四十九話
「ねぇ、一体どういうこと?篠崎さん。」
………どうもこうもあいつが勝手にやった事なんだけど。
今、午後の授業が終わり目の色を変えたクラスの女子に質問……尋問されている状態なのだ。
「永島君と仲良いの?」
仲良くねーよ。
「篠崎さん?」
「私今日バイトだから。」
その場を逃げる。
「ちょっと待ちなさいよ。」
待てと言われたら絶対に逃げる。それがポリシー。
女子のギャーギャー言う声が廊下に響き渡る。そんなに声が出るなら合唱部なり演劇部なり入ったほうがいいと思う。
息を切らしようやく昇降口にたどり着く。
なんでさー女子ってさー、たかがさー羽交い締めされて引きずられて来た事にさー質問連呼するのー?
やって欲しけりゃ永島に頼みゃいーじゃん。
心の中で愚痴りながら革靴をはく。
「あぁー、千遥ちゃんじゃねぇー?」
……金髪馬鹿登場か。
「なんだよ金髪馬鹿、気安く名前を呼ぶな。髪の毛の色が変わりそうだ。」
わざとらしく頭を掻きむしる。
「掻くとボサボサになっちゃうよぉ。」
「お前の髪はつねにボッサボサだがな。」
「これはこういうヘアーなのぉ。」
「あ、そ。すごーい。」
「……やけに棒読みだなぁ。」
「えー、そう?」
すっとぼけたようにそう言った。
「じゃ、私バイトあるから。」
「おぅ、ガンバぁ。」
気が抜けるような声援を受ける。
あぁー、やる気なくしたわ。