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12/29

visualpoint ナナ 

なんとか8月中に投稿できましたね。






今回、暴力的な表現(嘔吐、失禁含む)等が多分に含まれます。

苦手な方はご遠慮ください。(読み飛ばした場合でも、本編を読み進める上での問題はありません)































二千十三年四月十二日


 中学三年生になってから早一週間。

 新しいクラスにも慣れ、中学生として過ごす最後の一年が始まった。

 今年は高校受験もあり、あまり遊んでいられそうにもなかったが、楽しい一年になることに変わりはないだろう。


 今日最後の授業が終わり、部活動に加入していない生徒は帰宅を始める。

 今日が金曜日ということもあり、みんなの足取りは軽い。

「水月ちゃん、また月曜日ね!」

「うん、バイバイ」

 クラスメイトとあいさつを交わし、自分も帰り支度を整え、帰路につく。

 見慣れた景色を横目に、二年間通い続けた道を、今朝とは逆の方向へ向かって歩く。

 何も変わらないはずの道を歩いているはずなのに、今日はいつもとは何かが違った。

 不安になり、後ろをふり返ると、すぐに違和感の正体がわかった。

「つけられてる……」

 白のワンボックス。

 窓には黒いフィルムが張られており、外から車内の様子はわからない。

 怖くなり、走り出したが、気づくのが遅すぎた。

 ワンボックスは、私の進路を塞ぐようにして停車し、中から数人の女が出てきた。

「っ!?」

 腕をつかまれ、振りほどこうとしたとき、不意に首筋に激痛が走り、意識が飛んだ。

 倒れる寸前に見たのは、スタンガンを持ち、不気味な笑みを浮かべた金髪の女の姿だった。


「……ん…………」

 目が覚めたとき、そこは車のなかではなかった。

 軽く見まわしてみるが、真っ暗でなにも見えない。

「痛っ!」

 徐々に意識がはっきりとしてくると、スタンガンを押し付けられた箇所が痛んだ。

「……あれ?」

 無意識に痛む箇所を押さえようとしたのだが、手が届くことはなかった。

「これって……」

 何も見えないのだが、感触でなんとなくわかる。

 どうやら後ろ手に手錠が掛けられているらしい。


 どのくらい時間がたったのか、真っ暗なうえに音もなにも無いため全くわからない。

 身動きも出来ずにただじっと過ごしていた。

 だから、その変化にはすぐに気づくことができた。

「……足音?」

 その音に気付いた時、全身を恐怖が駆け巡った。

 自分は殺されてしまうかもしれない。

 でもなぜ私なのか。

 誰かにこんなことをされるような覚えもない。

 足音が近づくにつれ、不安は大きくなる。

 不意に光が目に入る。

 照明がつけられたらしい。

 暗闇に慣れたせいで目がくらみ、一瞬何も見えなくなる。

「あ、起きた? オハヨウ。気分はどう?」

 徐々に視界が戻り、ここが狭い部屋の中なのだとわかる。

 声をかけてきたのは、私にスタンガンを押し付けたあの金髪の女だった。

「返事ぐらいしろ、よ!」

「ぐっ!?」

 私が黙っていると、女は私の横腹を蹴った。

 仰向けになった私のお腹を踏みつけ、女はさらに続けた。

「お前はもうあたしらの物なの。分かる?」

「う……あ……」

「返事は「はい」だろうが!」

「うっ」

 私のお腹にさらに体重が掛けられた。

「あれ、先に始めちゃってるの?」

 新しい声がする。

 何とか声のもとへ視線を動かすと、見るからにガラの悪そうな女がさらに二人立っていた。

「へぇ~、結構カワイイじゃん」

「それでいて真面目そうな清純系とか、マジでムカツク」

「あぅ……!?」

 各々が勝手なことを言いながら、私の足や腕を蹴り、踏んでいく。


 その後、一時間もしないうちに女たちはどこかへ行ってしまった。

 私の拘束を解くことなく。

 暴行を受けた箇所は痛み、内出血を起こして腫れていた。


 それから体感で数時間。

 眠気は不安と恐怖にかき消され、また何もない時間を過ごす。

 だが、いつまでも起きていられるわけではない。

 眠気が最高潮になったとき、精神的に疲弊しきっていたのもあり、眠ってしまった。


「!? ゲホ、ゲホっ」

 顔に何か液体をかけられ、目を覚ます。

 視線を上げると、昨日私のお腹を踏みつけた女がジュースのペットボトルを逆さ向けていた。

「おい。何勝手に寝てんだ、よ!」

「うっ……」

 また横腹を蹴られ、仰向けになる。

 今度は何をされるのだろうかと不安になる。

 だが、不意に女の携帯が鳴った。

「……あ? クソ。ここ電波悪い。ちょい待ちー」

 女は携帯片手に部屋の外へ出て行った。

 扉が閉められると、部屋の中をつかの間の静寂が包んだ。


 二、三分ほどたつと、女が戻ってきた。

 「うぐっ!?」

 戻ってくるなり蹴飛ばされる。

「クソっ! 何で! あたしが!」

「う、ぐっ、あっ!?」

 電話の内容なんて知る由もなかったが、よっぽど気に食わなかったらしい。

 ひとしきり私を蹴り終えると、女は不機嫌なままどこかへ行ってしまった。


 一人になると、痛み以外の問題が出てきた。

「……お腹すいた」

 どうしても空腹に耐えられず、先ほど顔にかけられた液体 (おそらくオレンジジュース)を不自由な体制ながらもなんとか舐める。

 春休みにクリーニングに出した水色のセーラー服はジュースでベタベタになり、暗くてはっきりとは見えないが、ところどころに靴の跡も付いているようだ。


 いくらかの時間が過ぎた。

 そしてまた扉が開き、照明がつけられた。

 入ってきたのは女二人。

 よく見ると、あとから来たあの二人だった。

「ヤッホー、まだ生きてる?」

 徐々に光に目が慣れ、女の容姿が目に入る。

 はじめに声をかけてきたのは髪が長く、明るめのブラウンに染めた女だった。

「あれー? 元気ないな~。あ、そっか。朝からボコられたんだっけ?」

 女は指先で私を突きながら言う。

「そんなに睨まないでくれるー? せっかく食べ物とか持ってきてあげたんだよー?」

「……!」

 思わぬ女のセリフに顔を上げる。

「あーでもー、そのまんまじゃ食べれないよね~? ん~じゃぁ食べさせてあげる」

「あー、待って。それウチがやりたい」

 今度はもう一人の、ダークブラウンに染めた髪をショートカットにした女が話し出した。

 その女がロングの女から袋を受け取り、スカートの中が見えるのもお構いなしで私の前にしゃがみこむ。

「……え?」

 よく見ると、二人の服装は、どこかの学校の制服らしかった。

(この人たち、高校生なの!?)

「むぐっ!?」

 自分を監禁しているのが高校生だったことに対して驚きを感じる間もなく、口の中にパンが押し込まれた。

「ほら、アーン。お口あけて?」

 しかし、長い間水分を摂取していなかった体はそれを受け付けず、飲み込むことができない。

「おぇ……」

 結局吐き出してしまった。

「ちょっとー、食べないの~?」

「あ、そうだ。水が先じゃない?」

「あー、なるほど」

 今度は水のペットボトルの飲み口が押し込まれる。

「ぐっ……エホっゲホっ!?」

 しかし、寝ころばされた状態では上手く飲むことができず、たったこれだけの水におぼれそうになる。

「あ? おい、てめぇが吐き出した水で濡れちまったじゃねーか!?」

 突然女がキレる。

 しかし、あんな体制で飲めというほうが無理だ。

「あーあ、怒らせちゃった」

 ロングの女は他人事のように言うが、私はとにかく怖かった。

「絶対許さねぇ……」

 そういうと、ショートの女は私の制服の襟首をつかみ、どこかへ引きずっていく。

「く、ぁ……」

 むせかえった直後に襟首を掴まれたので、まともに息ができなくなる。

「ぎゃっ!」

 数瞬後、背中に鈍い痛みが広がり、壁に叩きつけられたのだとわかる。

「んぐ!」

 そして再び水を飲まされる。

 今度は壁にもたれかかり、座っている体制なので吐き出すことはないが、息継ぎができず、窒息しそうになり、なんとか舌を使い、飲み口を塞ぐ。

「勝手に休んでんじゃねーよ!」

「!?」

 鼻をつままれ、再び口を開く。

 水が次々と流れ込んでくるため、息ができない。

 窒息してしまう前に水を飲みきる。

 私にはこの方法しか残されていなかった。

 欲しかったはずの水を、ペットボトルが空になるまで嫌々飲まされた。

「ちっ。もうなくなったか」

「はぁ……はぁ……」

 なんとか水を飲みきり、呼吸を整える。

「水道ならどっかにあったんじゃない?」

「はぁ……は……!?」

 水責めから解放されたと思ったとたんに、ロングの女がとんでもないことを言い出した。

「そういえばあったっけ? えーと」

 ショートの女が壁際へ寄り、蛇口を見つけたらしい。

「これ届かないじゃん」

「上にホース無かったっけ?」

「お、いいじゃんそれ」

 またしてもロングの女の余計な助言。

 だが、その中にひとつのヒントが混じっていたことに気付いた。

 ホースがあるのは上。

 上があるのなら下もあるはずだ。

 そしてここは、女が出て行ったことから上ではない。

 ということは、ここはどこかの地下である可能性が高い。

 周囲の音がほとんど聞こえないのも、それならば説明がつく。

 そこまで考えたとき、女がホースを片手に戻ってきた。

 ショートの女は相変わらず怒っているように見えるが、ロングの女は心なしか楽しんでいるように見えた。

(もしかして、私を監禁してる理由って……!?)

 日々のストレスを発散させるため。

 そう考えると、金髪の女の言動や、自分が受けている扱いにも納得がいく。

 それならば、殺されてしまうかもしれないという不安は感じなくて済むが、今度は別の恐怖にとりつかれた。

 つまり、彼女らがなんらかの鬱憤を抱えるたびに、延々と暴行を受け続けることになる、と。

 再び扉が開き、二人の女が入ってくる。

「なんだよあれじゃ使えねぇじゃねぇか」

「残念だねー」

 どうやらホースは何らかの理由で使い物にならなかったらしい。

「じゃぁさ、動かせる方を動かせばいいんじゃない?」

 だが、結果としては悪い方へ進んだ。

 再び襟首を掴まれ、引き摺られていく。

 仰向けに寝転がされ、後ろ手に拘束された手が痛んだ。

 ちょうど目の前に蛇口が見える。

 ショートの女はためらいなく蛇口をひねる。

「っ!?」

 再び口を閉じるが、無意識に鼻から呼吸をおこなったために水が入ってしまった。

 そこからは軽くパニックになってしまい、ひたすら落ちてくる水にむせかえることになった。

 本当に息ができなくなったあたりで、ようやく水が止められた。

 口だけでなく、鼻からも大量の水を飲んでしまい、苦しい。

「あー、飽きた。もう帰るわ」

 しばらく見ていたショートの女だったが、しばらくするとロングの女と一緒にどこかへ行ってしまった。

「ゲホ、エホっ」

 誰もいなくなり、照明の消された部屋の中に私のむせかえる音と、制服や髪から滴り落ちるわずかな水音だけが響いた。

 その後は、全身が濡れていた気持ち悪さもあり、眠れなかった。


 また足音がする。

 今回は一人だけのようだ。

 扉が開き、照明がつけられる。

 見ると、あのロングの女がこちらへ向かって歩いてきていた。

「ヤッホー。遊びに来たよー」

 この女は危険だ。

 他の二人はただ鬱憤を晴らすために私を殴るのに対し、この女は直接手を上げることはなくとも、ただ純粋に楽しんでいるように見える。

 つまり、他の二人は憂さ晴らしができればそこで終わるが、この女には終わりがない。

「今日はね、いろいろ持ってきたんだよ?」

 軽い口調で言うが、私には恐怖でしかなかった。

 女は台にのり、天井にあるフックに細いチェーンのようなものを掛けた。

 チェーンの反対側には、スナップフックが取り付けられている。

「あ、そうだ。手錠外すけど暴れないでね?」

 うつ伏せに転がされ、手錠が外された。

 逃げるには絶好のチャンスだったが、長い時間同じ体制を強要されていたため、体がうまく動かなかった。

 そうしているうちに再び手錠がかけられるが、手は前に回されていた。

 これで少しは楽になる。

 そう思ったのもつかの間で、すぐに立たされ、チェーンに繋がれてしまった。

「つっ!」

 急にのばされた間接と手首が痛んだ。

「うーん、ちょっと長かったかな?」

 チェーンの長さは、つま先立ちとまではいかないものの、かかとが完全にはつかない程度で、もし長時間放置されればかなり辛いだろう。

「あとはー、ホースだと咥えづらいよね?」

 次に出てきたのは長いゴムチューブのようなものだった。

「でもこれじゃ蛇口に付けられないから、いろいろ考えたんだよ?」

「んぁ」

 首を絞められ、口を開いた隙に、チューブの一端を押し込まれた。

「ウェッ」

 チューブは喉の奥の方まで到達した。

 チューブのもう一端は、いつの間にか天井につるされていたボトルに繋がれたようだった。

 ボトルの中には大量の水が入っており、それがチューブを伝って私に流し込まれる。

「あー、ダメだって」

 すぐにチューブを吐き出そうとしたが、テープでチューブを固定されてしまった。

 流れ込んでくる水の量は少なく、自然に飲み込めるほどだったが、チューブの端が舌よりも奥にあるため、絶え間なく水を飲み続けることになった。

「それじゃーまた来るからね」

 女が出て行き、照明が消された。


 それから、随分と長い時間が過ぎたような気がする。

 そろそろまた誰かが来てもいいような具合だが、誰も来ない。

 いや、その方がひどいことをされないで済むのだが、長い時間真っ暗闇のなかに取り残されると、不安を感じないではいられなかった。


 さらに時間は経ち、眠くなってくる。

 間接が伸びたのか、いつのまにかかかとが地面に着くようになっていた。

 それでも辛い体制でいることには変わりはなかった。

 それでも眠気には勝てず、うつらうつらとしてしまう。

 しかし、眠りに入る直前で、いまだに止まらない水でむせかえり、眠れない。

 前もびしょ濡れにされ、まともに寝むっていないため、眠気はピークに達していたが、流れ込む水のせいで眠れない。

 もしかしたらあと数分で水がなくなるかもしれないという少しの期待は、そのたびに消し去られ、また眠れない暗闇を過ごすのであった。


 意識は朦朧としているが、いつの間にか眠気が薄れてきた。

 そのころには、お腹はパンパンに膨れ、かなりの量の水を飲まされたことが分かる。

 長時間に渡って水を飲まされ続け、眠気にも耐えると、次に襲ってきたのは尿意だった。

(……トイレ、行きたい)

 あれほど嫌だった女たちを、今ほど早く来てほしいと思ったことはないだろう。

 しかし、そんな都合よくは誰も来りはしない。

 結局、誰かがくるまで我慢することはできなかった。

 立ったまま、服を着たままでしてしまったことに恥ずかしさが込み上げ、そのまま一人、泣いてしまった。


 次に女たちが来たのはそれからそう長くない時間がたってからだった。

「ヤッホー、まだ生きてる? って、え? 何? 漏らしたの?」

 はじめに入ってきたのはロングの女だった。

「うわ、汚な……」

 次に入ってきたのはショートの女で、最後に入ってきたのはバケツを持った金髪の女だった。

「よっと」

 バケツの水がかけられ、三度びしょ濡れになる。

「じゃぁ罰だな。殴っていいんでしょ? コレ」

「もちろん。そのためにやっといたんだし」

「わたしもやりたーい」

 無理な体勢で、疲労が限界まで溜まった状態での暴行。

「うっ、あっ! オェっ!?」

 さらに、腹部を殴られると、飲まされた水が逆流し、吐き出してしまう。

 固形物をほとんど口にしていないので、吐き出すのは水だけだったのは幸いだったが、これがかなり不快な感覚だった。

「汚ぇんだ、よ!」

「っ!?」

 金髪の女に蹴られ、さらに水を吐き出す。

 吊るされているため、衝撃を受け流すことができず、徐々に痛みが蓄積されていく。


 殴られているうちにいつの間にか流れ込んできていた水は止まり、吐き出すだけとなっていた。

 飲んだそばから吐き出す、ということからは解放されたが、それも大差ない程度だった。


 気がつくと、再び後ろ手に拘束され、床に寝転がされていた。

 周囲は暗く、いつの間にか女たちはどこかへ行ってしまったらしい。

 飲まされた水は、すでにそのほとんどを吐き出してしまったらしい。

 そしてまた眠気が襲いかかり、それに抗うこともできずに眠る。


 目が覚めても真っ暗闇の中で無の時間を過ごす。

 女が来て強制的に目をさまされる。

 やはり一番危険なのはあのロングの女だった。

 はじめに自覚した自身の変化は音だった。

 いつのまにか足音だけで誰が来たのかがわかるようになった。

 次に起こった変化は光。

 真っ暗やみの中でも、うっすらと物の輪郭が見えるようになった。

 気がつくと、女たちの発する言葉の端々や態度から、自分がなぜ暴行を受けているのかを推察できるようになっていった。

 時には何かをやって誰かに怒られたから。

 時にはむかつく人と出くわしたから。

 理由がわかったところで理不尽な暴力を受けることには変わりはないのだが、それでもわけもわからずに殴られているよりは良かった。

 そして、第六感、というのだろうか。

 危機察知能力が研ぎ澄まされたようにも感じた。

 ロングの女が来る直前には、どんなに疲労がたまって深く眠っていたとしても目が覚めた。




 そんなある日、もう何度目かはわからないが、私は目を覚ました。

 与えられる食事は徐々に簡素になっていき、最近はドリンク剤だけで済まされることも珍しくなく、ただでさえ少し細いといわれていた私は、今ではかなりやせ細っていた。

 それでも私はまだ生きている。

 こんなところで死ぬつもりもない。

(全員……いる)

 足音と気配で、ショート、ロング、そして少し間をあけて金髪の女が階段を下りてくるのがわかる。

 扉が開くと、ロングとショートの女が無言で私を仰向けに取り押さえた。

 そして、最後に入ってきた金髪の女が私の横にしゃがみ込む。

 なんとか首を回して見ると、ロングの女が金髪の女に何かを渡すのが見えた。

 金髪の女がその何かを私の胸に押しつける。

 そして。

「っ!? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 そして私の全身に激痛が走った。

 手足が私の意志に関係なく暴れ、ロングとショートの女がそれを押さえつける。

 その間も激痛は止まることなく私を駆け巡る。

 そこでようやく、「何か」の正体がスタンガンの類であることに気がついた。

「もうちょっと大丈夫だよね?」

 金髪の女が言うが、もちろん私に聞いているわけではない。

「かっ、はっ!?」

 さらに電圧が強められ、まともに悲鳴すら上げられなくなる。

「ね、ねぇ、ちょっとヤバいんじゃない……?」

 ショートの女が言うが、金髪の女は聞き入れない。

「は? 大丈夫だって。どうせおもちゃなんだし」

「づぁ!?」

 悲鳴どころか、声にならない声が出始める。

「やっぱりヤバいって……」

「あのさぁ、あんまうるさいと後であんたにもコレやるから」

 そう言ってさらに電圧が強められた。

「カヒュッ! ハッ!? ア!?!?」

 横隔膜が痙攣し、呼吸もままならなくなる。


 そして、一際大きな電気の弾ける音とともに、部屋中に私の血が飛び散った。








水月ナナちゃん(12)に、この場を借りて謝罪いたします…………。

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