#1 俺の名前はヒデアキ!!ゴッドペガサスになる男だ!!
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ペガサス。
それはギリシアの蒼穹を駆ける、伝説の天馬。
そして、俺の将来の夢だった。
幼稚園の先生は困惑した。
出会いは四歳の頃。
当時の俺は、ギリシア神話に心を奪われていた。
ある日、ボロボロの本をめくっていた俺の指が止まる。
英雄ペルセウスが魔女メドゥーサの首を刎ねた瞬間。
その血飛沫の中から、一頭の美しい白馬が天高く舞い上がった。
ペガサス。
ポセイドーンの血を引く、神聖なる天馬。
そのおぞましくも荘厳な誕生の瞬間に、俺の幼い魂は震えた。
そして確信した。
「これだ」
その夜、俺は夕食のカレーを食べながら両親に告げた。
「俺、将来ペガサスになる」
スプーンを落としたのは母だった。
「……何?」
「ペガサス」
「パイロットとかじゃなくて?」
「ペガサス」
父は新聞を下ろした。
「競走馬?」
「伝説の天馬」
「もっとダメだった」
だが、両親の理解を得られなかった程度で、神話への道を諦めるほど俺の覚悟は浅くない。
翌日、俺は母の前に仁王立ちになった。
「ママ」
「何」
「俺をジムに通わせて」
母は味噌汁をかき混ぜる手を止めた。
「……四歳よ?」
「ペガサスに必要なのは強靭な肉体だ」
「必要なのはお昼寝です」
「翼を羽ばたかせる筋力を」
「まず靴下を一人で履けるようになりなさい」
しかし、偉大なる夢は常に理解されない。
ガリレオもそうだった。
コロンブスもそうだった。
そして今、俺もまたそうだった。
後に母は当時を振り返り、
「あの頃が一番育児書を読み返した」
と語っている。
当然、ジムは門前払いだった。
「申し訳ありませんが、当店は四歳児のご利用は……」
「事情は理解している」
俺は静かにうなずいた。
「まだ時ではないということだな」
「いや、そういう意味では……」
「心配するな。俺は待てる男だ」
店員のお姉さんは、助けを求めるように母を見た。
母は遠い目をしていた。
だが、その程度で天馬への憧れが折れるはずもない。
翼がないなら、まずは地上で最強になればいい。
空を統べる者は、まず大地を支配せねばならない。
俺は庭に立ち、拳を握り締めた。
「待っていろ、蒼穹」
すると縁側で洗濯物を畳んでいた祖母が顔を上げた。
「秀昭ちゃん」
「何だ、ばあば」
「おやつのプリン食べる?」
「……食べる」
こうして、後に『第一次ペガサス計画』と呼ばれることになる長き戦いが幕を開けたのである。
この時の俺は、まだ知らなかった。
ペガサスへの道が、想像を絶するほど険しく、そして幼稚園の先生方を絶望させるものであることを。
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