#4 珍事件
書き溜めてたのを一気放出しました
ペガサス。
馬。
つまり四足歩行。
理論は完成していた。
俺は幼稚園でも完全に四足歩行生活へ移行していた。
登園。
四足歩行。
給食。
四足歩行。
お昼寝。
四足歩行。
先生に怒られる。
四足歩行。
もはや誰も止めなかった。
「好きにしなさい……」
担任の田中先生は、何かを諦めた目をしていた。
そんなある日の昼。
園庭で遊んでいた時だった。
「キャー!!」
悲鳴。
「不審者よ!!」
園内は大混乱。
先生たちは園児を集め始める。
しかし。
俺は違った。
「……来たか」
「秀昭くん逃げて!!」
田中先生が叫ぶ。
だが俺は静かだった。
「ついに来たな」
「何が!?」
「ライバルだ」
「は?」
門の近くに立っていた男。
黒い服。
帽子。
サングラス。
俺は全身を震わせた。
間違いない。
「黒い馬……!!」
「違う!!」
「黒き天馬……!!」
「もっと違う!!」
俺の脳内で全てが繋がった。
白きペガサス。
そして。
闇を司るもう一頭。
ブラックペガサス。
神話にそんな設定はない。
しかし俺の脳内にはあった。
「決着をつけよう」
「つけなくていい!!」
田中先生の叫びも虚しく。
俺は地面に手をついた。
「ヒヒーン」
「やめて!」
ドドドドドドド。
四足歩行全力疾走。
「何だこいつ!?」
男は狼狽した。
当然である。
突然、砂場から高速で迫ってくる園児など想定していない。
しかし。
その時。
「待て!!」
警備員のおじさんが駆け寄る。
男は逃げようと振り返った。
そして。
ドン。
俺と正面衝突。
「ヒヒーン!!」
「ぐえっ!!」
「うわっ!!」
男はバランスを崩し、警備員のおじさんも巻き込み、三人まとめて転がった。
結果。
男だけ捕まった。
「確保!!」
「ありがとう!!」
先生たちは涙目。
園児たちは拍手。
警察官まで来た。
「君が助けたの?」
俺は首を振った。
「違う」
「え?」
「奴は強かった」
「いや……」
「あと一歩で負けていた」
「何の勝負?」
「ブラックペガサス」
「何?」
「また会おう」
「会わなくていい」
その日の夜。
ニュース。
『謎の四足歩行園児、侵入者確保に貢献』
父は吹き出した。
祖母は泣いていた。
母は頭を抱えていた。
そして。
翌日。
幼稚園に行くと。
友達のタケルが言った。
「秀昭くんすごい!!」
「当然だ」
「かっこよかった!!」
「うむ」
「馬みたいだった!!」
「違う」
俺は静かに空を見上げた。
「まだだ」
「何が?」
「俺はまだ」
そして拳を握る。
「馬ですらない」
「じゃあ昨日のは何だったの?」
知らない。
本人にもわからない。
しかし。
一つだけ確かなことがあった。
ペガサスへの道は、
まだ始まったばかりだった。
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