54・転生魔王NOT悪役令嬢<最終話>
「そだね。なんか考えてみるよ。それはそうと聖女様はマルス将軍追いかけてていいの? 王太子のイヴェール従兄様との縁談とかないの?」
「前世のネット小説の読み過ぎじゃないですか? 確かに王太子殿下の婚約者が決まらなくて国王陛下御夫妻は悩んでらっしゃいましたけど、なんだか最近愛が再燃したのか第二子の誕生が噂されてますから……」
「ああ、イヴェール従兄様はね……」
「ええ、王太子殿下は……」
マタン山脈でのオートムヌ戦で、魔王と聖女は見た!
黒幕ハイエルフに対して一歩も引かず、王家に伝わる神剣を壊されても嬉々として、見事な拳闘技術を披露して有利に戦闘を繰り広げていた王太子の姿を。
たぶん彼は恋愛に興味のないバトルジャンキーなのだ。伯父様方も諦めたということだろう。私にとっては、久しぶりの再会で従妹に忘れられていたにもかかわらず、茶畑作りの相談に乗ってくれた優しい従兄なんだけどね。
そういや、さっき宰相補佐眼鏡に頼まれたな。
少し前仮面をつけたイヴェール従兄様が、怪しい薬とかを売ってる暗黒街の闇市で目撃されたらしい。もし私との会話中にそういう話題になったら、従妹としてそれとなく窘めて欲しいって。
ちな、目撃したのは国が暗黒街に潜入させてる捜査官だそうだ。
うーん、でもなー。
暗黒街でしょ?
暗黒街って言ったらアレでしょ? 賭けバトル。乙女ゲーム『綺羅星のエクラ』には出てこなかったっけ。
イヴェール従兄様のことだから、闇市じゃなくて地下闘技場とかで戦闘欲を満たしてるんじゃない?
私も魔鍛冶を禁止されたら嫌だし、王太子としてのストレスを解消するために、少々のバトルは見逃してあげても良いんじゃないかなー。
とか考えながら、聖女との話を変える。
「いやー、それにしても聖女様と会えて良かったよ。おかげでトムの……」
計画を打ち破ることができたと言おうとして、ふと浮かんだ光景がある。
泣き出しそうな顔で笑っている、ハシバミ色の瞳。
頭に浮かんだ名前で呼ぶと、その瞳は黄金色に煌めいて、
『なんでボクをそう呼ぶの? キミはボクの親友じゃないくせに』
耳に蘇った涙声は一瞬で消えた。
彼にも理由はあったのだろう。
でも私達にだって私達の生きる理由がある。
「ええ、オートムヌの計画を潰して世界を救うことができました。私もソワレさんと会えて良かったです」
前世の記憶を取り戻したばかりのころは、魔王より悪役令嬢のほうが良かっただなんて思っていたけれど、今になってみると魔王で良かった。
同担拒否族なのはちょっとアレだったものの、お父様もお母様も大好きだもの。
ニュイ魔王国の脳筋魔人達も愛しい。くっくっく、待っているが良い我が民達よ。そなたらの魔王は、今に魔王国に貨幣経済を……始められたら良いなあ。
しかし、あのとき四天王が私を追ってくるとは思わなかったよ。
ちゃんと許可取って行ったのになあ。それだけ私を心配してくれたのかな、魔王、反省。
ヴィペールは隙を見て暗殺するつもりだったような気がするけど。なんか再会してからずっと、気がつくと睨みつけられてる気がするし。
とはいえ茶畑が完成したら、紅茶大好きなヴィペールへの抑止力になるだろう。
私は茶畑を一瞬で燃やし尽くせるからね。
バルは……これまで通りお肉くらいならあげておこう。魔王の座は譲らないよ!
コルボーにもお肉はあげようかな。弟がたくさんいるって言ってたしね。
彼が方言男子だったのにはびっくりしたな。
前世の『綺羅星のエクラ』でもそうだったっけ? 魔鍛冶に関係ないセリフは早送りしてたからなあ。
そういえば、リオンが外交官として凄く優秀で驚いた。
さすがお父様のころから大地の四天王として仕えてくれてただけあるわ。
……同担拒否族のお父様の言動を制御してくれてたのかな。早くなんかプレゼントして感謝の意を伝えとこ。
リュイソーは、最初怯えてたのが申し訳なくなるくらい親切だよね。
ああ、でも前世では『ドSショタ』って呼ばれてたんだよな、彼。
恋愛関係にならないように気をつけとこ。ま、わりと攻略難しいほうだったから大丈夫でしょ。
私が魔王だって教えても、テールが怒らないでくれて良かったな。
良いヤツだよね、彼。
前世では『良い人で終わりそうな聖騎士ナンバー1』とか言われてたっけ。
ラファルは、なんでさっき私の近くでウロウロしてたんだろ。
本当はスイーツが食べたいのに、スタイルを維持するために禁止してるのかな。
無理せず美味しいものを食べたら良いのに。
それにしても挙動不審過ぎたから、もしかしたらもう聖女に恋してるのかもね。
……うわあ、苦労しそう。
ラファル、が~んば(絶対無理だろ感)!
なにはともあれ前世のネット小説の転生悪役令嬢みたいに逆ハーレム作らないで済んで良かったよね。
今は恋愛している暇があったら、魔鍛冶に打ち込みたいもん。
さっきのフラムにはドキドキしちゃったけど、好きになったら好き避けするキャラだから、あれは私を妹みたいに思っての行動だったんだろうな。
ふふふっ、転生魔王NOT悪役令嬢で良かったー♪




