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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
家を追い出された伯爵令嬢、謎のモフモフを拾う

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(8)私と同じだね

黒くてツヤツヤとした、まんまるの愛らしい瞳が、エルナの顔をじーっと見つめてくる。


(かっ、可愛ぃいいいいいい!!)


エルナがその愛らしさから目が離せないでいると、毛玉はガバッと起き上がった。


「キュウ!」


「ああっ!?」


毛玉はひと声鳴くと、手に持ったお椀の中に顔を突っ込んだ。そのままガツガツと食べ始める。


エルナはこぼれないように、慌ててお椀を両手でおさえた。


「あの、毛玉さん、そんなに急に食べて大丈夫?」


「キュゥウウ!」


お椀の中のスープをあっという間に飲み干すと、毛玉は満足そうに鳴いた。そして視線で鍋を指し、次に空になったお椀を指した。


「ええっと、おかわり?」


「キュウ!!」


戸惑うエルナの問いに、毛玉は元気よく答えた。


白い大きな尻尾が、犬のようにブンブンと揺れている。たぶん喜んでいるのだろう。


やはり、倒れていたのは病気などではなく、単にお腹が空いていただけだったのかもしれない。


エルナはお椀にもう一度スープをよそってやると、自分で食べられるように床に置いてやった。自分もお椀によそって、テーブルにつく。


毛玉が元気よく食べるのを見ていたら、自分もお腹が空いていたことを思い出したのだ。


(元気になってよかった!それにしても、本当にこの子何て言う動物かしら?)


身振りでおかわりを催促するあたり、頭もかなり良さそうだ。エルナは食べながら毛玉を観察する。


……フワッ!


突然、金色の光が広がった。


お椀に顔を突っ込む毛玉の体が光ったのだ。濡れてひどいことになっていた毛皮に艶が戻り、ふわふわになった。


(この子、魔力があるわ!)


覚えのあるその光に、エルナは目を見張った。実は、彼女自身も魔力を放出する時、金色に光るのだ。


(お母さまが亡くなってからは、ひとりぼっちだと思っていたけれど)


誰にも言えずに隠してきた秘密。それをひとりで抱えてきたエルナの胸に、ポッと小さな灯がともった。


秘伝のスパイスは、レシピ通りに調合するだけでは完成しない。


最後にエルナが祈りを捧げることで魔力がスパイスに移り、特別な効果のあるスパイスになるのだ。当然、スパイスを開発した母も同じ魔力を持っていた。


あれは確か、エルナが十歳頃のことだった。


「このスパイスを食べた人が健康になりますようにって、神さまに心からお願いするのよ」


母は初めてこの小屋に自分を連れてくると、秘伝のスパイスの作り方を教えてくれた。


両手を組んだ母が、調合したヒールシャワーのスパイスに向かって祈りを捧げる。すると不思議なことに、母の体が金色に光ったのだ。


「わあ、お母さま素敵!とってもきれい!」


まだ子供だったエルナは無邪気に喜び、母親が放つ温かくも神々しい光に見とれた。


そして、母親に教わったとおりにエルナが祈りを捧げると、自分の体も金の光を放ったのだ。


「お母さまと同じね!」


大好きな母と同じ力を持つことに大きな喜びを感じたエルナは、興奮して母に飛び付いた。


そんな娘を母はギュッと抱きしめてくれた。そして耳元に口を近づけ、諭すように言ったのだ。


「このことは誰にも言ってはいけないわ。お父さまにもよ。人前でスパイスを作ってもいけません。約束できるわね?」


「はい、お母さま」


エルナは母の腕の中でうなずいた。この教えは、17歳になった今もずっと守り続けている。


だが、この金の光を放つ魔力がどういうものなのか、エルナ自身にも分かっていない。母は、これはブルック伯爵家の血筋である女性だけが持つ、特別な魔力なのだと言った。


「もう少し大きくなったら話してあげるわ」


だが、その前に母は亡くなってしまい、謎は謎のままだ。


この国に魔力を持つものは多く、特に貴族は珍しくない。だが、魔力を使う時に体から光を放出するという話は、聞いたことがなかった。


そしてこの魔力は、一般に知られている魔力の属性、火、水、風、土 のどれにも当てはまらない。 母が他人に知られてはいけないと言ったのは、この辺りが原因なのだろう。


「キュウ!」


もふもふになった毛玉の鳴き声に、エルナは我に返った。毛玉は満足そうな顔をしていたが、口の周りがスープでびしょびしょだ。


エルナは笑って、濡れタオルでその顔を丁寧に拭いてやった。嫌がりもせずおとなしくしている。


「おりこうさんね」


「キュ!」


エルナが褒めると、嬉しそうに胸を張る。モフモフのチビちゃんが得意そうにしている姿は何とも可愛い。


「あなたはどこから来たの?」


尋ねてみるが、もちろん返事はない。


(母との思い出深いこの場所で出会ったのは、何か意味があるのかもしれない)


エルナは自分を見上げてくるつぶらな瞳を見つめた。


目が合えば、ふわふわの尻尾が左右に勢いよく振られる。どうやら、自分のことを気に入ってくれたようだ。


「私がここに居るあいだ、一緒に住む?」


「キュ!」


間髪容れずに返事が返ってきたので、エルナは声をあげて笑った。こんな風に笑ったのは何年ぶりだろうか。


「じゃあ、名前をつけなくちゃね」


エルナはしばらく考えた末、「ポム」という名前をつけた。移動するときに後ろ足で跳ねて、ポムポムと弾むように動くからだ。


こうしてエルナとポムは、 森の中の小屋で、一緒に暮らすことになった。   



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