Ж-20 深 淵 の 長 ~Male Of Frontier~
「ようこそ、ティリムの村へ」
両手を広げて歓迎の意を表す無垢な少女の前で、
相方にミウ投げさせて
『ようこそ……男の世界へ……』
とゆっくり仰向けにブッ倒れるのがオレクオリティー。
次は相方の番と思ったが、
耳長っ娘が泣きそうになってるので我慢してもらおう。
ミウも投げられるの 『や~』 って言ってるしね。
オレの腹は遊具にするくせに、
お前をボール扱いするのはイカンのかい?
どんな母親だ、 まったくまったく。
さて、 ンじゃ余計な騒ぎが起きない内にその長老様とやらに会わせてくれる?
今までの傾向上一番歓迎されない場所に来てる自覚はあるからね。
でもやっぱダメか、 畑仕事をやっていた一人がオレ達を認めた瞬間、
驚愕と恐慌が鼠算式に膨れ上がっていき気がつきゃ農工具を構えた
ハーフ・エルフの集団に囲まれちゃったよ、 何か前にもあったねこんな光景。
結構数居るんだな、 狩りに出ている者とかも入れるともっと増えるね。
一番前にいる男の中には剣とか弓とか持ってるのもいるし、
家の造りも簡素だけどしっかりしてるから
生活レベルはド底辺ってわけじゃないんだね。
サーシャが必死に弁明してくれてるけどヒステリー状態に近い者には
却って逆効果なんだよなぁ~、 ここら辺は人間と変わらないね。
こらミウ、 オレの肩の上で威嚇するんじゃない。
部外者はオレら、 事実上奴隷狩りに来る冒険者の○○共と変わらないんだよ。
まぁ 「子供を脅して!」 だの 「これ以上何を奪おうというんだ!」 だの
罵詈雑言に混じって悲痛な叫びが届いてくるから
今までよっぽど酷い目に遭わされたんだね。
相方罵声よりもそっちの方にダメージ受けちゃってるよ、
ほらほらこんだけ騒ぎになってるんだから早く来てよぉ~、
勝手に来た部外者が言うセリフじゃないけどさ。
「危ない!」
ん? なんか石ころ飛んできてら、 誰が投げたんだ?
まぁ想定内想定内、 どっかの処刑法みたいに雨霰と投げつけられない分、
――ハァ!?
本当に眼の前でガツン! と鈍い音がして差し向けた手の先で
細い影が地面に落ちた。
サーシャが両手を広げてオレを庇ったのだ、
でも背が足りないから飛んだために
頭へ当たって額から輪郭へと血が滴っている。
オ・イ――!