、数え切れないほど筐体が綺麗に並べられていたからだ。
「うわぁ、こんなに……何台あるんですか?」と、美羽が問い掛ける。
「此処には、現行のイプシロン、つまり、シリアルではなく、一般機が5列20台ずつで、100台設置してあるの。主に、デバッグやテストプレイとして使用しているの。それでは、みんなには、此処で30分プレイして頂きます」
「え? アタシたちも?」
「そうよ、ツグミ。それじゃ、トーマからメッセージが来てるから、読むわね」
4階でオペレーターたちにも、ドライバーの体験をしてもらう。
機体を選んだのち、全員、同じ場所へログインすること。
そして、みんな、国は違うだろうが、5人で行動し、助け合って、レベルを上げて行くように。
以上だ。
「それでは、みんな、筐体に乗り込んで」と、言ったマリアを制し、雅が手を叩く。
「その前に、作戦会議をするので集まって」
そう言うと、雅はスマートフォンを開き、インベイドのアプリを起動させ、現在の戦況を確認する。
他の者も、それに合わせ、起動させる。
「人が、そこそこ多くて混乱してなさそうな戦場は……」
「エジプトは、どう?」と、紗奈が提案する。
「う~ん? そうね、人数的には良さそうだけど、やっぱり隠れられる場所が在った方が良いわね」
「上海なんか、どうですか?」
「うん、良い感じね、上海にしましょう」
美羽の提案を受け、戦場は上海で決定する。
「まず、飛鳥から。飛鳥が先行して、群集に飛び込む。だけど、他のみんなのレベルを上げたいから、倒すことより、混乱させることを目的にしてね。十分に混乱させたら、すぐに離脱して、次の群集へ向かって」
「了解」
「残りのメンバーは、飛鳥が混乱させた戦場へ、近づきながら射撃。そして、飛鳥を追うようにして、次の戦場へ」
「はい」
「最後に、私と紗奈は殲滅をしながら、南条さんと安西さんを狙う輩の排除を」
「OK」
「此処は30分通しで出来るんだろうけど、今日の所は10分で一区切りにしましょう。10分やってはミーティングを、3回繰り返えすの。よし、じゃ、気合を入れるわよ」
雅が、そう言うと5人は円陣を組み、手を合わせる。
「うわぁ~、初めてだから緊張するぅ~」
「安西さん、大丈夫よ。先生が認めたんだもの、貴女には、きっと才能が有るわ」
「雅先輩、才能の無いアタシは、どうしましょう?」
「南城さん、心配しないで、アタシと飛鳥でサポートするから。例えゲームオーバーになっても、もう一度同じ場所にログインするのよ。紗奈は、半年振りになるけど、大丈夫?」
「緊張もするけど、久しぶりでウズウズもするわ」
「よーし、私たちのチームプレイが、如何に凄いかを、あとで虎塚に見せつけてやりましょう! 行くぞ!」
オー!
雄叫びと共に、5人は戦場へと向かうのだった。
一方その頃、ゴーゴル社では。
「確か、こうだったな」
刀真は、ローレンスとの差が120mを切った時、GTX1000を錐揉み回転させながら、人型から戦闘機へと変形させ、その変形の隙間にローレンスの放ったホーミングミサイルを通した。
「クソがぁー! やっぱ、お前も出来んのかよ!」
「同じじゃねーよ!」
「なんだと?」
その疑問を第一攻撃班チーフオペレーター、ジェームズ・レナード・マクスウェルが代わりに答える。
「会長、刀真の言う通りです。シリアルキラーよりも30m、我々に近い」
「このバケモンがぁーッ!!」
「褒め言葉として、受け取っておくよ。さて、この辺りにして、あいつらのトコに戻るとするか」
「おい、もう1回だ!」
「えーッ! 10回もやったのに、まだ足らねーのかよ!」
「もう、1回だ! 態々《わざわざ》、日本まで迎えに行ってやったんだ。もう1回やっても、バチは当たらんだろうがーッ!」
そう、ローレンスは、日本に用事など無く、刀真たちを迎えに行っただけだったのだ。
全く、金持ちの道楽とは恐ろしいものなのである。
「解ったよ、あと1回だけだからな!」
その後、もう1回を3度やるのだが、ローレンスに白星が付く事は無かった。
読んでくれて、ありがとう。




