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人畜無害を極めていたらクラスの美少女がやけに構ってくるようになった話。  作者: ちーずとーすと


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13/13

エピソード12

ついにこの間撮影した写真が掲載されている雑誌の発売日がやってきた。


俺の元に送られてきた雑誌には中高生に絶大な人気を誇る読者モデルたちや恋リアに出演中のタレントたちのファッションスナップが大々的に取り上げられている。


俺の写真が載っているページは後半の数ページ、端の方に載ると聞いていたのだが蓋を開けてみれば数ページに渡る特集が組まれていた。事務所のイケオジ曰く、編集長が俺を凄く気に入ってくれたらしく急遽ページを増やして発売することに決めたらしい。人畜無害を極めたい俺としてはありがた迷惑ではあるが協力した以上俺にも責任はある。


撮影から今日までは髪型はノーセットで登校しているのでおそらく誰に気づかれることもないだろう。そうたかを括っていたのだが、、、。


教室に入るとすぐに女子数名に囲まれてしまった。嫌な予感がするなぁ。俺は何事もないように軽く挨拶をした。


「おはよう、来栖さんと鷹那志さん。」


「おはよう卯月くん!!ねーねーこの写真!!絶対卯月くんだよね?!」


「いや、、、人違いじゃないかなー?」


「最近髪切ってから顔がよく見えるようになったけどこれは明らかに卯月だよなぁ〜」


「そうかな?ただ似てるだけだと思うけど、、、」


身長150センチ弱の人懐っこい女子と身長160以上はありそうなスタイル抜群ギャルからそれぞれアツい視線が注がれている中、完全に俺の目は泳いでいたっぽい。


どう誤魔化そうか考えているとそこに聞き覚えのある声が乱入してきた。


「ちょっと2人とも!卯月くんをいじめたらダメだよ〜!!」


いつもの御子柴さんが登場。彼女たちはいつも3人でいるので違和感を感じていたが彼女がきたことによって急にいつもの教室の風景に戻ったようだ。


「まほりんおはよ〜!!みてみて!これ絶対卯月くんだよね?!」


「真帆はどう思う?これ絶対卯月っしょ?」


2人から差し出された雑誌の特集ページを見て御子柴さんが俺と雑誌を交互に見比べる。


頼む御子柴さん、ここは否定してくれ。じゃ無いと俺の平穏な学校生活が終焉を迎えてしまう。そう願っていると暫く考えた御子柴さんが口を開いた。


「あー!確かにめっちゃ似てるかも!!でも髪型とか雰囲気全然違うし、あれ?よく考えたら全然似てないかも、、、」


ナイス!!だけどなんかモヤッとするな。それ、俺なんだよなぁ。


そしてピンチを救ってくれた御子柴さんが2人に別の話題を振ってくれたことで俺はその場から一旦解放されることになった。このご恩は一生忘れません、女神様、、、。


しかしここからが鬼門の連続だった。教室移動で歩いている時や休み時間、そして放課後まで俺はおそらく雑誌を見たであろう生徒たちから声をかけられまくった。もう途中で面倒になって認めてしまおうかと思ったけど、それだとさっきの御子柴さんの気遣いを無碍にしてしまうような気がして俺はひたすらにかわし続けた。


自宅に着くと俺はいつものようにソファに転がった。いつもよりどっと疲れが押し寄せる。こんなに多くの人と話したのはいつぶりだろうか。慣れないことをするもんじゃないな。


そんなことを考えているうちにだんだん眠くなってきて俺は着替えもせずにその場で寝落ちした。


それから目覚めたのは御子柴さんからの着信があってから。どうやら家の前に来ているらしい。


俺は少し軽くなった体を起こして御子柴さんを家にあげた。


「急にごめんねー!!寝てたでしょ?」


「ばっちり爆睡してたけど大丈夫、寧ろ起こしてくれて助かったよ。まだ帰ってきてから何もしてなかったし」


そして御子柴さんはいつものようにエプロンに袖を通してキッチンに立った。


初めて一緒に夕食を食べた日からこうして週に何度かわざわざ夕食を作りにきてくれているのだ。費用は俺が持つと言ってはいるものの頑なに拒んでくるので折衷案として作りに来てくれる時は食費折半ということにしている。


御子柴さんだけに押し付けるわけにはいかないので俺は助手という形で隣に立って彼女のサポート。すっかり慣れてしまったけど御子柴さんの近くにいると何故かとても安心するのだ。


「ねーねー、あれ卯月くんなんでしょ?」


「何のことかな、、、?」


「へー?とぼけるんだー?助けてあげたのにー?」


そういうと御子柴さんは料理の手を止めていつもの悪戯っぽい顔で俺の頬を軽くつねってきた。


「わかった!わかったから!そうだよ俺だよ!」


俺は観念してことのあらましをざっくりと説明した。無論、御子柴さんに見合う男になるためにイメチェンしたというところは端折ったけど。


一通り話し終えたところで御子柴さんは納得したように手を叩いた。


「なるほどー!大変だったね、、、」


「撮影は楽しかったけどこんなに話題になるとはね、、、」


「でも卯月くん、身長高いし長い前髪からちょっとだけ見える顔もカッコよくて性格も優しくて私はずっとそういうところ密かに推してたというか、、、」


そこまで言うと御子柴さんは顔を少し赤くして俯いてしまった。


身長に関しては中学から20センチほど伸びて今は170後半、吏月と並んでもそんなに変わらないくらいだけど正直あまり気にしたことは無かった。


「ただ美容室に行っただけなのにまさかこんな事になるなんて思わなかったよ。人生何があるか分からないね。」


すると隣にいた御子柴さんは俺の背後に回って腕をお腹の方に回してきた。背中に御子柴さんの御子柴さんが押し付けられているような状態だ。俺は思わずたじろいでしまった。


「み、御子柴さん、、、?」


「、、、」


「ちょ、御子柴さん当たってる当たってる!!」


そんなことはお構いなしと言わんばかりに腕の力が少し強くなった。


「私だけが卯月くんのカッコいいところ知ってたのにな。ちょっと寂しいかも。」


背中越しにも伝わるくらい御子柴さんの心拍数が上がっている。こんなわがままな一面もこの数ヶ月でとても愛おしいと感じるようになってしまった辺り、俺はやっぱり御子柴さん無しではもうダメなのかもしれない。


「御子柴さん、ちょっといい?」


俺が諭すと御子柴さんは回していた腕をすっと解いた。


そして今度は俺の番。やられっぱなしじゃ男が廃る。それにこの胸の高まりはどうやっても落ち着いてくれやしない。それならいっそのこと振り切ってしまえばいいんだ。単純でバカだけど、そうした方が俺も彼女も逆に冷静になれる気がした。


俺は向かい合った御子柴さんを抱き寄せた。身長差があるからか俺の胸の辺りにちょうど御子柴さんの顔がくるような感じだ。そして俺はそのままゆっくり彼女の頭を撫でた。相変わらずサラサラの髪が気持ち良い。香水とは違ういい香りがする。


「御子柴さん、俺の事は今度から陽太郎って呼んで欲しい。」


すると御子柴さんは少し上擦った声で返事をしてくれた。


「ひゃい!!!陽太郎くん、、、?」


「うん、陽太郎だよ。俺も真帆って呼んでいいかな?」


御子柴さんは照れているのか真っ赤にした顔を俺の胸に埋めながらこくこくと頷いた。


そうして暫くの間ハグを続けた俺たちは正気を取り戻し料理に戻った。さっきまで抱き合っていたこともあってお互い少し照れていたけど完成する頃にはすっかりいつもの調子に戻っていた。


準備を終え、2人で向かい合ってから夕食を食べ始める。もはや日課のようになっているけれど、当たり前じゃないってことは忘れないように今日も色んなものに感謝をしてから頂く。


「やっぱり御子柴さんの作るご飯は美味しいな。」


「自分で言ったのにもう忘れちゃったのー?真帆だよ! ま・ほ!! 陽太郎くんのアホ!!」


「ごめんごめん、そうだった。美味しいよ、真帆?」


「う、うん!ありがと、陽太郎くん、、、?」


しばらくそんなぎこちないやり取りをしながらあっという間に食事を終えて時間は午後9時を回った。


今日は流石に御子柴さんを家まで送り届けよう。そうして解散の旨を伝えると今日もエントランスの下までで充分だとやんわり断られた。


こうして俺の家に来る時は毎回決まって9時を過ぎることが多いのだが俺たちはまだ高校生で、ましてや御子柴さんは女子なので毎回1人で帰らせるのもあまり良くないと思っている。


「真帆、毎回こんなに遅くなって大丈夫? 親御さんは心配とかしない?」


すると御子柴さんの表情が一瞬寂しげになり、また先ほどまでと同じように笑顔に戻った。


「大丈夫だよ!ちゃんと連絡取ってるから!陽太郎くんは気にしなくてへーき!!」


そういうと御子柴さんはバイバイと手を振っていつものように家の方面へと歩いて行った。そんな彼女の後ろ姿はなんだか少し寂しそうな、必死に何かを隠しているように見えた。


人には誰にも知られたくない過去がある。それは俺も経験しているからこそ理解できる。ただ、俺の前では安心して弱音を吐いてくれるようになって欲しい。そして逆も然り、支えあっていけるような関係性へと進展させたいと俺は強く感じた。


太陽にも月にも隠れたい時だってある。


まるでそんな事を伝えるかのように、今日の空を流れる雲は月を見せたり隠したりしていた。

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