第2話 : にいさんゴメンナサイ
「慶木、蓮花!、
この御木も、もう守れそうもなくなった、すまない。
おにいちゃん!、
ぼんずと一緒に、また新しい旅立ちを願ってる」
「そして、ぼんず……、
慶木にも蓮花おばちゃんにも、お前をよろしく頼むと言われていたが、この御じぃも、もう限界のようだ。
もう寝坊もしないで、ちゃんと旅立つんだぞ、頑張るんだぞ」
そして、2.3日後には御木さんのあった周辺には、高架橋工事のためのコンクリートの杭が打ち込まれ始めていた。
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「ぼんずー、ぼんずー」と、
僕の体を揺すりながら、僕を呼ぶ声が聞こえた。
寝ぼけ眼で、
「あっ、兄さんどうしたんですか? 僕はまだ~、…… 眠いです。」
「まだ、動けないか?」
「はぁ~ぃ?、なんとか動けます。でも眠いな~」
「いいから、しゃんとして兄さんの後について来なさい、大丈夫だね。
今のぼんずなら、まだ、大丈夫だ」と、
兄さんは、自分にも言い聞かせるかのように、寝ぼけ眼の僕を連れて歩き出した。
僕も、次第に目が覚めてきた。
「兄さん、次の旅立ちの準備ですね? 今回は、兄さんといろんな処へ行けるんですね!。久しぶりです、嬉しいです」
兄さんは、黙々と歩き続けた。
黙々と歩く兄さんに付いて行くと、いつもと違う感じがした。
「兄さん、地上とは逆方向じゃないんですか?」
すると、兄さんが……、
「やっと着いた、ほら、ここに隙間があるだろう。ここから地上に出られるはずだ」
僕は不思議に思い、
「何故直ぐに地上へ向かわず、逆の方向に着たんですか?」
すると、
「もうあそこから、直ぐに地上に出られる所は無いんだよ。みんな、コンクリート、アスファルトに覆われてしまってな。
ほら、この隙間から、下水管を伝わって行けば、川に出られるから、ぼんず、お前が先に隙間から出なさい。下水管に出たら、しっかり管の上につかまって川辺まで出るんだぞ」
僕には、まだその意味がよく解らなかった。
よいしょ、う~、どっこいしょ、っと。
「兄さん、僕は今、しっかりと下水管にしがみ付いてますよ、兄さんも早く出て来て下さい」
「ぼんず……、兄さんにはこの隙間は狭すぎるんだよ、通れないんだ。
いいかい、しっかり川まで出て地上に出るんだぞ」
その言葉で、やっと僕は気が付いた。
兄さんは、僕が歩けるようになるのを待っていてくれてたんだ。本当なら、とっくに、この隙間から地上に出られたはずなのに。
「兄さん駄目だよ、駄目だよ、それなら、僕もまたその隙間から戻って、兄さんと一緒に地上に出られる所探すよ。兄さんとぼんずで、一緒に旅に出ようよ」
「ありがとう、兄さんはその言葉だけで嬉しいよ。兄さんも違う所を探すから」
でも、もう、そんな所があるはずが無いことを、兄さんは知っている、
僕のためにやっと見つけた隙間が、ここなのだから。
「ほら、下水管が水一杯になる前に、早く行きなさい」
「兄さん、兄さん、……」
まだ、鳴く事も出来ない僕は悔しかった。
兄さんの言う通り、下水管にしがみつきながら川にたどり着いた。
僕は、川辺から観える景色に驚いた。前回の旅の時とは全く違うその景色に。
辺り一面、コンクリートジャングルだった。岸辺には僅かに草花はあったが、
木立などまるっきり見えなかった。
「僕は、ここから旅立って、どこに行けばいいの?……」
そして僕は、あの時夢の中で聞いた御じぃの言葉が、夢では無かった事に気付いた。
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「そして、ぼんず……、
………、
もう寝坊もしないで、ちゃんと旅立つんだぞ、頑張るんだぞ」の言葉。
まだ、鳴けない僕は、心の中で
「御じぃ、慶木さん、蓮花おばちゃん、
そして、寝ぼすけの僕を待っててくれた、にいさんゴメンナサイ」と、泣きじゃくった。




