44.国王陛の接待営業
その後は、さらに大変だった。
なんと今度は王弟殿下に続いて、鉱山視察を名目に国王陛下まで我が領地へやって来たのである。
騎士の方から陛下来訪の知らせを受け、殿下との話を一旦切り上げて出迎えに向かった。
王家の馬車から降りてきた陛下を見て、私は思わず遠い目をした。
「…………」
……やっぱり、浮いている。
先ほどまで、このぼろ屋敷には王弟殿下一人でも十分すぎるほど浮いていた。
そこへ今度は、国王陛下まで加わった。
そして現在。
我が家の古びたソファには、国王陛下と王弟殿下が並んで座っている。
「…………」
浮いている。
ものすごく浮いている。
しかもレオンハルト殿下は、なぜか先ほどからずっと俯いたまま、妙にもじもじしている。
その隣で、国王陛下は実に堂々としていた。
「レオンハルトはな、昔から優しい男でな」
「……はい」
「仕事もできる。責任感も強い。いざという時には頼りになるぞ」
「……そうですね」
「それに、エレノア嬢のことを本当に大切に思っている」
「…………」
レオンハルト殿下の顔が、ますます下を向いた。
しかし、陛下は止まらない。
レオンハルト殿下がどれほど優秀か。
どれほど誠実か。
どれほど頼りになる男なのか。
そして最後には――。
どれほど私を愛しているか。
そこまで語り始めた。
(いやいやいや……)
私は笑顔を貼り付けたまま、心の中で頭を抱えた。
(私は一体、何を見せられているの?)
国王陛下による、実の弟の猛烈な売り込み。
その隣では、当の本人がひたすら俯いている。
私にできることは、ただ一つ。
この何とも言えない時間が、一刻も早く過ぎ去ることを願いながら――。
笑顔で相槌を打ち続けることだけだった。




