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第一章エピローグ2

 シャアァァァ……と足元で大量の水滴が跳ねる音が鳴り、白い湯気が個室を満たしていく。

 一日の終わりに浴びるシャワーはやはり格別だ。湿気や寝汗でベタついた全身を細かく丁寧に洗いながら、私は数時間前の出来事を思い出す。


 クエストクリア後、私達はいつの間にか建物の外へと転移させられていた。どうやらイゾルデ消滅直後に屋敷が倒壊したらしく、目の前には元のそれよりも二回り以上小さくなった洋館がボロボロの状態で建っていた。

 しかし、幸いにも修復や改築に建築士のサブジョブは不要で、必要素材さえ集められればすぐに使えるようになるとのこと。数日各地を最高効率で周回すればいける、と宣った先輩達の目がやや狂気に染まっていたのが気掛かりではあるが、それもまたゲームの醍醐味なのだとルナセラは言っていた。


 イゾルデによって新生された指輪……『幽姫の(リング・オブ)指輪(・イゾルデ)』は、多数決によりマオ先輩が所有することとなった。彼女からはギミックを見破った私の方が適当と言われたが、最終的に解除できたのは彼女のジョブのおかげなので、私は首を捩じ切れんばかりに振って辞退した。


 他にもマルク王討伐やクエストクリアの特別報酬など、後々きちんと精査しなければならないモノは多々あるのだが、個人的に一番収穫があったのはやはりメインジョブのレベルアップである。まさか一日でレベルが 37 にまで上がるとは思わなかった。そもレベル上げのために屋敷へ訪れていた身なので、本来の目的は充分達成できたと言っていいだろう。

 加えて、マルク王との戦闘で受け流しやパリィを何度も行っていたおかげで、念願の【流々合気】と【ジャストパリィ】を習得することもできた。


「……正直、貰い過ぎなぐらいだな……」


 シャワーを止めて湯船に浸かる。あれだけ激しい戦闘をしたというのに脳以外は殆ど疲労していない。むしろ脳が疲れ過ぎてこのまま眠ってしまいそうだが、VRゲームのやりすぎで風呂場で溺死など不格好にもほどがある。意識をしっかりと保って湯船から上がった。


 自室で髪の毛を乾かしていると、傍に置いていた携帯が不意にピコンピコンと立て続けに鳴った。どうやらメッセージアプリに誰かから連絡が来たらしい。ドライヤーを止めてから開くと、そこには【日野塚】と【猫戸】の二つの名前が並んでいた。



『夜分遅くに失礼。日野塚哲郎です。悠真君から連絡先聞いてメッセ送りました。今日はどうもありがとう。龍宮院さんのおかげでとても快適に屋敷を攻略でき、本当に助かりました。多分駒音も同じ事言うと思うけど、今後僕ら二人の力が必要になった時はいつでも頼ってください。(サムズアップのマーク)』


『こんばんは、まさかまさかの猫戸先輩だよ! 急にごめんね。どうしてもお礼を言いたくて悠真君に連絡先を教えてもらいました。今日は本当にありがとう! 七弥ちゃんのおかげでとっても楽しかったよ! もし私にできることがあれば(主にBOO内で)何でも言ってね! フィールドの端っこからでも駆けつけるから! また一緒に遊ぼうね! おやすみにゃ!(猫のスタンプ)』



「……ふふ……」


 思わず笑みが零れてしまう。比較的事務的な文章の日野塚先輩に対し、猫戸先輩は本人の台詞がそのまま文字に書き起こされているようだ。実にあの二人らしいメッセージである。

 私が感謝の旨をそれぞれ丁寧に書いて返信すると、次いで悠真からメッセージが届いた。ほぼ同時に送られてくるとは、彼らは他人には見えない何かで繋がっているのだろうか。いや、実際にそうなのだろう。

 お互いにお互いを想い合うことができる関係……トリスタンとイゾルデ、そしてマルク王がもし異なる結末を迎えることができたとすれば、彼らのような関係が最も望ましかったのかもしれない。



『今日はありがとうな。本当はレベル上げだけだったのに屋敷の攻略まで手伝ってくれて』


『こちらこそ。中々に貴重な体験だった。おかげでBOOの楽しさが少しは理解できたかもしれない』


『おっ、それは良かった。なんなら明日も一緒にプレイするか?』


『いや、流石に脳味噌が疲れたからな。明日はログインせず休むつもりだ』


『そうか。それじゃあ午前中か午後のどっちか俺にくれないか? ほら、駅前の和菓子店の菓子を奢るって約束してただろ。時間が経ってうやむやになるよりは、早めに消化しておいた方が良いと思ってさ。もちろん別日がいいならそれでも全然構わないぞ』



「むぅ……」


 悠真め……せっかくこのまま合法的かつ穏便に約束を無かったことに出来ると思っていたのに、何故よりにもよってこの場でその可能性に言及した。文字に残すな文字に。後に引けないだろう。

 別日にしようにも恐らく具体的な日時を訊かれるに違いない。仕方なく私は覚悟を決めた。



『明日で問題無い。時間はできれば午後で頼む』


『了解。じゃあ午後二時に駅の南口付近に集合でいいか?』


『ああ。ただ、天気が悪かった場合はまた今度でも構わないか?』


『おう。なんなら俺がお前の家に配達しに行くでもいいぜ』


『いや、別にいい。それに私はテイクアウトよりもイートイン派なんだ』


『マジか……初めて知ったぞ』


『言ってないからな』



 正直、悠真をパシリにできる機会をふいにするのは勿体無い気もする。しかし、無理に届けさせた所為で菓子が崩れるなどすれば元も子もない。彼に限ってそんな雑な運び方をするとは思えないが、転倒や人混みなどによる万が一もあり得る。

 それに和菓子は鮮度が命だ。運搬中にも刻一刻と味は落ちていく。ならいっそイートインで味わった方がお得だろう。……クーポン券の割引も使えるし。



『そんじゃおやすみ、七弥。また明日』


『(おやすみと書かれた奇妙なキャラスタンプ)』



「…………っはぁぁぁぁ…………疲れた」


 ボフッとベッドにうつ伏せに倒れた状態で呟く。乾かし終えたばかりの髪を結う気力も無い。だが今夜ぐらいは別にいいだろう。雨上がりの涼しい夜の気温に、脳の疲労と風呂上がりの火照った身体が相まって心地良い。久々にぐっすりと寝れそうだ。


「……ぁ……悠真から……来週の……イベント……聞き忘れ……」


 ……まぁ…………いいか…………。

 瞼が重くなる。抗えない眠気というものは、どうしてこんなにも急に襲ってくるのだろうか。

 私は最後の気力を振り絞って部屋の電気を消すと、ガクッとリモコンを持ったまま力尽きた。




PN:リュウナ 所持金 [47890 G]

メインジョブ:剣聖 Lv. 37

サブジョブ:※解放条件未達成


《ステータス(成長係数)》

HP(生命力):460

MP(魔力):122

SP (スタミナ):188

STR(筋力):194(40)

VIT(耐久力):10(0)

DEX(器用さ):43(5)

AGI(敏捷性):158(30)

INT(知力):38(5)

LUK(運):97(20)


《装備(見た目)》

武器:聖刀〈無窮合一〉 ウェッポンスロット①:なし

            ウェッポンスロット②:なし

頭:無し(無し)

胴:無し(剣士の着物)

両手:無し(無し)

腰:無し(剣士の袴)

両足:無し(剣士の足袋)

アクセサリー:無し(清純の髪留め)


《オリジンスキル》

【剣聖ノ圧】【金剛穿刺】【明鏡止水】


《コモンスキル》

【居合切り Lv. 7】【兜割り Lv. 4】【断壁 Lv. 4】【鍔打ち Lv. 2】

【双月斬り Lv. 3】【ステップフット Lv. 7】【縮地 Lv. 4】【影纏い Lv. 5】

【霊鬼活殺 Lv. 4】【瞬歩 Lv. 3】【流々合気 Lv. 1】【ジャストパリィ Lv. 1】


《加護》

・剣神の加護

・■■■■(※解放条件未達成)の加護?

というわけで、第一章はここまでです。ご拝読誠にありがとうございました。

本編では七弥がゲームを始めてまだ二日しか経っていません。なんというスローペース……筆者も我ながらびっくりしています。

この後は登場したキャラクター何人かの設定を紹介後、充電期間をいただくつもりです(正直、最近スランプ気味なので治したい……)。せめて自分が書きたい話まで書けたらいいのですが、無才の身としては常に綱渡り状態で不安がボンバーうあああああっ……失礼、取り乱しました。とりあえず頑張りますので、引き続き暖かい目で見守って下されば幸いです。

改めまして、ここまで読んでくださった方々に厚い感謝の気持ちと、エムさんのありがたいご加護を送らせていただきます(何かが盗まれそうになったら犯人は死ぬぞ♪)。

ちなみに彼女は三章あたりで再登場の予定です。ごめんねエムさん。

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