あったかもふもふお料理はいかが?
魔族の脅威は去り、世界を救ったヒスイには新たな目的ができた。それは、ユウシャの家を自分がいなくても、人気を継続させること。
だから、ヒスイの料理の腕をジェイド、アニーシャ、ペイの三人に叩き込む。ジェイドはヒスイと方向性は違えど料理はできるのだ、特に聖女と熊幼女の二人。
料理を作るのではなく、教える。それはヒスイにとって初めての試みだったが……初めてゆえに、腕がなる!
「ヒスイ様、待ってくださいよぉ」
「さあせっせと歩いて! 時間は有限、無駄なく使わないと!」
ヒスイは、いずれ元の世界に帰る。しかしそれは、今ではない。三人に、自分の味を伝えて……この世界に、あの味を浸透させる。そうしてこそ、真に世界を救ったと言えるだろう。
ヒスイが、三人に味を教えたあとは……きっと三人が、それぞれの道を進んでいくに違いない。ネズミ方式に、一人また一人と、味を継いでいく者が増えていく。
そうなれば、この世界の料理も……レベルが、格段にあがる。それは、この世界を去ったあとでも、ヒスイにとっては嬉しいことなのだ。
「さあ、やるよみんな!」
「ま、待ってくださいヒスイ……その前に少し、もふもふタイムを設けてください」
「なんですかそのタイム! そんなのありません!」
「ううん……いや、今日は……いいよ! 許す! 存分にもふもふしなさい、アニーシャを!」
「なん、ですと!?」
「だってペイちゃんじゃR指定入っちゃうからさ、絵面的に」
「あーる……?」
「いや、わかんないですし、私だって嫌なん……ちょっ、ジェイドさん? なにを、手をわきわきさせてるんですか!」
「もふもふ、もふもふ……もふー!」
「キャー!」
「はいはーい、ペイちゃんはあっち行ってようねー」
「え、あ、うん」
騒がしい店内……それは、一つの理想でもあった。この世界の人々と、魔族と、異世界の人間と。本来交わるはずのなかった、者たち。
しかし今、こうして笑い合うことができている。それはきっかけは、ヒスイが動いたからかもしれない……しかし、彼女らを繋げたのは、その心だ。心があったかくなれば、人は優しくなれる。心をあったかくするには、あったかい料理を食べればいい。
ただあったかいだけでなく、身に染みる……いや、心にまで染みる料理。それを作り、提供したことこそが……みんなを、あたたかくして、ハッピーにさせた。
そうだ、ヒスイが作っていたのはきっと、ただあったかいものではなく……人々を幸せにするための、あったかいものだ。
これからもヒスイは、聖女と、熊の幼女と、もふもふ好きの変態魔族と……料理を、作っていく。この世界を、あったかくするために。
カランカラーン
「おっ、お客さんだ。ほら二人とも、じゃれてないで準備して」
「だ、誰のせいですか!」
店の、戸が開く。
今日もまた、ユウシャの家は……人々の心をあたたかくするべく、開店する。
「いらっしゃいませー、ユウシャの家へようこそ!」
もふもふ企画、完結しました!
年末からここまで、思いの外時間がかかったなぁ……けれど、やりとげましたよ!




