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メイドさんから見た、恋の混戦模様。その3

 あの後、ささっと仕事の話に戻ったのでお茶を入れて退出した。難しい話はわからないし私は部外者だしね。

 レオニールさんの執務室に積み上げられた書類が怒涛の量だったから、仕事の量が半端ないんだろうな。

 あの量を子供に引き継がせるとしたら、そりゃ早婚になるわと納得した。

 身につくまで相当の努力が必要だよこれは。

 だとしたらお仕事の邪魔したら悪いよね。と部屋を出ようとすると、


「あいつ等が帰ってきたら、ホタルとアオイも家に招待するから準備しといて」


 とアルフォンソさんに声をかけられた。さっきまで書類をみて眉を寄せていたのに。

 リオンさんやレオニールさんも同様にこちらを見ているから、同類なんだろうな。


 私が扉に目を向けるのを見逃さないで、私には笑いかけながら声をかけてニコニコしていたのに、私がつい頷くのを確認したら、すいと書類に視線を戻した。もちろんまた眉を寄せてる。

 オンオフの切り替えスイッチが素晴しいです。まさに仕事が出来る男達って感じだよ。



 そういえばパパもお仕事モードのスイッチ切り替えが上手だったなぁと思い出す。

 自宅に居る時は家族にとても甘いパパだったけど、お仕事の時はきりっとしていて格好よかった。



 パパもママも今頃どうしているんだろう。召還されたのがしばらくの間別れて暮らす覚悟をしながら見送った空港から帰り道だったせいか、こちらに飛ばされてきた直後は両親のことなど思考が麻痺していた。

 けれど、数日経った今は少しは現実が見えてきたのかふとした瞬間にこうして考えるようになった。



 だけどこうしてまだ落ち着いていられるのは、やっぱり葵と一緒に飛ばされたからだ。


 16年間一番近くにいた葵が一緒だったからこうして立っていられている。産まれてから何をするのもずっと一緒で、個別に部屋を分け与えられても自由に行き来していた。

 クラス分けも、双子の場合は別クラスに分けられるのが普通なんだけど、人見知りが激しかった私は、他の子になかなか話しかけれなかった事でクラスから浮いてしまった事があった。それからは中学を卒業するまで、葵とはずっと同じクラスだった。

 小さい頃着させられていたおそろいの服は、二人ともが着る二倍の量の服に変わったくらいで。

 机の引き出し一段分くらいしかプライバシーが無いくらいに。葵は誰よりも私と近いんだ。



 飛ばされる直前まで荷物を一緒に持っていた。その距離がお互いの泣き出すタイミングを逸らしてくれたんだと思う。



 もし私一人だったらいつまでも泣き叫んでいただろうし、他の誰かと一緒だったとしても、きっと泣いて泣いて泣いて……今みたいに落ち着いてなんていられないだろうから。




 葵のおまけ(結果的に)としての異世界召還には、何も思わないわけではないけど!




 もし葵一人で召還されてたら、あの時点で私は一人で取り残されてた訳だから、一人で召還されてたとしたらな時とと同じくらいどうしたらいいのか判らなかっただろう。


 だってスーパーから出た瞬間、妹が消えていました。なんて考えられる? その説明を誰かに言える?


 絶対絶対大騒ぎになって、パパとママの仕事の邪魔をして、他の人には私が葵を害したんじゃないかと疑われて、精神鑑定されるに決まってる。

 そしたらその後のことは考えたくないくらい事が待ってるってわかるもん。

 逃れられない運命なら開き直ったほうがマシだよね。



 それに、葵がいない日常なんて考えられないから。

「葵は今から異世界に飛ばされます。あなたは残ってもかまいません。どうしますか?」と聞かれたらやっぱり一緒について来る選択するもの。

 だからもう振り返らないって決めた。

 心のそこでは出来ることならパパとママにだけでももう一度会いたいって渇望しているけれども。




 そんな事をつらつら考えながら歩いていたら、いつの間にか見たことが無い廊下に出てしまっていた。

 ううう。やっちゃったー。方向音痴だって自覚してるのに私の馬鹿ー。と心中で自分を罵倒する。




 そうこうしているうちに近くの扉が開いて一人の女性が顔をだした。私より年上だと判る結構な美人さんだ。私と目が合うと、


「ふふっ。見かけない顔だけど、もしかしてあなたがアラン様やレオニール様が連れてきたという娘ね? 仲良くしたいわ。良かったら一緒にお茶でもどうかしら?」

 と目を細めて笑いかけてきた。

 なぜか笑っているのにNoと言えない雰囲気に押されて、つい頷いてしまった事を数秒後に後悔する。






 部屋には他に二人の女性が居た。どちらもやはり年上だ。

 ニコニコと笑っていたお姉さんは、扉を閉めた瞬間に豹変した。




「どんな手を使ったのか知らないけれど? とても目障りなのよ、あなたが」

「アラン様やレオニール様に取り入ろうとするだなんて、迷惑に思われていることに気付かないの?」

「たかだか庶民の娘のくせに浅ましいにもほどがありますわ」

「きっとお二人は騙されてるんだわ。なんてお可哀相な」



 目の前には、三人の怖い顔したお姉さん方。

 私が口を開く隙が無いくらい「不釣合い」だの「小娘が」と次々と罵倒される。

 この人達はアランさんとレオニールさんの取り巻きらしい。



 どうやら私達が異世界から召還されたということは伏せられているそうで。

 花嫁召還は王族だけの仕来りだそうから、王や側近の一握りの人以外はあの二人が行った召還の事実は伏せられているんだって。まぁ、これを機に希望する貴族の子息の花嫁全員召還とかになったら問題だもんね。

 葵はアランとレオニールの二人が街娘を見初めて傍に召した……事になっているんだって。

 この人たちは葵の顔は知らないらしく、私と葵を間違えているっぽい。



 この人たちの話を要約すると、王子様には召還する花嫁が居るってわかっているせいか、アランさんとレオニールさんが花婿として最優良物件で狙っていた方達みたいだ。

 いきなり現れた二人ともの花嫁候補の葵がかなり気に入らないらしい。


 美形とお近づきになったがために、とりまきの怖いお姉さんから呼び出されるという、なんだかお約束な展開? に陥ってるようで。

 微妙に人違いなんだけどっ! ひー。私、今ピンチです!


 思わず吐き出しそうになるため息を飲み込んだ。

間がかなり空いてしまいました。


お約束お約束。な展開です。

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