四十話
メガネショップに戻ったら、眼鏡はきちんと出来ていた。
黒縁以外の眼鏡は初めてだが……、縁の色が薄いから違和感があるな。
「カワイイよ〜、俺が選べなかったのが悔しいけど……。」
「千遥ちゃんは淡い色が似合うね。」
……、褒められるのは慣れているが(成績関係で)少しくすぐったいな。
「………。」
「あれ?千遥、照れてる?」
いや、まぁ。リップサービスでも照れるものは照れる。
ただムカついたので永島の足を思いっきり踏んでやった。
「痛っ!」
「調子に、乗るな!」
ふんっ、と鼻を鳴らして勝ち誇った笑みを浮かべる。すると、顔を覗きこまれる。
「何?」
「千遥って……。」
指を頬に当てられて。
「……ぬぅっ!」「あ、八重歯がある。早田、見てみ。」
「……本当だ。」
頬を吊り上げられて歯を剥き出しにされる。
八重歯ごときに何を騒いでいるんだ。
「……痛っ!」
「馬鹿野郎、何をする!」
鳩尾を殴る。わりと筋肉が無い私でも急所を殴ればダメージが高いはずだ。……と思ったんだけど……。
「……っ!」
頬をムニュっとされる。
「……やめぉ!」
「頬っぺた柔らかい。しかも触り心地いい♪」
「………。」
せっかくの攻撃はあまり効かなかったし、勝手に頬を掴まれるし……。
そろそろ本気で怒るぞ。
思いっきり永島を睨みつけていると、
「永島君、そろそろやめたほうがいいよ。」
「……ちぇー、面白いのに〜。」
早田の声で、やっと解放された。なんか頬に違和感が残ってる。
「もうそろそろ帰りたいんだけど……。」
「ああ、じゃあまたね。メール送るよ。」
「わかった。」
そう言ったけど、返信する気はあまりないけどな。
まぁ、とりあえず早田は帰ってくれた。