第一章 ニューイヤーパーティー~エヴァン~
私は少し疲れたので別室で軽食を摘まんでいた。
椅子に座って一息ついていると男性客が物珍し気に私に近づいて来た。
呼気からアルコールの香りを強く漂わせている。
「君ってさぁ、あの『聖女マヤ』?」
「いえ、聖女なんて大したものじゃありません」
「でも異世界人なんだろ?本当に人なの?確かめてあげるからちょっとこっちおいで」
と言いかけた時、男の手を掴む者がいた。
「エヴァン君!」
王立軍の士官服に身を包んだ長身のエヴァンが男を見下ろしていた。
「こいつから離れろ」
ひっと声を上げて男は部屋を出ていった。
「ありがとう。エヴァン君。それ、士官服?カッコいいね」
紺色の士官服に金色の飾緒が輝き、赤毛に紺色のコントラストも良く映える。
「こんなもの恰好だけだ。まだ何の武勲も上げていないお飾りだ」
それよりとエヴァンは緑の瞳で私を見る。
「少し痩せたんじゃないか?しっかり食べているか?」
「エヴァン君が毎日送ってくれる野菜やお肉をしっかり食べてるから大丈夫!
心配してくれてありがとう」
「オレには女が何を喜ぶかわからないからな」
エヴァンは腕を差し出した。
「せっかくだ。一曲頼む」
私はにっこり笑ってその腕を取った。
「士官学校ってどんなところだったの?」
「鍛錬と座学、実習。軍人としての能力、心構えを叩きこまれた」
「厳しいんだね」
「そうだな。だが、強くなった」
「そうだね。前よりも更に逞しくなった印象だよ」
「国民を守るのが兵士の務めだ。そして、今なら必ず」
手を強く握られて、腰が引き寄せられる。
「お前を守れる」
「心強いね、エヴァン君」
エヴァンのしっかりした体躯を身をもって感じる。
身体が密着した状態で、私は照れ隠しに冗談めかして微笑んだ。
「その君付け止めろ、エヴァンで良い」
「わかりました、エヴァン魔法特務士官」
曲が終わると二人に距離が生まれる。
「それでは良い夜を」
「良い夜を」
お読みいただきありがとうございます。
楽しいパーティーの終わりに何が待ち受けているか
続きはまた後程アップします。




