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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
聖域の中の母娘 編
70/180

(1) 帰国

今回は、二話更新しています。

68話から読んでください。

「あ!ミユ様、見えますか?あれが、ルーン王国の王都ディアグラムですよ」

 デッキから、遠くに見えるディアグラムを指差すフェリシア。

 少々、かすんでいたが、出発したときと変わらない王都の姿に、フェリシアは帰ってきたんだと安堵する。

「あれが、ディアグラム・・・ミユがこれから住む場所なんだ・・・」

 祭事巫女として派遣されたマーナの義娘ミユは、殆ど聖都しか知らない為、高い構造物が立ち並ぶディアグラムに圧倒されていた。


 だがその瞳は、これからの生活に期待し輝いている。


「ルドラの気配・・・・・・ううん、匂いがする」

 フェリシアたちとは離れた場所に、ルールーとカグが同じように見えてきたディアグラムに目を向けていた。

 突然、カグがそんなことを言ったために、ルールーは顔を真っ赤にして目を見開く。

「な、何を言っておるのじゃ、ぬしは!この地は妾の加護が強いのじゃ、当然であろう!」

「そうだね・・・僕は来たんだ、君の住む場所に。楽しみだよ、ルドラ」

「あ・・・・あぅ・・・・」

 どう言っていいか判らず、ルールーは顔を隠すように俯いてしまった。


「入港、一〇分前です!皆様、ご準備ください!」

 侍女の一人が、フェリシアたちに声を掛ける。

 その横では、船員が慌しく入港の準備を始める。


「ミユ様、降りる準備をしましょうか?ルーちゃん、カグ君も!」

「はい、姫様!」

「分かりました!!ほら、ルドラ」


 アルターレ護国を出発して一週間。


 王家専用船クイーン・ファーネリア号は、一月ぶりにルーン王国へと帰ってきた。




「あ〜・・・・皆、慌ててるね。あ、フォルトさんだ」

 デッキから岸壁の様子を見ていた冬華とうかが、人事のように声を漏らす。

「それはそうでしょう。本来なら、あと一週間は掛かる船旅だったのですから」

「あれ以上遅くなると、フェリシア様やフレミー様は、学校がお休みに入ってしまいますし。やはり、クラスメイトの方とご一緒に夏休みに入らないと、雰囲気が出ませんものね」

 玉露ぎょくろ金糸雀カナリアも、そんなことを言いながら、眼下の作業の様子を見ている。


「とはいえ、あとで怒られるだろうな。特に、ドラグレアさんから」

 昊斗そらとの視線の先に、騎士団に指示を飛ばすフォルトの横に、仁王立ちしたドラグレアがいつもの四割り増しで表情を険しくしているのが見えた。

 

 船長の絶妙な舵捌きで、接岸したクイーン・ファーネリア号は、錨を下ろす。


 船にタラップがかけられ、フェリシアたちが久々の王都へと降り立った。


「久しぶりだな、フェリシア。元気そうで何よりだ」

「お帰りなさいませ、姫様」

 ドラグレアとフォルトが、変わらぬいつもの格好で出迎える。

 その姿を見て、フェリシアは嬉しくなって二人に駆け寄った。

「ドラグレア様!それにフォルト団長も、お久しぶりです!」

 フェリシアを先頭に、フレミーやルールー。それにミユが続く。


「ん?そっちに居るのが、新しく来た祭事巫女か?」

「!?」

 ドラグレアに声を掛けられ、ミユはビクッと身体を震わせ、フェリシアの後ろに隠れてしまった。

「大丈夫ですよ、ミユ様。ドラグレア様は、顔は怖いですけど優しい方ですから」

「フェリシア、それは褒めてるのか?・・・初めまして、若き巫女よ。オレはドラグレア。この国に厄介になって居る異世界人だ。よろしく」

「僕は、ルーン王国アルバート騎士団団長のフォルト・レーヴェと申します。以後、お見知りおきを、巫女様」

 あいさつして来る大人二人に、ミユは何かを思い出したように、フェリシアの陰から出てくる。

「あ・・・・あの、ルーン王国の祭事巫女になりました、ミユ・ヤナカ・クロエです」

 少しおっかなびっくりしながら、ミユは頭を下げる。 

「クロエ?」

 フェリシア同様、クロエの名を身近に感じていたドラグレアたちは、ミユの顔を見つめる。

「ミユ様は、マーナ様の養子なのです」

「そうだったのか。カレイドが聞いたら、さぞ喜ぶだろうな。とりあえず、全員入城してくれ。カレイドやマリアが待っている」

 ドラグレアの視線の先に、王城アルバート城への直通船が待機していた。

「分かりました」

 フェリシアたちが、船へと歩き出した時だ。

「フェリシア姉様!」

「フェリシアさ〜ん」

 声を掛けられ、フェリシアが声のする方を見ると、制服姿のアリエルとヴィルヘルミナ。それに騎士のフローラとぺトラの姿もあった。

「あ、ヴィー!それにアリエルさんも!」

 久しぶりに見る友人たちの姿に、フェリシアは大きく手を振る。

「姉様が帰ってきたと、知らせを受けて飛んでまいりました。ご無事で何よりです」

「アルターレ護国で〜、大変だった〜と聞いていましたので〜、心配していたのですよ〜」

 学園から急いできたのか、二人は少し息を乱し、頬が少し紅色に染まっていた。

「ありがとうございます、お二人とも。沢山お話ししたいことや紹介したい方がいるので、後でお時間いいですか?」

「はい!もちろんです!」

「私も〜、大丈夫ですよ〜」

「では、後ほどお城へ来てくださいね」

 フェリシアたちの話しを見ながら、ドラグレアが昊斗そらとたちの元へと歩いて来る。


「お前ら、どうやって二週間以上掛かる復路を一週間で帰って来れたのかも含めて、後できっちり聞くからな?」

「分かってますよ、きちんと準備してますから」

 帰国したメンバーは船へと乗り込み、アルバート城に向かった。



**************


 謁見の間に、国王のカレイドと王妃マリアが待っていた。

「フェリシア、此度の公務本当にご苦労であった」

「母として、あなたを誇りに思いますよフェリシア」

 二人は威厳に満ちた笑みを浮かべているが、無事に娘が帰ってきたのを心から喜んでいるように見えた。

「お父様、お母様・・・ありがとうございます」

「それで、彼女が?」

「はい、アルターレ護国代表、姫巫女のシオン様がお選びになった祭事巫女、ミユ・ヤナカ・クロエ様です」

 フェリシアに促され、祭事巫女の格好をしたミユが一歩前へと歩み出て、跪く。

「初めまして、陛下。それに王妃様。この度姫巫女様の勅命を受け、ルーン王国の祭事巫女に着任しました、ミユ・ヤナカ・クロエと申します。経験の乏しい未熟者ですが、ルーン王国発展の一助となれるよう頑張ります」

 船の中で、何度となく練習した甲斐があり、ミユは言葉に詰まることなく挨拶の言葉を言い切った。

 残念だったのは、それで気が緩んだのか、ガッツポーズをしてしまったことだ。


 その姿を見て、マリアは微笑ましく思ったのか、ミユに声を掛けた。

「ふふ、そう硬くならなくていいのですよ?マーナ様の娘さんということは、私たちにとっても家族同然。そうですよね、陛下?」

 マリアと同じく、カレイドもミユを優しい眼差しで見ていた。

「あぁ、ここを自分の家の様に思ってくれると私も嬉しい」

 二人の言葉に、ミユは深く頭を下げる。

「あ、ありがとうございます!」

「さぁ、ミユ様をお部屋にご案内しないと!フェリシア、それにフレミーとルドラ様も、ついて来なさい。我ながら、会心の出来だと自負してるの!」

 マリアは嬉しそうに立ち上がり、ミユとルールーの手を引き謁見の間を出て行った。

「お、お母様!」

「王妃様、お待ちを!」

 慌てて後を追うフェリシアとフレミーを見送り、昊斗そらとたちはカレイドの方へと向き直る。


「さて、とりあえず報告を聞こう」


 カレイドに促され、昊斗そらとたちは、アルターレ護国での出来事を、詳細に報告した。


 詳しい状況を知らないカレイドやドラグレアたちは、報告を聞くにつれ、表情が渋くなっていった。


「なんと言うか、どの国でも無知な者たちが引き起こすことは、面倒の一言に尽きるわけか・・・・・」

「それより、お前ら暴れすぎだろう。それだけの大事をやらかしておいて、よくすんなり帰ってこれたな」

「シオンさんからは、感謝されましたけど?国内に溜まっていた膿を、一気に出すことが出来たって。これ、そのときの感謝状です」

 冬華とうかに渡された手紙を読む、カレイドとドラグレア。

「・・・・・・・」「・・・・・・・・・」

 丁寧な文章だが、その文章の下にシオンの本心が書かれているように感じ取れてしまい、二人は閉口してしまう。


「それから、ドラグレアさんが知りたがっていた工程日数の短縮ですが、帰ってくるのが予定より遅くなっていたので、裏技使って帰ってきました」

 おかしな言葉が飛び出してきたためか、カレイドが眉をひそめる。

「裏技?」

「ルーちゃんにアルターレ護国からルーン王国までの海流を操作してもらって、船の速度を上げたんです」

 まさかのとんでもない力技に、カレイドたちは度肝を抜かれる。

「お前ら、そんな無茶苦茶なことして帰ってきたのか?!」

 自分も”多少”は無茶をする、という自覚のあったドラグレアだったが、さすがに斜め上行く昊斗そらとたちの行動に驚きを隠せなかった。


「もちろん、要所を見極めてですよ。全工程の海流操作は今のルールーには無理ですし、周辺海域への影響も懸念されますしね」

「だからって、そこまでしなくてもよかったんじゃないかい?」

 なぜそこまで急いだのか、理由が思い浮かばず、フォルトが質問してくる。

「フェリちゃんたち、学期末ですからね。帰ってきたら学校が休みになってたっていうのは、可哀想じゃないですか。それに、もし向こうを出るのがもっと遅れていたら、私が空間転移で船ごと移動させてましたよ。そっちの方が、余程無茶苦茶だと思いますけど?」

 何とも友人思いなものだが、それをいとも簡単に実行する昊斗そらとたちに、呆れて言葉を失う面々。

「・・・まぁ、無事に帰ってきたことに変わりはない。ソラト君たち、よくやってくれた。ありがとう」

「それが依頼ですから。それから、今この場に居る方々にもう一つ報告が」

 一瞬、嫌な予感が過ぎるカレイドとドラグレアだったが、聞かないわけにはいかない、と視線を交わす。

「聞こう」

「カグ」

 昊斗そらとに呼ばれ、後ろに控えていたカグがやってくる。

「その少年。ずっと気にはなっていたが、誰だ?」

 いつ聞こうか、タイミングを逸していたドラグレアが、カグを見つめる。

「火の神、カグツチですよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 自分たちは、何かおかしな事を聞いたか?と、全員が呆然とする。

「ですから、ルールーと同じ神であるカグツチです。ルールー同様、再教育の必要があったので、連れて帰ってきました」

「・・・・・・待て待て待て!火の神だと?!何処にいたんだ!?」

 昊斗そらとの説明が遅れて頭に浸透し、理解できたドラグレアが慌てだす。

「アルターレ護国が霊峰と呼んでいた火山にですよ。これも報告書を作ってますから、目を通しておいてください」

 手渡された分厚い紙の束に、カレイドとドラグレアは顔を見合わせた。

 昊斗そらとたちの報告内容が、カレイドたちが予想していた以上に膨大且つ重要だったことを考慮し、詳細な報告は明日へと延期になり、昊斗そらとたちは謁見の間を後にした。


 昊斗そらとたちが出て行った後、カレイドは玉座に深く腰掛け、天を仰いだ。

「・・・・・・・・・・・・ドラグ、どうしようか。わが国に、神が二柱も降臨されたぞ」

 声を掛けられたドラグレアは柱に凭れかかり、頭を掻いている。

「どうするもこうするも、ソラトたちに任せるしかないだろう」

「そうだな・・・・・我々人間に、手出しできる事ではないな。フォルト団長、悪いがルドラ様同様、この事も他言無用で頼む」

 再び、居合わせたくない場面に居合わせてしまったフォルトは、諦めたように肯く。

「分かりました・・・・・・・・しかし、この勢いですとソラト君たち、全部の神を連れてくるのではないですか?」


 普段なら、そんな突飛な話を、冗談だと笑い飛ばせるのだが・・・・・


「フォルト、滅多なことを言うなよ・・・・・・本当にそうなりそうで怖いぞ」

「今は、考えたくはないな」

 全く笑えない二人は、真剣に頭を抱えていたのだった。


 




次回更新は、二月二十四日 PM11:00ごろを予定しています。


変更の際は、活動報告でご連絡します。

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