三十八話
Side龍斗
千遥は俺達の注文をし終えると、おもむろに英語の参考書をだした。
「待つ間、勉強するの?」と、言ってみたが返事はなかった。
だけど、すっと「そうだ。」と言わんばかりに視線を向けてくれた。
最初に声をかけた頃は全くこちらを見てもくれなかったから少し嬉しい。
早田は千遥の様子を見ていたが、特に声をかけたりしなかった。
……千遥がこの店でバイトをしているらしい。男装喫茶って変なイメージがあったけど、普通の喫茶店とあまり変わらない。
ただ女の子が楽しんで仮装している……、そんな感じかな。
千遥もこの店で、さっきの……愛里さんみたいな格好をしているのだろう。普段の学校で休み時間に男子と女子が制服を交換して着ている人を見たことはある。
……もしかして千遥もそういうのがやりたいのかな?
そう考えると普段の千遥から想像出来ないから少し可笑しい。
今度学校で俺のブレザー着させてあげようかな。
そんな事を考えていると、少し笑ってしまい、千遥に「何笑っているんだ?脳がおかしくなったのか馬鹿者。」と言われてしまった。
「千遥ちゃんは英語が苦手なの?」
早田が千遥に向かって言った。
千遥はけだるそうに顔をあげ、
「得意科目に比べたらな。」
と、尤もな事を言う。
「じゃあ、教えようか?俺結構英語得意だし。」
図々しい奴だなぁ。多分千遥は「断る。」って言うはずだ。
「断る。」
言ったー!予想当たったよ。すげえ俺。
早田は口ごもると思ったけど余裕そうな顔で「じゃあ問題14の英訳をミスしているけどいいの?」と言った。
千遥はビクッとなって、しげしげと問題を見る。
途端に拗ねた顔をして問題の英訳を直している。
「どーも。」
明らかに不満げな顔をしつつも感謝の言葉を早田に向けた。
「俺は文系が得意だけど千遥ちゃんはどっち?」
「理系だ。」
「永島君は?」
「えっ!ああ……、理系かな。」
いきなりそういう話やめろよ……。
「お前、理系なのか?」
千遥が疑念がこもった声で聞いて来る。
「どうしてだい?」
「コイツに前、数学教えてやった。馬鹿だった。」
ちょ……、いや、数学は無理だけど理科なら……。
「俺、理科なら……。」
「じゃあミトコンドリアの説明をして戴こうかしら?」
……無理だ。
「ほら、馬鹿でしょ?」
「……くっ!」
言い返せない……。ミトコンドリアってなんだよ。
「まぁ、ほら。人には得意不得意があるから。」
早田にフォローされてしまった。
資格試験の日が近づいていてなかなか小説が……orz
なんでノリで「受けます!」とか言ったんだ……。