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2.貧しさ
私が王都へ出たのは、家族をこの貧しさから少しでも遠ざけたかったからだ。
我が領地ハワード子爵家は岩山に囲まれている。
冬は長く、吹き下ろす風は冷たい。
土は痩せ、どれだけ手を掛けても畑から得られる実りは少なかった。
子爵家とは名ばかり。
食卓も、着るものも、暮らしぶりも、領民たちとそう変わらない。
お母様は、そんな家には似つかわしくないほど美しい人だった。
侯爵家に生まれ、何不自由なく育った人。
前王の婚約者候補に名が挙がったこともあるという。
それなのに父を選び、家出同然でこの貧しい領地へ嫁いできた。
長い髪を無造作に束ね、冬になると白い指にはいくつものあかぎれができた。
それでも、お母様はいつも笑っていた。
「お父様と一緒なら幸せよ」
そう言って笑うお母様は、何よりも美しかった。
私は、そんな母の手が嫌だった。
あの綺麗な人の手を、ここまで荒れさせる貧しさが嫌だった。




