迷子のドラゴン
(それでハク、貴方はなんでこんなとこにいるの?)
(あ、それは…僕ね、いつもは大っきな山にみんなで住んでるの。それでね、少しお散歩しようと思って山から降りてみたんだ。そしたら、変なおじさん達に捕まっちゃって…途中隙を見て逃げたんだけど、お腹が空いて…)
(動けなくなっちゃったってことね!)
(うん…多分、お母さん、お父さん心配してるかも。)
そこで私は気づいてしまった。
(多分、貴方のお母さんかお父さん近くに来てるかも!)
先ほどギルドで聞いたエンシェントドラゴンの話だとそのドラゴンは必死になってきっとこの子を探しにきたんだ!
(どうしよう!急がないと殺されちゃう!)
(え?!そんな…!)
(とにかく行くよ!)
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「はあっ!」
キィンッ
「ギュアァアァァァ!」
「クックック…なかなか強いじゃねぇか…いたぶりがいがあるぜぇ」
「ブレイン!お前はどこの悪人だ!」
下を舐めずるガタイのいい極悪人面の男はこう見えて王都の騎士団長ブレインである。
本人よりもでかい大剣を軽々と持ち上げ、エンシェントドラゴンに斬りつける。
横でため息をつくクロエの父も負けずに手に嵌めているガンレッドを地面に落としエンシェントドラゴンの足場を崩す。
《ウィンドミル》のパーティーは主に魔法使いが多いので遠くから援護、《ヴァンガード》は引きつけ役だ。
そして、ジーク、ゼノも騎士団長ブレインやクロエの父、ライオネルと一緒に隙をみて攻撃していた。
にしても、さすが、SSランクのドラゴン。通常よりも硬い。
向こうも大分体力を消耗しているみたいで全身も傷が増えている。
ゼノは不思議に思っていた。いや、もしかすると団長やギルド長、ジークも思っているに違いない。
このエンシェントドラゴンには殺気がないのだ。
寧ろ何か、探しているような…
「ぐっさすがに強ぇな…ぜぇ…ぜぇ」
「やられてたまるかよ……はぁっ」
2人も大分息が上がって来ている。
俺もみんなそうだ。
くっこのままでは!
っ!
ライオネルが攻撃を受け、一瞬次の動作が遅れてしまった。
対するエンシェントドラゴンは次の攻撃を仕掛けている。当たれば致命傷だ。
「危ないっ!!」
幸い1番近くにいたゼノがライオネルの前に立ちはだかる。
「ギュアァアァァァ!」
エンシェントドラゴンは後数センチの所でゼノに攻撃を与える……ハズだった。
ーーーぷよん。
「なにっ?!」
「ギュアァア?!」
何か柔らかいモノで攻撃は弾かれてしまった。
「オイオイ、どーゆう事だぁ?」
「俺にもさっぱり…あ、」
右手を見ると手の甲に紋章のようなものが浮かび上がり光っていた。
「いや、まさか…でも。」
ーーードドドドドドドドドド
「ん?今度はなんだぁ?!」
「別の魔物か?!」
ーーードドドドドドドドドドドドドドドッ
「まってぇぇぇぇえええーーー!!!」
「キュァァァァァアアアーーー!!!」
「なっクロエぇえ?!!?」
「え、クロエちゃん?!」
「んだ?このガキンチョは?」
「あの時の…」
そこにはボロボロになったハクとそれに乗ったクロエがいた。