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「幕間~転生者の周辺~」  作者:
幕間第3部
7/7

迷宮を生み出したる者、グルド

迷宮を生み出した魔導師のお話です。

 グルドは魔術師であった。

 種族はノーム族。妖精族の一つ。

 同族の中では早くから「天才」として知られていた。

 魔力量をとっても、詠唱技術をとってもグルドに敵う者はいなかった。

 だからかも知れない。

 いつしかグルドは、ノームには珍しく放浪の旅に出た。

 己を理解する者、己を高見に引き上げる者を求めて。

 放浪の旅は150年に及んだ。


 グルドの齢が250に届こうとした頃、グルドは変わった男に出会う。

 その男は強力な呪いの剣「魂喰ソウルイーター」を持ち、なお破滅していなかった。

 それが男の魔法技術によるものと知り、興味を覚えたグルドは、暫くその男と行動を共にすることに決めた。

 男はグルドと同じ「天才」だった。

 グルドは自分の理解者が現れたことに狂喜した。

 男と魔術について語らい、共に考え、いくつかの新しい魔法を生み出した。

 それはグルドにとって、実に充実した日々だった。

 惜しむらくは、男にある種の「呪い」が掛けられており、せっかく開発した魔法も、その殆どを男自身は使うことができなかった。


 そのためか男はさらなる力を求めていた。

 なぜなら男には「目的」があったからだ。

 男は魔法に変わる力をも求めた。

 共に旅する内に自然と男が前衛、グルドが後衛というように役割が別れていった。

 他に仲間は作らなかった。

 男が嫌がったし、グルド自身もその必要を認めなかった。

 

 砂漠の夢幻伽藍の塔ヘルパイア。

 深海淵の忘れられた神殿キュナトス。

 竜骨山脈の地下遺跡ガイナオウト。

 火炎山ベスポオゥヘプト。

 その他にも…。

 屈指の魔境と呼ばれる場所に男と2人で巡り踏破した。

 通常の者なら一生掛けてもたどり着けない場所でも、男とグルド、2人の「天才」は可能にした。


 精霊王と出会い、契約を交わしたのもその旅路でのこと。

 それによりグルドの力は増し、男の剣もまた強力になった。

 強力になりすぎた、といっても良いだろう。

 もはや「魂喰ソウルイーター」などと呼べるものではなくなっていた。

 ある精霊王曰く

 『これで斬られたら僕らでも消滅するね。』

 と言わしめる程に。

 もはや、男には良くて一太刀、それ以上振るうことは無理だった。

 「俺が強くなるしかない。」

 そう言い、凄まじい修練を積むようになった。

 その男が突然消えた。

 「奴らに挑む。剣を頼む。」

 そう短い書き置きを残して。


 その数十年後、グルドは、人の来ない荒野に居を構え、そこに迷宮を造り始めた。

 旅の間に手に入れた強力な魔法具アーテイファクトを収納するためだった。

 自分が生きている内はよい。

 生きている内ならどの様にでも護り切ることができる。

 自分が死んだ後、下手をすれば、この魔法具アーティファクトをもとに戦争が起きる。それを恐れたのだ。

 と同時に、自分を超える者が在れば、それらを正しく使いこなすことができる、とも考えていた。

 迷宮には男と考えたアイディアも含め、様々な仕掛けをした。

 さらに契約した精霊王にも協力してもらい、厳重な封印を施した。

 在るレベル以上の強力な魔法具アーティファクトはそれ自身に意思が宿る。

 自らを扱える者を選別し、呼び寄せようとするのだ。

 そのものに本当に資格があるのか、それを判別する機能が迷宮に加えられていった。

 天才が全精力を傾け、精霊王等が協力した迷宮。

 それは何時しか迷宮自身の意思も持つようになってきた。

 造り始めて数十年の時を掛けた後。

 天才と魔法具アーティファクトと、精霊王と、迷宮と。

 全てが組み合わさった時「精霊の迷宮」=「還らずの迷宮」が完成した。


 迷宮が完成して程なくして。

 グルドは予期せぬ再会を果たした。

 男が姿を現したのだ。

 初めて出会った時から百数十年が過ぎていた。 

 最初はわからなかった。

 年齢も容姿もまるきり変わっていたからだ。

 事情を聞き、改めて精霊王達にも確認してもらった。

 『魂は同じじゃな。』

 それが結論だった。

 剣の返還を申し出るグルドに、

 「未だ早い。」

 と断る男。ただし、何時かは取りに来ることを告げる。

 その時のためにと迷宮の鍵を男に渡す。

 「儂が生きておる内に来れると良いな。」

 そう告げるグルドに、片手を上げて答える男。

 男はそのまま去っていった。

 「再び会えると良いが。」

 男の背中を見送りながら呟くグルド。

 しかし、グルドが生きている内に再びの再会はなかった。


 次に男が迷宮を訪れたのはさらに100年後。既にグルドは此の世の人ではなかった。






 此の世を去るまでに、グルドにはさらに2つの出会いがあった。

 一つは夢の世界で。

 そこで漆黒の剣の意思と出会う。

 剣の意思と語らい、彼は男のために精霊王等に或る願いを託す。

 その願いにより剣と欠片は出会うこととなる。


 今一つは迷宮の彼の部屋であった。

 ある晩、ふと顔を上げるとそこに2つの「影」があった。

 「影」達とグルドが語った内容については、彼は誰にも漏らさなかった。

 記録にすら残さず、彼の胸の内にのみ留めたのである。

 ただ、男に対しての想いがグルドの最後のメッセージに込められていた。


 『…できればお主の目的が果たされ、お主に安寧が訪れることを願う。例え叶わぬ願いだとしても…。』


 グルドの想いが届いたのかどうか…。

 それはこの後の男の行動が証明することになるだろう。


 グルド亡き後、今も「精霊の迷宮」は「還らずの迷宮」として荒れ地の奥で眠っている。

 いつかその奥に眠る魔道具アーティファクトが必要とする者が迷宮に訪れるまで。


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