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偽りの悪旗~地球(テラ)再調査編~序章 深海に潜む異邦の巨艦  作者: 新景正虎


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第13話 飛行訓練

 キスラの飛行甲板上では交代で日を浴びる乗組員で賑わっていた。


 幾人かで集まって遊戯を楽しむ者、釣竿片手に釣りをするもの。様々である。


 そこにユリウスはフェリウルをともない甲板に姿を見せると、軍服を脱いだラフな姿の参謀たちが集まる。


「閣下、航空隊の訓練はどうされますか」


「周囲の状況は?」


「異常は報告されておりません」


「そうか」


「閣下。どうされます?」


 その問いにユリウスは、一時顎に手を当てて考え込む。


「そうだな。皆は一通り外に出て休んだか?」


「はっ」


 参謀の返答にユリウスはうなずくと航空参謀に向き直る。


「日暮れまでにすませられるなら」


「お任せを」


 ユリウスの言葉に航空参謀は敬礼で応える。



「これより、離発艦の訓練を行う!」


 乗組員が姿を消した飛行甲板の一角が口を開け、艦内から昇降機械エレベーター)がせりあがり、いくつかの戦闘機が姿を表す。


 その一つがアメリカ海軍やイラン空軍で使われていたF-14戦闘機である。


 しかし、オリジナルではない。


 ゼフィル共和国が撮影した映像や公開されている性能などから性能を分析し、独自の方法で再現生産した機体である。


 しかし、オリジナルとは違う部分もある。垂直尾翼はステルス性を意識したV字状に変更されており、同様にステルス性を高めるためにウェポンベイにはゼフィル独自のミサイルの格納庫と光学迷彩制御ユニットを内蔵したコンフォーマル・ステルス・ユニットが取り付けられている。


 可変翼を展開するF-14。その隣のカタパルトには別の戦闘機が接続される。


 F-15戦闘機。


 日本人にも馴染み深いアメリカ製の制空戦闘機。しかし、オリジナルとは異なりこれもまた空母への離発艦を可能にする改修が施されている。


 陸上滑走路より強い着艦の衝撃に堪えるよう機体の強度を見直し、V字尾翼やステルスコンフォーマブルポッドだけではなく、カタパルトに固定して空母からの発艦を可能とする為のローンチバーとダブルタイヤが施されたノーズギアがオリジナルと違う。


 最終チェックが終わり、カタパルトに接続された戦闘機は光学迷彩を展開し、その姿がランディングギアを残して揺らめくと青空と飛行甲板と同化し、溶け消えていく。


 しかし、噴射を遮るジェットブラストディフレクターがせりあがると、不可視化された戦闘機のジェットエンジンから轟音が響きだす。


 続いて早期警戒機が姿を表す。だが早期警戒機の特徴ともいえる円盤状のレドームはなく、機体の上下左右に非可動式のレーダー発信ユニット、イージス艦同様のフェイズドアレイレーダーを搭載している。


 管制官からの指示の下、放電とともにカタパルトが勢いよく放たれ、透明化された戦闘機を打ち出していく。



「全機発艦後、上空で編隊を組み、本艦上空をパス、その後着艦訓練に入ります」


「ああ」


 光学迷彩によって可視光域も含めた電波は力場によって偏光されるが、その力場は周波数単位で行われるため特定周波数のみを偏光させず透過することで意図的な穴を生み出すこともできる。

その穴となった周波数帯の電波を使うことで可視光を含めた電波探知の妨害と通信の両立を可能としている。


「各機体、問題ありません」


 一通り訓練を済ませると今度は着艦作業にはいる。


 戦闘機も母艦も不可視の状態なので彼らは目視に頼らないセンサー頼りの着艦作業となるが、事前にシミュレーターを使った訓練をこなしていた彼らは難なくこなす。


「警戒を怠るな。ここは日本の防空識別圏内だ。スクランブル戦闘機に備えよ」


 戦闘機と早期警戒機が全機着艦すると、彼らはあわただしく収容作業に移る。


 程なく日暮れを迎え、大平洋に沈む夕日を背にキスラ・イプニルは再び海中に潜る。


 黒潮の流れの中、海中で一定の深度を維持したまま待機するキスラ。


「索敵、周囲の状況は?」


「海上、海中共に反応ありません」


 その報告にユリウスは考え込む。


「日本の自衛隊でもまだ我々を補足できる程の技術に到達していないか」


「そのようです」


 傍らにいるフェリウルがそう答える。しかし、彼女から見たユリウスの様子は安心のような残念なようにも見え、彼女は口元にほんのすこしだけ笑みを浮かべる。


「閣下、発光信号を確認。本隊が到着しました」


「艦長、結合作業の指揮は任せる」


「はっ」


 やがてキスラの後方よりさらに巨大な艦が探照灯で前方を照らしながら近づいてくる。


 キスラの艦底から離脱した二隻の護衛艦が周囲を警戒するなか、巨大な艦が四隻の護衛艦を伴ってキスラの背後で停止する。



 これがキスラ・イプニルの本体とも言える司令艦。


 戦闘力は自衛程度だが、情報の取得、分析研究、乗員の休息、食料の生産などを行う、移動要塞とも呼んでよい存在。


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